2024.01.22
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令和6年(2024)1月26日「文化財防火デー」です。

タイトル■1月26日「文化財防火デー」です。■

「文化財防火デー」が制定された発端となったのは、昭和24年(1949)1月26日、現存する世界最古の木造建造物である法隆寺(奈良県斑鳩町)の金堂が炎上し、壁画が焼損した事件です。

この事件は国民に強い衝撃を与え、火災など災害による文化財保護の危機を深く憂慮する世論が高まりました。翌昭和25年(1950)に文化財保護の統括的法律として「文化財保護法」が制定されました。

当時、英国紙「タイムズ」の東京支局長だったフランク・ホーレーも「法隆寺は外国人にとっても非常に興味を持たれている。法隆寺が焼けてしまったと聞いたらどんなに悲しむことか。日本人はこうした『貴重なもの』の取扱いが全く下手でデタラメだ」と落胆しました。

同じ年2月には愛媛県の松山城の「筒井門」など3棟が、6月には北海道の「松前城」の天守など2棟が焼失してしまいました。半年の間に3件の国宝(当時)が火災に遭ったのです。

その後、消失から5年が経過した昭和29年(1954)11月3日、法隆寺金堂の修理事業が竣工したことから、文化財保護に関する行政の対応も確立しました。文化財保護思想の一層の普及、徹底を図るために普及啓発事業が行われるようになりました。

その一環として、法隆寺金堂が焼損した日であること、1月と2月が一年のうち最も火災が起こりやすい時期であることから、昭和30年(1955)当時の文化財保護委員会(現在の文化庁)と国家消防本部(現在の消防庁)1月26日を「文化財防火デー」と定め、文化財を火災・震災その他の災害から守るとともに、全国的に文化財防火運動を展開し国民一般の文化財愛護に関する意識の高揚を図っています。
以来、毎年1月26日を中心に、文化庁、消防庁、都道府県・市区町村教育委員会、消防署、文化財所有者、地域住民などが連携・協力し、全国で文化財防火運動を展開しています。

文化財は、長い歴史の中で生まれ、はぐくまれ、今日まで守り伝えられてきたからこそ、その国の人びとだけでなく世界中の人びとにとって貴重な財産となったものです。

平成31年(2019)4月に起きたノートルダム大聖堂の火災で、尖塔が崩落する様子は衝撃的でした。同じ年、令和元年(2019年)10月の首里城の火災では、11時間にわたり火が燃え続け、正殿、北殿、南殿など7棟の建屋が焼失してしまいました。

これらの事件を受け、文化庁は消防庁・国土交通省と連携し、「国宝・重要文化財(建造物)の防火対策ガイドライン」「国宝・重要文化財(美術工芸品)を保管する博物館等の防火対策ガイドライン」を作成しました。

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

平成29年(2017)以来、京都の賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ=下鴨神社)、奈良の金峯山寺(きんぷせんじ)、沖縄の旧崇元寺(そうげんじ)、首里城跡、東京の増上寺や明治神宮で、文化財に液体がかけられる事件が起きています。文化財を後世に伝えていくためには、火災のみならず地震などの災害、心ない者による破壊からも守っていかなければなりません。
また、日本の重要な建築物には、木材、樹皮、茅(かや)、漆などの様々な植物が資材として用いられています。文化庁は平成18年度から「ふるさと文化財の森」として全国88ヶ所の山林などを指定し、保存や修理に必要な資材の確保に努めています。
「文化財を守る」とひとくちで言いますが、その背景には様々な分野の専門家や技術者、地域の人びとによる不断の努力の積み重ねがあることがわかると、それも含めて、文化財とはまさに国の歴史や文化の象徴なのだとあらためて感じ入ります。
筆者敬白

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