■7月12日「草市(くさいち)」です。■

お盆が近づくと、関東各地ではお盆に使う飾り物や盆踊りの用品を売る市が立ちます。古くは13日早朝(迎え盆の朝)が盛んでしたが、次第に12日の夜が賑わうようになりました。秋の草や花が市に並び、その光景が昔の武蔵野の風情を思わせることから、いつしか「草の市」「草市」と呼ばれるようになったそうです。「盆市」「花市」とも。
菊池貴一郎(4代目広重)が明治38年(1905)に著した『江戸府内絵本風俗往来』には、「盂蘭盆(うらぼん)の市場」という見出しで次のように描かれています。
「魂祭(たままつり)に用いる草々を商う市場は、市中の東西南北の諸所に立っている。七月十二日から夜にかけて諸商人が露店を張り出す。その商う物はたいへんな種類であるが、まず間瀬垣(ませがき)・菰筵(まこもむしろ)・竹・苧がら(おがら)・粟穂(あわぼ)・稗穂(ひえぼ)・赤茄子・白茄子・紅の花・榧(かや)の実・青柿・青栗・溝萩(みそはぎ)・蓮の葉・蓮花(れんげ)・鶏頭(けいとう)・瓢箪(ひょうたん)・菰造りの牛馬・灯籠・盆提灯・線香・土器(かわらけ)・へぎ盆などが主な売り物である。この日、数珠造り、仏師、仏壇の漆器類を商う店は殊の外の繁昌である。人が盛んに出て立錐の余地も無い光景(ありさま)である」
草市では、「迎え火」に使う「苧がら(麻幹)」や、「精霊棚(しょうりょうだな、盆棚)」を飾る「溝萩(禊萩)」「蓮の葉」など、多種多様な植物が売られていました。さらに、お盆の入り用として、盆提灯、灯籠、花茣蓙(はなござ)、経木(きょうぎ)、果物、線香、精霊棚に用いる菰(こも)、供え物を盛るための土器(かわらけ)、それから数珠や仏具、太鼓、手拭、頭巾、紋服まで、必要なものはなんでも揃いました。
草市の蓮にたまる埃かな ―― 子規
草市やかむろが袖にきりぎりす ―― 作者不知(東都歳事記)
今ではお盆用品を売る露店はほぼ見かけなくなりましたが、東京・中央区の「月島(つきしま)」では、毎年「月島草市」が立ちます。月島西仲商店街(もんじゃストリート)に100を超える露店が並び、子どもから大人まで楽しめる賑やかな市は夏の風物詩となっています。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

日々の忙しさから、お盆を簡略化する方々も多くなりました。お盆は先祖の霊を慰める大切な行事です。子育てや仕事、学業などに忙しくても、今日生きていることに感謝してお盆の時期、命のつながっている先祖に手を合わせましょう。
読者の皆様、お体ご自愛専一の程
筆者敬白







