2024.09.16
9月
雑節・歴注・撰日

令和6年(2024)9月23日(旧暦8月21日)「三隣亡(さんりんぼう)」です。

■令和6年(2024)9月23日(旧暦8月21日)「三隣亡(さんりんぼう)」です。■

「三隣亡(さんりんぼう)」はもともと暦注〔※〕下段の吉凶日のなかにある「凶日」〔※〕のひとつ。この日に棟上げ、建築を行うと、三軒隣まで焼き滅ぼす日(※保呂風日)〔※〕とされ、建築に関する良くない日とされます。

江戸時代の雑書などには「三輪宝」〔※〕と記され、「屋立てよし、蔵立てよし」と書かれていて、もともと目出度い日でした。これがいつ頃からか「屋立てあし、蔵立てあし」に変わってしまいました。

このように由緒のはっきりしない暦注ではありますが、六輝(現在の曜日)〔※〕とともに江戸時代から幕末にかけて庶民の間で流行し、明治時代の「おばけ暦」〔※〕に記載されていました。現在では、「三隣亡」はどの暦にも記載されています。

三隣亡の日取りは、節切り(二十四節気を基にした選日法)で決められます。

正月……亥の日 2月……寅の日 3月……午の日
4月……亥の日 5月……寅の日 6月……午の日
7月……亥の日 8月……寅の日 9月……午の日
10月……亥の日 11月……寅の日 12月……午の日

※暦注(れきちゅう)
暦に記載される日時・方位などの吉凶、運勢などの事柄のこと。

※凶日(好ましくない日)
不成就日(ふじょうじゅび)、受死日(じゅしにち)、十死日(じゅうしにち)、帰忌日(きこにち)、重日(じゅうにち)、復日(ふくにち)、天火日(てんかにち)、地火日(じかにち)、三隣亡(さんりんぼう)、三箇の悪日(大禍日(たいかにち)・狼藉日(ろうじゃくにち)・滅門日(めつもんにち))などがある。

※保呂風日(亡ぼす、滅ぼす)
宣明暦(せんみょうれき)〔※〕の時代に、伊勢暦(いせごよみ)〔※〕などにあった暦注の下段に記載されていた。

※宣明暦(せんみょうれき)
中国暦のひとつで、唐の長慶2年(822)から使用された太陰太陽暦の暦法。正式には、長慶宣明暦(ちょうけいせんみょうれき)。日本では、貞観4年(862)~貞享元年(1684)まで、823年間使用され、貞享2年(1685)に貞享暦(じょうきょうれき)に改暦された。

※伊勢暦(いせごよみ)
現在の神宮暦の前身、江戸時代に伊勢神宮の門前で製作し頒布されていた暦。

※三輪宝(さんりんぼう)
天・地・人の三角点には宝が存在するとされること、転じて暦注では吉日(よい日)だった。

※六輝(ろっき)
現在の暦の月・火・水・木・金・土・日のことで、六曜(ろくよう、りくよう)とも。

※お化け暦(おばけごよみ)
明治から昭和にかけて民間で発行された暦書(カレンダー)のこと。明治5年(1872)の改暦詔書で官暦(本暦・略本暦)では、それまでの日の吉凶などを示す暦注が迷信として排除、旧暦併記も取りやめとなったため、これらを求める庶民に歓迎された。摘発を逃れるため、発行所は毎年転々とし、発行人は偽名で正体がつかめないことから「お化け暦」と呼ばれた。

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

建築関係者方々には大凶日とされていますが「高い所へ登ると怪我をする」とか、「引越しは火事になる」などといわれますので、迷信だとして気にしないよりも、先人の経験であると理解して、注意するに越したことはありません。また、三隣亡の日には結納や建前、開店などは避けた方がいいでしょう。安全や無事を得るためには無理をしないことが第一です。
筆者敬白

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