■9月1~3日 富山、越中八尾「おわら風の盆」です。■
「おわら風の盆(おわらかぜのぼん)」は、富山県中南部の岐阜県に接する越中八尾(やつお)の民謡行事で、歴史は古く元禄の頃。庶民の生活の実態を面白可笑しく表現しながら町を練り歩いたことが始まりと伝わります。
「おわら」とは大笑いのことです。また、豊穣を祝うことから「大藁(おおわら)」が語源との説もあります。五穀豊穣と永世の繁栄を祈り、台風などの風水害を治める祭礼で、「二百十日」の初秋の風が吹く頃の、9月1日から3日にかけて三日三晩踊り続けます。
八尾の町は、浄土真宗の古刹「聞名寺(もんみょうじ)」の門前町として栄えました。正応3年(1290)本願寺第三世覚如(かくにょ)上人が北陸巡行の際に建立。
『融通念仏縁起絵巻(ゆうずうねんぶつえんぎえまき)』の聞名寺本には、中世の八尾地域の念仏信仰が描かれています。商家所有の町建ての文書が役人から返還された祝いに、3日間町民が歌い踊りながら町を練り歩いたのが起源とか。これが盂蘭盆行事となり、さらに「風の盆」に移っていきました。
また、越中八尾は「生糸繭の名産地」として有名でした。生糸の産地の多くは、強い風が吹く土地です。養蚕には風通しのよい蚕室が必要です。また、桑の害虫を吹き飛ばすのにも都合が良いとされています。風は、稲作農業にとっては困りものであっても、養蚕業にとってはなくてはならないものだったのです。
養蚕地域では繁忙期がお盆と重なるため、お盆の時期を前後にずらしていました。風の盆は「八朔にずらされた盆」とも。風害を恐れた稲作農民達による「風鎮め」の念仏踊りが踊られた後に、風のおかげで盛んになった生糸産業の町人たちが「おわら」を踊ります。
八尾は坂の多い町。道幅が狭いのが特色です。細い路地から聞こえてくる「越中おわら節」、三味線や太鼓に哀調を帯びた胡弓の音色が町を包み込みます。民謡に胡弓が入るのはめずらしく、悲しげな響きが独特の味わいをもたらしています。
揃いの浴衣に白足袋の女舞い、編笠の間からほんの少し顔を覗かせながら町流しをする早乙女の姿は、優美です。男性の踊り手は股引に法被姿、これらの衣装は大変に高価な素材で作られるそうで、雨天の場合は中止となります。現在でも格子戸や土塀造りの家々が立ち並ぶ、門前町として栄えた人口約2万人の町は、この3日間で延べ25万人の人出で賑わいます。
おわら風の盆
◇開催地:富山県富山市八尾地区
◆越中八尾「おわら風の盆」(越中八尾観光協会):https://www.yatsuo.net/kazenobon
◆おわら風の盆行事運営委員会:https://owara-gyoujiunei.com/index.html
聞名寺
◇富山県富山市八尾町今町1662
◇JR高山本線「越中八尾」駅から車で約5分、バス約16分
◇北陸自動車道「富山西IC」から約15分
◇公式サイト:https://monmyouji.or.jp