■9月29日「中秋の名月」です。■
「中秋の名月」は、旧暦8月15日の夜に見られる月のことです。
「中秋」とは、秋の真ん中のことを指しています。旧暦7月を「初秋」、8月を「中秋」、9月を「晩秋」といい、8月は最も空が澄んで鮮やかな月が見られることから「中秋の名月」と名付けられました。
吉田兼好は『徒然草』のなかで「秋の月は限りなくめでたきものなり」と綴っています。まず、空気の透明度が増して空が澄みわたり、月が美しく鮮やかに見えますし、暑すぎず寒すぎず、ちょうどよい季節です。くわえて、夏は低く、冬は高かった月の軌道が、中空(ちゅうくう=空のなかほど)の見やすい高さに位置することも鑑賞に適していると言えます。
月々に月見る月は多けれど 月見る月はこの月の月(よみ人知らず)
現在の「お月見」の風習は、中国の「中秋節」観月の宴が起源といわれ、日本には平安時代に伝わったとされ、宮中や貴族の間で「観月の宴」が盛んに催されました。
桂離宮」の書院群や月波楼(げっぱろう)は、観月を楽しむために設計され建てられたといいます。
江戸時代になると、武士や町人のあいだでもお月見の行事が広まり、その時期に収穫した農作物を月にお供えし感謝しました。イモ類の収穫を祝うことから「芋名月」とも呼ばれます。
中秋の名月は、旧暦で日付が決められているので、現在使用しているグレゴリオ暦では、年によって日付が変わってきます。また、中秋の名月の日が、必ずしも満月になるとはかぎりません。「旧暦15日の月齢」と「満月の月齢」の周期にそれぞれ幅があり、両者が重なったときに満月になるからです。
◇旧暦15日の月齢……旧暦では月の満ち欠け周期の約半分にあたる15日が満月であると考えられていました。旧暦は新月(月齢0.0)となる瞬間を含む日を「一日(ついたち)」とします。一日の初めに新月を迎えるか、それとも一日の終わりに新月を迎えるかによって、旧暦15日の月齢は13.0~15.0の幅を持ちます。
◇満月の月齢……新月から次の新月までの周期は約29.5日です。月が地球の周りを回る軌道がわずかに楕円になっているため、新月から満月までの日数は13.9~15.6日と、幅があります。
ですから、「旧暦15日の月齢の範囲」が「満月になりうる月齢の範囲」に重なる時のみ「十五夜」が満月ということになります。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
月は楕円運動をしているので、どこで満月になるかによって見かけの大きさが違ってきます。令和5~7年(2023~25)は比較的大きな名月が見られるとのこと。
そして、令和5年(2023)の「中秋の名月」は「満月」となりました。
日暮れどきは急に冷え込んでくる季節です。お月見と洒落こむ夜は羽織ものを一枚忘れずに。
皆様、お体ご自愛専一の程
筆者敬白