2023.09.05
9月
雑節・歴注・撰日

令和5年(2023)9月8日「己巳(つちのとみ)」です。

■9月8日「己巳(つちのとみ)」です。■

己巳:つちのと・み、き・し」は、干支(十干と十二支)※の組み合わせ60のうちの6番目で弁財天を祭る日とされています。「巳待(みまち)」ともいいます。

五行説※で、十干「(つちのと、き)」は「陰の土」、十二支「(み、し)」は「陰の火」で、相生では(火生土)となり相性のいい日です。

」は「」をあてています。蛇は弁財天の使いであると考えられていたことから、福徳賦与の神である弁財天を祀るようになりました。

弁財天」は、宝冠を被り青衣をつけた美しい女神で、左手に弓・刀・斧・絹索を、右手に箭・三鈷戟・独鈷杵・輪を持つものもあり、ヴィーナ(琵琶に似た楽器)を弾じます。

◆五辨天◆
安芸の宮島、大和の天川、近江の竹生島、相模の江ノ島、陸前の金華山を「五弁天」と称します。五辨天には数えられませんが、鎌倉の「銭洗弁天」(正式には宇賀福神社)では、境内奥の洞窟内の湧き水で銭を洗うと、数倍になって返ってくるとされて、ご利益にあずかろうと多数の方が訪れます。

日本各地に存在する「弁天島」は、弁才天信仰に由来する島の名です。海難避けや豊漁を祈願する漁師たちの守り神として、日本各地の沿岸の小島に祀られてきました。

■七福神(しちふくじん)とは、福をもたらすとして信仰されている七柱(ななはしら)の神です。

恵比寿:えびすさま
商売繁盛、除災招福、五穀豊穣、大魚守護の神様。「大漁追福」の漁業の神。時代と共に、福の神として「商売繁盛」や「五穀豊穣」をもたらす、商業や農業の神となりました。七福神の中で日本が由来の神様。

大黒天:だいこくてん、だいこくさま
五穀豊穣、子孫愛育、出世開運、商売繁盛の神様。ヒンドゥー教のシヴァ神と、日本古来の大国主命の習合です。その後「大黒柱」と表わされるように、食物や財福を司る神となりました。

毘沙門天:びしゃもんてん
武道成就、降魔厄除、家内安全、夫婦和合の神様。ヒンドゥー教のクベーラ神。仏教の神のヴァイシュラヴァナ(多聞天)になり、日本では毘沙門天と呼ばれます。

弁才天:べんざいてん、べんてんさま
恋愛成就、学徳成就、諸芸上達、福徳施与の神様。七福神の中の紅一点。ヒンドゥー教の女神であるサラスヴァティー神。七福神の一柱としては「弁財天」と表記されます。

福禄寿:ふくろくじゅさま
財運招福、延命長寿、立身出世、招徳人望の神様。道教の宋の道士、または、道教の神で南極星の化身の老子である「寿老人」の別名または同一神とされます。

寿老人:じゅろうじん
幸福長寿、家庭円満、延命長寿、福徳智慧の神様。道教の神で南極星の化身の老子。

布袋:ほていさま、ほていそん
千客万来、家運隆盛、家庭円満、商売繁盛の神様。唐の末期、明州に実在したと伝わる仏教の僧です。

暦注や暦に起因する様々な行事は、中国から渡ってきたものが主ですが、「庚申待」「甲子待」と同類でも、「己巳」「七福神」は日本独自のものです。

※十二支(じゅうにし)
子(ネズミ)・丑(牛)・寅(トラ)・卯(うさぎ)・竜(龍)・未(蛇)・午(馬)・羊(ヒツジ)・申(サル)・酉(にわとり)・戌(犬)・猪(いのしし)の12種の動物を表わす漢字のこと。「十干(じっかん)」※と組み合わせることで、60を1周期とする「干支(えと)」を形成し、方角や時間、暦に用いられる。また、陰陽五行説と組み合わせることで「卦(け)」にも応用されるようになった。

※十干(じっかん)
木・火・土・金(ごん)・水の五行(五行)を兄(え)・弟(と)に分けたもの。年・日を現す。甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戊(つちのえ)・己(つちのと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)を十二支と組み合わせて使う。

※五行(ごぎょう)、五行思想(ごぎょうしそう)、五行説(ごぎょうせつ)
古代中国に端を発する自然哲学の思想。万物は火・水・木・金・土の5種類の元素からなるという説である。その根底には、5種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」という考え方がある。西洋の四大元素説(四元素説)と比較される東洋思想。

※五行相生(ごぎょうそうしょう)
五行説で、五行に相生(一緒に、または、並んで生育すること)の関係があり、順序立てるとした説。木から火が、火から土が、土から金が、金から水が、水から木が生じるというように、五行は、木火土金水の順に循環するという考え。

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

現代の社会では、経験的な習慣の「己巳」や「庚申」などは単なる迷信と同じ扱いです。
暦の謂れを振り返ってみることも、世知辛い現代での心の余裕といえます。

皆様、時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白

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