■10月22日 京都、平安神宮「時代祭」です。■
京都市左京区に鎮座する「平安神宮(へいあんじんぐう)」は、明治28年(1895)に創建されました。その年、「平安遷都1100年」の記念事業の一環として、4月1日から7月31日まで、第4回「内国勧業博覧会(ないこくかんぎょうはくらんかい)」が京都で開催されました。博覧会の目玉として造営されたのが、「桓武天皇(かんむてんのう)」を祭神とした「平安神宮」です。
天平9年(737)「桓武天皇」は、「光仁天皇(こうにんてんのう)」の皇子としてに誕生。天応元年(781)第50代天皇に即位しました。桓武天皇は「平城京」の規模が小さく、日本の国都に適していないと察し、まず山背国(山城国)乙訓郡(おとくにぐん)「長岡(ながおか)」に都を移しました。
さらに、最も都に適う場所として、延暦12年(793)葛野郡(かどのぐん)と愛宕郡(おたぎぐん)を選び、都の造営を開始しました。翌13年(794)10月22日、新しい都に移った桓武天皇は、ここを「平安京」と称し、延暦15年(796)「大極殿(だいごくでん)」にて「百官の拝賀(ひゃっかんのはいが)」を受けました。
在位25年のあいだ、桓武天皇は律令を正し難民を救済し文教を興して内政を整えるとともに、広く海外とも交易し、国の発展に努めました。以来、京都は明治に至る1千余年のあいだ、日本の国都として栄えてきました。延暦25年(806)崩御。御陵は京都伏見区桃山の「柏原陵(かしわばらのみささぎ)」です。
皇紀2600年にあたる昭和15年(1940)、平安京で崩御した最後の天皇である第121代「孝明天皇(こうめいてんのう)」が合わせて祀られました。

「平安神宮」創建当時、京都の衰退ぶりは目を覆うものがありました。幕末の戦乱で市街地は荒廃し、明治維新によって都が東京へ遷ったことは、京都の人びとの心に大きな打撃を与えました。
京都を救ったのは、京都復興への市民の「情熱」と全国の人びとの京都に対する「思い入れ」でした。数々の復興事業が展開され、教育・文化・産業・生活など、あらゆる面において「新しい京都」のありかたが模索されました。同時に、「古き良きみやこ」の維持継承にも力が注がれました。
◆時代祭
「平安神宮」創建の年、明治28年(1895)、神宮の管理と保存のため、京都市民によって「平安講社」が組織され、市民の手による「千余年の時代風俗行列」が行なわれました。
翌年から、時代風俗行列は「遷都の日」であり、平安神宮の「例大祭」の日でもある「10月22日」に行なわれるようになり、やがて「時代祭(じだいまつり)」と呼ばれるようになりました。「遷都の日」は、桓武天皇が長岡京から都を遷して新しい都に入ったとされる日で、いわば「京都の誕生日」といえます。
「時代行列」は、「明治維新から平安時代へ」と時代をさかのぼっていく一大歴史絵巻です。「ひと目で京都の歴史と文化が理解できるものを」と、1万2000点にもおよぶ調度、衣裳、祭具には綿密な時代考証がなされ、京都が1000年のあいだ、各時代の首都として培ってきた伝統工芸の技術の粋を集めて復元された「本物」が使われています。
「時代行列」の参加人数は約2000人。8つの時代を20の列で、各時代を再現した衣装や道具を身につけて歩きます。行列の長さは、なんと2kmにも及びます。
先頭の名誉奉行は「京都府知事」「京都市長」が務めます。そして、明治維新期の西洋兵式教練の鼓笛隊「維新勤王隊列(いしんきんのうたいれつ)」から始まり、ついで、江戸、安土桃山、室町、吉野、鎌倉、藤原、延暦と時代を遡っていきます。最後に、「御賢木(おんさかき)」に先導された「神幸列」が巡行します。前の「御鳳輦(ごほうれん)」が「孝明天皇」、後の御鳳輦が「桓武天皇」です。「神幸列」は、お祭りの本来の主役で、最も重要な意義を持ちます。
「京都御所」の「建礼門(けんれいもん)」前から、烏丸御池(からすまおいけ)、河原町三条(かわらまちさんじょう)を通過、「三条大橋(さんじょうおおはし)」を歩いて「鴨川」を渡ります。「神宮道(じんぐうみち)」を進み、平安神宮の「大鳥居」をくぐって「応天門(おうてんもん)」まで、およそ3時間の行程です。
時代行列は、御鳳輦で運ばれる「桓武天皇」と「孝明天皇」の2柱の御霊とともに、現在の京都の町と人びとを親しく眺めながら歩を進め、世の平安を祈ります。
平安神宮
◇京都市左京区岡崎西天王町97
◇市営地下鉄東西線「東山駅」徒歩約10分
◇京阪鴨東線「三条駅」「神宮丸太町駅」徒歩約15分
◇市バス「岡崎公園 美術館・平安神宮前」「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」「東山二条・岡崎公園口」徒歩5分
◇名神高速道路「京都東IC」約20分
◇公式サイト:https://www.heianjingu.or.jp
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
「時代行列」で使用されている衣装や祭具は、厳密な時代考証をもとに作られた「本物」だそうです。まさに文字通りの「動く歴史風俗絵巻」です。「時代祭」は比較的新しいお祭りですが、1000年の歴史を再現する行列を「本物」を用いてつくりあげるという発想は、京都の人びとからしか出てこないでしょう。京都市民の誇りを感じます。
筆者敬白