■10月7～9日「長崎くんち」です。■

「長崎くんち」とは、長崎市民の氏神である鎮西大社「諏訪神社」の秋の例大祭のことで長崎最大のイベントです。毎年10月7日から3日間、町を挙げて催されます。博多おくんち（福岡県福岡市・櫛田神社）、唐津くんち（佐賀県唐津市・唐津神社）と並んで「日本三大くんち」と呼ばれます。昭和54年（1979）、国の重要無形民俗文化財に指定。

「おくんち」とは「御九日（おくにち）」のことで、旧暦9月9日「重陽」の節句のこと、または、例祭のことを言います。「御供日」「御宮日」とも書き、これが訛った言い方です。

「長崎くんち」は寛永11年（1634）諏訪神社前で、丸山町と寄合両町のふたりの遊女が、謡曲「小舞（こめえ）」を奉納したのが祭りの始まりだと伝わります。キリシタン弾圧政策として幕府がこの祭を利用したため、年々盛大になっていきました。

初日、諏訪神社本社で遷座式が執り行われ、三基の神輿を拝殿に奉安したのち踊りが奉納されます。踊りを奉納するのは氏子の町民で、江戸時代の長崎の市街地77ヶ町を7分割し、1ヶ町が7年に1度踊りを奉納することになっています。

踊りの当番町を「踊町（おどっちょう、おどりちょう）」と称し、後の町の再編成などで町名や町数は変わっても7年一巡制は今日も踏襲され、毎年5～7ヶ町が踊町となって奉納踊（ほうのうおどり）を披露しています。いろいろな奉納踊がありますが、特に蛇踊り、傘鉾、川船などが有名です。

午後になると「お下り（おくだり）」が行われ、3基の神輿が200段の石段を一気に駆け下り、大波止（おおはと）の御旅所に渡されます。翌々日の朝、市中を練ったあと、神輿は諏訪の長坂を一気に駆け上がり本社に「お上り（おのぼり）」します。

鎮西大社（ちんぜいたいしゃ）「諏訪神社（すわじんじゃ）」の御祭神は、諏訪大神・森崎大神・住吉大神の三社で、厄除け・縁結び・海上守護の神社として崇敬されています。

戦国時代、長崎はキリスト教の支配するところとなり、神社も寺も焼き払われてしまいました。寛永2年（1625）初代宮司・青木賢清（あおきかたきよ）は、諏訪・森崎・住吉の3社を西山郷丸山に再興、長崎の産土神（うぶすながみ）としました。

慶安元年（1648）幕府より朱印地を得て、鎮西無比の荘厳な社殿が造営されました。安政4年（1857）不慮の火災で社殿のほとんどを焼失しましたが、孝明天皇の思召しにより再建がなされ、明治2年（1869）約10年の歳月をかけて、以前に勝る社殿が完成しました。

昭和59年（1984）の御鎮座360年祭、平成6年（1994）の370年祭にともない2度の記念造営を行い、現在の社殿が造営されました。

鎮西大社諏訪神社
◇長崎市上西山町18番15号
◇路面電車「諏訪神社前」下車
◇「長崎芒塚IC」「出島IC」より約10分
◇公式サイト：https://www.osuwasan.jp

◆長崎くんち（長崎伝統芸能振興会）：https://nagasaki-kunchi.com

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

あまり知られてはいませんが、キリスト教の布教によって寺社仏閣が焼き払われた歴史を持つ長崎です。「おくんち」は神社の祭礼を幕府がキリスト教弾圧に利用したとあります。
各地の祭礼や忌日などの発祥を調べていると、土地に根付く歴史があることがわかります。「季節のお便り」はそれを紐解き歴史を知る楽しさがあります。
読者の皆様、朝晩はめっきり涼しくなりました。時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白