■11月6日 京都、松尾大社「上卯祭(じょううさい)」です。■

日本第一醸造之神・京都最古の神社「松尾大社(まつのおたいしゃ)」は、式内社(名神大)、二十二社の一社で、旧社格は官幣大社。旧称「松尾神社」です。本社と、摂末社の四大神・衣手・三宮・宗像(市杵島姫命)・櫟谷(いちたに、奥津島姫命)・月読(月読尊)の各社を併せて「松尾七社」といいます。

平安遷都により皇城鎮護(おうじょうちんご)の社として崇敬され、「東の賀茂、西の松尾」「賀茂の厳神(ごんじん)、松尾の猛霊(もうりょう)」と並び称されました。賀茂とは賀茂神社のことで、上賀茂神社(かみがもじんじゃ)と下鴨神社(しもがもじんじゃ)の総称です。
本殿は大宝元年(701)、秦忌寸都理(はたのいみきとり)が勅命を奉じて創建。以来皇室や幕府の手で改築され、現在のものは室町初期の応永4年(1397)建造にかかり、天文11年(1542)大修理を施したもの。建坪35坪余、桁行三間・梁間四間の特殊な「両流造(りょうながれづくり)」は、「松尾造」と呼ばれる珍しい建築様式です。宝物の等身大の木造男神坐像2体、木造女神坐像1体(ともに重文)は、我が国最古の神像のひとつとされています。

社の背後「松尾山(まつのおやま)」(標高223m)には松尾社の古社地があり、山頂に近い大杉谷には「磐座(いわくら:信仰の対象となる岩、神の在所)」とされる巨石があります。
主祭神に「大山咋神(おおやまぐいのかみ)」「中津島姫命(なかつしまひめのみこと=市杵島姫命(いちきしまひめのみこと))」を祀ります。5世紀の頃の渡来人「秦氏(はたうじ、はたし)」が山城国一帯に居住し、もともと守護神として土地の人びとが祀っていた松尾山の神「大山咋神(おおやまぐいのかみ)」を氏神としました。

秦氏は酒造の技術も伝えたことから、松尾大神は酒造の神としても篤く信仰されるようになりました。本殿右奥に湧く「亀の井」の水を酒の元水に混ぜると酒が腐らないという言い伝えが広まり、全国の酒造・醸造業者が酒水に混ぜる風習が生まれ、今も酒造の蔵元から汲みに来ています。境内の拝殿横には、全国の酒造業者から奉納された酒樽が並べられています。
天平5年(733)、この霊水が湧き出た時に、松尾大神より「この水で酒を醸すとき福が招来し家業繁栄する」「この水は諸病を治し寿命を延ばす」などとの御宣託があったといわれます。
◆上卯祭(じょううさい、醸造祈願祭)
「上卯祭(じょううさい)」は、毎年11月「上の卯の日」に執り行なわれる醸造の安全祈願のお祭りです。「卯(う)」の字は甘酒、「酉(とり)」の字は酒壺を意味し、古来より酒造りは卯の日に始め、酉の日に完了するという習わしがあります。
「上卯祭」当日は、全国の和洋酒、味噌、醤油、酢等の醸造業はもとより、卸小売の人びとも参集。盛大に醸造安全を祈願し、「大木札(だいもくさつ)」を受け、それを持ち帰って各々の蔵に奉斎します。また、神前には数々の銘酒・醤油等のお供えがされます。4月「中の酉の日」には、醸造完了を感謝する「中酉祭(ちゅうゆうさい)」が執り行なわれます。

松尾大社
◇京都府京都市西京区嵐山宮町3
◇阪急電車「松尾大社駅」
◇JR「京都駅」から市バス「松尾大社前」
◇公式サイト:https://www.matsunoo.or.jp
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

もともとよい水と、お酒の神様として有名な松尾大社です。「上卯祭」には、全国から杜氏(とうじ)の一行が集まるそうです。科学万能の現代でも、魂を込めることで、一層のおいしさを引き出す醸造方法はやはり経験と勘どころがものを言います。末永く引き継いでいってもらいたいものです。
11月は「立冬」です。京都の神社の例祭、大祭が目立ちます。紅葉が美しい季節、京都詣で秋を満喫なさってください。すぐそこに冬の足音が聞こえます。
読者の皆様、時節柄お身体ご自愛専一の程
筆者敬白







