■11月9~15日「秋の全国火災予防運動」です。■
11月9日、恒例の「秋の全国火災予防運動」が始まります。11月9日から15日までの7日間、実施されます。
火災が発生しやすくなる冬の季節を迎えるにあたり、火災予防の意識を一層高めるとともに、火災の発生・拡大を防止し、火災から尊い生命と貴重な財産を守ることを目的としています。
◆火災予防の歴史
1666年(日本では寛文6年、徳川家綱の時代)、イギリス、ロンドン市の約4分の3を焼失する大火「ロンドン大火」が発生しました。時のイングランド国王チャールズ2世は都市の近代化と災害の撲滅のために法を整備をし、街路の拡幅や木造建築の禁止(家屋をレンガ造りや石造りにすること)を行ないました。その一方、この大火を契機に火災保険制度が生まれました。ロンドン大火は近代的な防火体制や火災保険制度を生む契機となったことから、「偉大なる火事 The Great Fire」と後世称賛されるようになります。
アメリカでも19世紀後半、木造建築の増加に伴い大規模な都市火災が続きました。1871年(明治3~4年)のシカゴ大火、翌1872年のボストン大火、1874年には再びシカゴを大火が襲いました。さらに1906年(明治39年)に起きたサンフランシスコ地震で起きた大火災は3日間燃え続け、地震による倒壊と火災での焼失で22万人以上の市民が家を失いました。アメリカでは、火災についての科学的研究に取り組み、「火災性状」を解明、防火体制を確立しました。火災性状の研究とは、燃えている物が何かなどの諸条件のもとで、燃え拡がり方、火炎の形状・温度などを調べ数量的に予測できるよう理論にまとめることです。
◆火災予防運動
明治44年(1911)10月9日合衆国全土で初めて「火災予防デー」が行なわれました。これがアメリカでの「火災予防運動」の始まりです。
日本では、大正15年(1926)9月に、明治神宮外苑の日本青年館で初めて全国消防組組頭大会が開かれ、アメリカの例にならいわが国でも全国一斉に「防火デー」を設けようと提案されました。その後、昭和2年(1927)に発生した北丹後地震では、人的被害や建物倒壊だけでなく火災による焼失家屋も非常に多く、このことが防火防災の意識が社会全体に浸透するきっかけになりました。昭和5年(1930)大日本消防協会が、近畿地方で第1回防火運動を実施。以降、防火運動を行なう自治体が増えていきました。終戦の年、昭和20年(1945)、GHQの指示により、アメリカと同じ10月21日からの1週間、全国一斉に火災予防運動を行ないました。
現在、春の火災予防運動は3月1~7日に、秋の火災予防運動は11月9~15日に行なわれます。秋の火災予防運動の開始日11月9日は「119番の日」にちなんでいます。期間中、総務省消防庁から示される実施要綱に基づき、各自治体がそれぞれの特殊性を考慮して実施します。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
8代将軍徳川吉宗の時代、燃えやすい木造ではなく土蔵造(どぞうづくり)や塗屋造(ぬりやづくり)、茅葺きではなく瓦葺き(かわらぶき)の屋根など防火建築が奨励されました。同時に、町奉行・大岡忠相(おおおかただすけ)によって、いろは四十八組の町火消(まちびけし)が組織され、市中の消防活動にあたりました。古今東西、防火対策への取り組みは、度重なる大火災によって受けた大きな苦難が背景にあります。
11月に入り空気が乾燥し、火災が発生しやすい季節を迎えます。秋の全国火災予防運動期間が、11月の「火廻要慎、酉の市」の日に近いことを思うと、江戸時代と変わらず令和の世でもこの時期に火災に対してとりわけ用心すべきなのでしょう。
乾燥して風邪をひきやすい時節柄、お体ご自愛専一の程
筆者敬白