2024.05.15
5月

令和6年(2024)5月19日 奈良、唐招提寺「うちわまき」です。

■5月19日 奈良、唐招提寺「うちわまき」です。■

律宗総本山「唐招提寺(とうしょうだいじ)」は南都六宗のひとつ。「律宗(りっしゅう)」は、戒律の研究と実践を行なう仏教の一宗派です。

中国では、正式な僧となるためには「戒律」を修めなければなりません。そのため、古くから研究がなされ、唐代には南山律宗を開いた道宣(どうせん、596~667)「戒律学」を大成し、その孫弟子である鑑真(がんじん、688~763)は、留学僧の要請で日本に律を伝えたとされています。

鑑真は、唐の揚州江陽県に生まれ、14歳で出家し、律宗・天台宗を学びます。四分律に基づく南山律宗の継承者で、4万人以上の人々に授戒を行なったとされています。

東大寺に戒壇を開き、5年を過ごした後、新田部親王の旧宅地(現在の奈良市五条町)を下賜され寺としました。唐招提寺は、鑑真和上が私寺として、天平宝字3年(759)戒律を学ぶための修行道場を開き、「唐律招提」と名付けたのが始まりです。

◆うちわまき

ある暑い夏の日のこと、鎌倉時代の唐招提寺中興の祖、大悲菩薩覚盛上人(だいひぼさつかくじょうしょうにん)が大勢の弟子を前に講義をしていると、蚊が飛んできて上人の頬を刺そうとしたので、弟子のひとりが蚊を追い払おうとしたところ、覚盛上人はそれを制し「蚊に血を与えるのも菩薩行である」といって戒めました。

戒行清廉なるその徳をたたえ「せめて団扇で蚊を払って差し上げよう」と、教えを受けた法華寺の尼僧たちが、覚盛上人の遺徳を偲んで「うちわ」を作り、霊前に供えるようになりました。このうちわを上人にゆかりの深い人々に授けたのが「うちわまき」の始まりとされています。

上人の忌日に執り行われる「中興忌梵網会(ちゅうこうきぼんもうえ)」の法要を行なった後、境内の舎利殿から1500本のうちわがまかれます。参詣人は競ってこれを拾い、厄除けのお守りにします。

「雷難、火難、豊作、病気、安産、産児の健康等、諸願意の如くならずということなし」と伝わります。

唐招提寺
◇奈良県奈良市五条町13-46
◇JR「奈良駅」~「六条山行」バス17分「唐招提寺」下車
◇公式サイト:https://www.toshodaiji.jp

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

蚊に血を与えるのも菩薩行……私たち凡人にはそこまでの達観は出来ないかもしれません。とはいえ、殺戮を正当化しては世の中、殺伐としてしまいます。令和になっても、あるいは、令和の今だからこそ、鑑真のような精神を時代は必要としているといえるでしょう。日本はこの精神があったから、世界に認められたのです。残念なことに、いつの間にか隣人他人を構わない社会になってしまいました。
鑑真が生きていたらさぞかし嘆くことでしょう。自分の周辺だけでも菩薩行を実践しましょう。

一説には、唐招提寺のうちわで煽いだら目が見えるようになった。癌が小さくなったといった逸話もあるそうです。読者の皆様、迷信と決めつけずお出かけになってみてはいかがでしょう。
お出かけの際には、お風邪などお召しにならないようお体ご自愛専一の程
筆者敬白

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