■3月10日(旧2月8日)「旧こと始め」「旧針供養」です。■
「こと始め」とは、その年の事の始まり行事のことで、陰暦2月8日に行われていた行事です。今年は太陽暦の今日が旧暦の2月8にあたります。
「針供養」とは、折れた針を供養し、裁縫の上達を願う行事です。関東では一般に2月8日に行われます。両日とも「事八日(ことようか)」(こと始め・こと納め)にあたっており、昔から様々な行事が行われてきましたが、それが江戸など都市では針供養に変わったものと考えられます。
この日は、針の使用を謹んで針仕事を休み、古針(折れた縫い針や曲がった縫い針)を、豆腐やこんにゃく、あるいは餅に刺して、神社で供養したり、川へ流したりするのが一般的でした。豆腐やこんにゃくなどに針を刺す理由は、柔らかいもので針に楽をしてもらい、今までの針の労に感謝するのです。
もともと中国で行われていた針供養に似た行事が、日本に伝わったもので、事始め・事納め・女性の守護神である淡島信仰※などと混合して出来上がったものが針供養であるといわれます。この日、芋、大根、焼豆腐、あずき、にんじんなどの煮物料理を食べる、俗にいう「いとこ煮」や「六質汁:むしつじる」「お事汁:おことじる」は、こうした縁起からきたものだそうです。
また、豆腐のように色白の美人になるようにとか、柔らかい気持ちになれるようにとか、まめに働くことが大事(だいず)としたのだとか。豆腐は刺されても痛いと言わないから、女性が我慢強いことを願ったからなどともいわれます。
和歌山の淡島神社では、その年に使って折れた針を集めておき、淡島堂(あわしまどう)へ納め、縫裁の上達を祈ります。祭神は、少彦名命(すくなひこなのみこと)、大己貴命(おほなむじのみこと)、息長足姫命(おきながたらしひめのみこと・神功皇后)を祀ります。少彦名命は、医薬の神様です。特に女性の病気回復や安産・子授けなどに霊験あらたかといわれています。
針供養は関東では2月8日、関西では12月8日に行うところが多く、古く、事始めと事納めを一緒にして「事八日:ことようか」と呼ばれていました。
東京浅草寺境内の淡島堂のご祭神は女神で、技芸裁縫の神です。
浅草寺HP/諸堂案内(淡島堂):http://www.senso-ji.jp/guide/awashimado.html
※淡島信仰、淡島神(あわしましんこう、あわしまがみ):淡島神は、女性特有の婦人病治癒や安産・子授け、裁縫の上達、人形供養をはじめ、良縁・健康維持など女性に関する効験ありとされる信仰。一説に淡島様は住吉明神の妻神であったが帯下(たいげ/婦人病)の病にかかり,熊野の淡島に流され治癒したとされることから、女性の守り神になったともいう。
江戸時代には淡島願人(あわしまがんにん)と呼ばれる乞食坊主が、淡島神の人形を祀った厨子を背負い、淡島明神の神徳を説いて廻った事から信仰が全国に広がった。関東地方では3月3日淡島講を催す地域がある。