■3月20日「社日(しゃにち)」です。■
「社日(しゃにち)」とは雑節のひとつで、春分と秋分に最も近い「戊(つちのえ)の日」のことをいいます。春と秋の2回あり、春の社日を「春社(しゅんしゃ、はるしゃ)」、秋の社日を「秋社(しゅうしゃ、あきしゃ)」ともいいます。
「戊(つちのえ、ぼ)」は「土」の意。農家では春社は種蒔きの時期にあたり、秋社は収穫の時期にあたります。そのため社日は重要な節目の日とされるようになりました。
「社」は、生まれた土地の守護神である「産土神(うぶすながみ、うぶしなのかみ、うぶのかみ)」のこと。この日、産土神に参拝し、春には五穀の種を供えて豊作を祈り、秋には収穫感謝のお参りをします。
地方によっては、「田の神(たのかみ)」を祀る信仰と結びついて、春の社日に神が天から降り、秋の社日に天に帰るという「神去来(かみきょらい)」の伝承があり、春の社日は「地神降り(じがみおり)」、秋の社日は「地神昇り(じがみのぼり)」と呼ばれています。
出雲地方では「地神塔(じしんとう)」という五角形の石柱に「社日」の記述が目立ちます。これは五角形を「五穀」や「五行」と解されていて土地からの恵みをあらわしたものです。
社日には、
・春社日に近所で種もみを交換し、種もみ浸しの準備にとりかかる
・秋社日に神前で祓ってもらった稲穂で、種もみの準備をする
・秋社日に「穂掛け(ほかけ:稲の初穂を田の神や氏神に供える)」を行なう
・その日は土いじりをやめて、みなで集まり「地神講・社日講(地神を祭る講)」を行なう
・餅をついて祝う
・海岸から砂を持ってきて家の内外にまいて清める
など、主に農事に関わるさまざまな慣習が各地域に伝わっています。また、
・春の社日に石の鳥居を7つくぐると中風にならない
・春の社日に酒を飲むと耳の聞こえがよくなる
といった体や病気にまつわる言い伝えもあります。春の社日に神に供えたり飲んだりする酒を「治聾酒(じろうしゅ)」と呼びます。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
災害などで、よその土地に避難した方々も「生まれ育った土地に帰りたい」と口にします。災害で荒れ果てた土地だとしても「産土神」の地元です。度重なる大震災で命を落とした方も多いなか、生まれ育った土地、今日まで育まれた命に感謝したいものです。
読者の皆様、時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白