■3月20日「彼岸の中日」です。■
「彼岸(ひがん)」とは暦上の雑節のひとつです。春は「春分の日」を挟んで前後3日ずつの計7日間、秋は「秋分の日」を挟んだ前後3日ずつの計7日間のことをいいます。彼岸の初めの日を「彼岸入り」といい、中日を「彼岸の中日(ちゅうにち)」、終わりの日を「彼岸明け」といいます。また、彼岸に行なわれる春・秋の仏事「彼岸会(ひがんえ)」のことを指す場合もあります。
彼岸は、暦の上で昼と夜の長さが等しい春分・秋分の日に真西に陽が沈むことから、仏教の「西方浄土(さいほうじょうど)」と関係づけられたといわれています。
「春分の日」は、お彼岸の中日です。暦の上では「真西」に沈む太陽は、「極楽の東門(ごくらくのとうもん)」(極楽の東側にあり、人間世界に向かって開いているという門)に入ると伝えられています。この日の太陽を拝むと、十万億土を隔てた「極楽浄土」の東門を拝むことになります。この極楽が最も近くなる日が「彼岸の中日」と考えられているのです。
この日に故人の霊を供養すると、迷わず極楽浄土に成仏できるといわれていて、死者の冥福を祈り、仏供養をします。おはぎ(ぼたもち)、草餅、五目ずし、稲荷ずしなどを作ってお墓参りをします。お彼岸には先祖の霊を供養し墓参が行なわれますが、これは日本独自の風習に仏事が結びついた日本独特のものです。
お彼岸の頃になると、寒暑ようやく峠を越してしのぎやすくなってきます。「暑さ寒さも彼岸まで」というように、寒さも峠を越して温和な気候になります。
旧暦2月15日の涅槃会のころに吹く季節風を「涅槃西風(ねはんにし)」と呼ぶことがあり、極楽浄土からの迎えの西風といわれます。新暦ではちょうど彼岸のころにあたるので「彼岸西風(ひがんにし)」「彼岸荒れ」ともいいます。
かく吹くを涅槃西風とは笑止なりーー森川暁水
こんなに冷たい風なのに極楽から吹いてくる風などとは笑わせる、という意味です。春になりつつあるとはいえ、彼岸のころは季節の変わり目で、まだ天候が安定せず、冬の名残りの雪が降ることがあります。春になる前の最後の雪を「涅槃雪(ねはんゆき)」、あるいは「雪の果(ゆきのはて)」などといいます。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
お彼岸の中日です。これを機会に墓参に出向きましょう。辛いこと、困ったことや、この局面をどう判断するだろうか。など声に出せないものを、墓前で問いかけてみましょう。祖先の叡智が心に届くことでしょう。
読者の皆様、お体ご自愛専一の程
筆者敬白