■3月13日 奈良、春日大社「春日祭(かすがさい)」です。■
「春日大社(かすがたいしゃ)」は、奈良公園内にある神社で、名神大社式内社、二十二社の一社、旧社格は官幣大社。全国の春日神社の総本社です。
春日大社は「平城京の守護」のために創建されました。
本殿向って右から、
第一殿に茨城県の鹿島神宮から迎えた「武甕槌命(たけみかづちのみこと)」、
第二殿に千葉県の香取神宮から迎えた「経津主命(ふつぬしのみこと)」、
第三殿に「天児屋根命(あめのこやねのみこと)」、
第四殿に「比売神(ひめがみ)」は大阪府枚岡神社(ひらおかじんじゃ)から、
それぞれ春日の地に迎えて祀られています。
四神をもって藤原氏の氏神とされ、「春日神(かすがのかみ)」と総称されます。また、武甕槌命が白鹿に乗ってやって来たとされることから、鹿が神使とされています。
現在、奈良公園にはおよそ1100頭の鹿がいます(令和3年)。『万葉集』にも「春日野に粟蒔けりせば鹿待ちに継ぎて行かましを社し怨む(春日野に粟を蒔いたら、粟を食べに来る鹿を待ち続けるように通い続けましょうものを。神の社があるのがうらめしいことです)」(佐伯赤麻呂)と読まれているように、昔から鹿が生息していました。奈良公園の鹿は飼育されていない野生生物で、国の天然記念物に指定されています。
◆春日祭(かすがさい、かすがまつり)
春日祭は嘉祥2年(849)に始まったと伝えられ、葵祭、石清水祭とともに「三大勅祭」〔※〕のひとつといわれます。午前9時、天皇陛下のご名代である勅使を迎えて、国家の安泰と国民の繁栄を祈ります。
明治19年の旧儀再興で例祭日が3月13日に定められた例大祭です。明治維新以前は年2回、2月と11月の申の日(さるのひ)が祭祀日だったことから「申祭(さるまつり)」とも呼ばれています。
※勅祭(ちょくさい):天皇の使者(勅使)が派遣されて祭事を執行される神社の祭祀のこと。特に勅使派遣が定例になっている神社を「勅祭社」と呼びます。
三大勅祭
・春日祭(春日大社)
・葵祭(上・下賀茂神社)
・石清水祭(石清水八幡宮)
春日大社
◇奈良県奈良市春日野町160
◇バス「春日大社本殿」下車、または「春日大社表参道」徒歩10分
◇公式サイト:https://www.kasugataisha.or.jp
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
春日大社の祭事を調べていて、明治維新で祭祀が中断された歴史があることを知りました。
そもそも春日大社は藤原氏の氏神であることから、藤原氏の氏長者(うじのちょうじゃ:氏のなかの代表者)が祭祀を行っていました。藤原氏の隆盛とともに祭りも壮麗になりましたが、応仁の乱以降は中絶。元禄年間に略式化したかたちで再興され、明治19年(1886)、旧儀復興して再び勅祭となりました。
歴史の転換点には、今までの文化・習慣が否定された史実を見つめましょう。新しいものが流行ると、それまでのものが中断や廃止に追い込まれる文化は、どこか未熟さを感じます。
現在の春日祭は平安時代の祭祀の姿をよくとどめているとのこと。どのようなものであれ、次の世代に引き継ぐ努力を欠かさない歴史感が大切です。
3月の中旬、季節の変わり目です。
時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白