■6月7~9日 東京、鳥越神社 例大祭「鳥越祭(とりこえまつり)」です。■
東京都台東区鳥越(とりごえ)に鎮座する「鳥越神社(とりこえじんじゃ)」は、白雉2年(651)「日本武尊(やまとたけるのみこと)」を祀って「白鳥神社(しらとりじんじゃ)」と称したのに始まると伝わります。「天児屋根命(あめのこやねのみこと)」「東照宮公(徳川家康)」を合祀します。
前九年の役(ぜんくねんのえき)のとき、「源頼義・義家(みなもとのよりよし・よしいえ)」親子が、この地を通った際、一羽の名も知らぬ鳥が川を越えるのを見て浅瀬を知り、軍勢はやすやすと大川(隅田川)を渡ることができたということから、「白鳥明神」のご加護と称え、「鳥越大明神」の社号を奉ったと伝わります。
江戸時代までには「第六天神(現・第六天榊神社)」「熱田大明神(現・熱田神社)」の2社も併せて祀られ、3社を総称して「鳥越三社明神」と呼ばれ、一帯の2万坪ばかりを社地とし、そのあたりは「鳥越の里」と呼ばれていたようです。しかし、元和6年(1620)、正保2年(1645)、幕府が全国の天領から運んだ年貢米などを貯蔵する米蔵「浅草御蔵(あさくさおくら)」の建設のため土地を没収され、第六天神と熱田大明神は移転し、鳥越大明神のみ残りました。
◆鳥越祭(とりこえまつり)
例大祭に出る台輪(だいわ)幅4尺3寸の元祖「千貫神輿(せんがんみこし)」は、東京都内で毎年氏子に担がれて氏子町内をまわるいくつかの神輿のなかでも、最も大きく最も重い神輿として有名です。狭い下町の通りを渡御するうえ、神輿の大きな胴体に比べて担ぎ棒が短いため、担ぎ手ひとりの負担が大きく、より重く感じるのだそう。
本社神輿は、例年、日曜日の早朝から宮出しされ、夜の9時に宮入りされます。本社神輿の列の先頭には、猿田彦(天狗)や、手古舞(てこまい)連、子どもたちの持つ五色の旗が歩きます。
夜8時過ぎの宮入り道中では、神輿の周りに提灯を付け、高張提灯(たかはりちょうちん)に囲まれて宮入りします。夜祭りとしても有名で、暗闇のなかを提灯の灯りがゆらゆら揺れることから「お化け神輿」とも呼ばれます。

鳥越神社の氏子は、鳥越、三筋、小島、元浅草など、神社を囲む22町会に加えて、1kmほど離れた駒形一丁目に「志ん猿(しんさる)」と呼ばれる町会があります。江戸のころ、幕府は、大火から神社を護るため、神社の東側の「猿屋町(さるやちょう)」を火除地(ひよけち)にし、現在の駒形一丁目を代替地として猿屋町の氏子たちを転居させました。「新しい猿屋町」という意味から転じて、飛び地に住むことになった氏子たちを「志ん猿」と呼ぶようになったようです。現在、氏子として活動するのは、わずか2軒。千貫神輿の志ん猿への渡御は、戦後の交通戦争のもと警察から中止要請を受け、昭和33年(1958)から途絶えていましたが、令和4年(2022)、65年ぶりに復活しました。
鳥越神社
◇東京都台東区鳥越2-4-1
◇都営地下鉄「蔵前駅」徒歩6分
◇都営大江戸線「新御徒町駅」徒歩8分
◇JR「浅草橋駅」徒歩8分
◇鳥越神社 Facebook:https://www.facebook.com/torikoej
◆「鳥越祭」(台東区役所観光課):https://t-navi.city.taito.lg.jp/event/1411
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
夕刻、神輿の弓張提灯と町会の高張提灯に火が入ると、鳥越祭は最高潮を迎えます。5月下旬から6月にかけて、浅草神社(三社権現)、下谷神社、五條天神社、湯島天満宮など東京の下町では氏神さまのお祭りが続きます。
赤坂の日枝神社「山王祭」が終わると、関東地方ではそろそろ梅雨入り。食品が傷みやすい時期です。生ものにはくれぐれもご注意ください。
時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白