2025.06.09
6月

令和7年(2025)6月16~18日 奈良、率川神社(いさがわじんじゃ)「三枝祭(さいくさのまつり・ゆりまつり)」です。

■率川神社「三枝祭(ゆりまつり)」です。■

奈良の中心市街地を東西に走る三条通りの南に鎮座する「率川神社(いさがわじんじゃ)」は、奈良市中における最古の神社で、桜井市三輪の「大神神社(おおみわじんじゃ)」の境外摂社です。正式名称は「率川坐大神御子神社(いさがわにいますおおみわみこじんじゃ)」

御祭神は、中央に「媛蹈韛五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)」、本殿左に父神の「狭井大神(さいのおおかみ)」、右に母神の「玉櫛姫命(たまくしひめのみこと)」を祀ります。媛蹈韛五十鈴姫命は、初代「神武天皇(じんむてんのう)」の皇后です。全国の神社のなかでも珍しい皇后を主祭神とした神社です。子神を父母神が見守るように祀られていることから「子守明神」とも呼ばれ、、安産、生育安全、家庭円満の神として信仰を集めます。

創立は平城京遷都以前にさかのぼると伝えられます。「大三輪神三社鎮座次第(おおみわしんさんしゃちんざしだい)」によると、推古天皇のころ、三輪の豪族「三輪白堤(みわのしらつつみ、しろつつみ)」が勅命により、「春日三枝神社(現・率川神社)」を建て、媛蹈韛五十鈴姫命をお祀りしたとされます。

境内には、『万葉集』「葉根蘰(はねかづら)今為(す)る妹をうら若み いざ率川(いざかわ)の音の清(さや)けさ」の歌碑があります。「葉根蘰(はねかづら)」は、年頃になった女性がつける髪飾りのこと。今まさに葉根蘰をつけるようになった(年頃になった)女性が初々しいので、さあと誘う、率川の音の清らかなことよ、という意味です。

◆三枝祭(さいくさのまつり)「ゆりまつり」

毎年6月17日、例祭「三枝祭(さいくさのまつり)」が執り行なわれます。大神神社で毎年4月行なわれる「鎮花祭(はなしずめのまつり)」とともに疫病除けを祈願する祭礼です。奈良で最も古い由緒のある祭りのひとつで、大宝元年(701)制定の『大宝律令』には、すでに国家の祭りとして定められ、『神祇令(じんぎりょう)』にも「三枝の花を以て酒樽を飾る祭の故に三枝祭という」と記載されています。16日に「宵宮祭」、18日は「後宴祭」が行なわれます。

媛蹈韛五十鈴姫命の家が「三輪山(みわやま、奈良県桜井市)」のふもとの「狭井川(さいがわ)」のほとりにあり、そこに「笹百合(ささゆり)」の花が美しく咲き誇っていたという故事に則って、笹百合の花を飾り、祭りを行なうようになったことから、「ゆりまつり」という愛称で呼ばれるようになりました。

「三枝祭」を翌日に控えた16日、「ささゆり奉献神事」が行なわれます。「大神神社」で「奉献神事道中安全祈願祭」が斎行されたあと、「三輪山」で栽培された「笹百合」を駕籠におさめ、万葉まほろば線(桜井線)を列車移動。JR奈良駅に到着後、笹百合を乗せた花車・お囃子の社中が笹百合を描いた浴衣に菅笠姿で加わり、駅前で「ささゆり音頭」を踊ったあと、華やかに舞いながら行列を先導します。こうして、ご神花の笹百合がたくさんの人びとに守られながら率川神社に到着し、ご神前にお供えされます。

17日、午前中に、「罇(そん)・缶(ほとぎ)」と呼ばれる2種の酒樽が用いられ、「罇に白酒(しらき、清酒)、缶に黒酒(くろき、濁酒)を盛り、その酒罇の周囲を三輪山に咲く笹百合の花で飾り、楽の音とともに神前に供える」といった古式に則った様式で、神官が供物を神前に奉納します。その後、4人の巫女が「三枝の百合」を手に、神楽「うま酒みわの舞」を奉奏します。

午後からは、「七媛女(ななおとめ)・ゆり姫・稚児行列安全祈願祭」が行なわれます。勾玉(まがたま)を首にかけた七媛女をはじめ、色鮮やかな装束に身を包んだゆり姫や稚児が、およそ2時間かけて奈良市内を巡幸します。

率川神社
◇奈良県奈良市子守町18番地
◇近鉄、JR「奈良駅」から徒歩7分
◇公式サイト:https://isagawa-jinja.jp

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

優雅な楽の音につれて、三輪山に咲き匂う百合の花で供物を飾り、巫女たちが百合を持って美しく舞うという古式ゆかしい神事です。
歴史は古く、平安時代にはとても丁寧に行なわれていた祭祀ですが、いつのまにか中断していたのを、明治時代に復活させたそうです。笹百合は栽培が難しく、芽が出てから花が咲くまで5年もかかるとのこと。古式を守ることは本当に大変ですが、とても優雅で美しい神事で、ぜひ出かけてみたいものです。
筆者敬白

この記事をシェアする
   

関連記事

人気のタグ

  • その他人気タグ: