2025.06.07
6月

令和7年(2025)6月14~16日 北海道神宮(ほっかいどうじんぐう)例祭「札幌まつり」です。

■6月14~16日 北海道神宮 例祭「札幌まつり」です。■

札幌市中央区にある「北海道神宮」は、「円山公園(まるやまこうえん)」に隣接し、緑豊かな森のなかに鎮座しています。「北海道の総鎮守」として崇敬され、道内外から多くの参拝者が訪れます。約18万平方メートルの広大な境内は、自然豊かで多くの野鳥が生息し、バードウォッチングの名所としても有名です。野生のエゾリスに出会えることも。

御祭神は「開拓三神(かいたくさんじん)」「明治天皇(めいじてんのう)」の四柱です。
「開拓三神」とは……
「大国魂神(おおくにたまのかみ)」北海道の国土の神
「大那牟遅神(おおなむちのかみ)」大国主命(おおくにぬしのみこと)の別名、国土経営・開拓の神
「少彦名神(すくなひこなのかみ)」国土経営・医薬・酒造の神

明治2年(1869)「蝦夷地(えぞち)」を「北海道」と改称し、当時まだ広大な原野であった「札幌」で、北海道の開拓が始まりました。開拓にあたり、「開拓民たちの心のよりどころに」と明治天皇が北海道に「開拓三神」を祀るよう詔(みことのり)を出しました。

当時、開拓判官として北海道に渡り、札幌市街の設計に着手した「島義勇(しまよしたけ)」は、地元の地理に明るい開拓者「早山清太郎(そうやませいたろう)」の助言を受けるなどして、三方を山に囲まれ、一方は平野にひらけている「円山(まるやま)」の地に社殿を造営することを決めました。

明治3年(1870年)、島は志半ばで開拓判官を解任され、造営計画も頓挫しかけましたが、明治4年(1871)「仮宮」として建設されました。勅旨により「札幌神社」と命名され、国幣小社に列せられました。昭和39年(1964)、昭和天皇の裁可(さいか)を得て「明治天皇」が増祀(ごぞうし)されました。

島義勇は、「佐賀の乱(さがのらん:開化政策を批判し明治政府に対して佐賀士族が起こした乱)」「江藤新平(えとうしんぺい)」とともに首謀した人物とされていますが、その一方で、北海道開拓に関わり、札幌の町づくりの礎を築いたとして「北海道開拓の父」と呼ばれています。北海道神宮と札幌市役所には、島の銅像が建立され、原野のなかに未来の町の想像図を描いた島の功績を今も称えます。

◆北海道神宮頓宮(とんぐう)

明治11年(1878)、現在のように交通機関が整備されておらず、冬の参拝が非常に困難だったため、中心部として栄えていた現在の中央区南2条東3丁目に札幌神社(当時)の遥拝所として「北海道神宮頓宮」が建立されました。

「頓宮」は、行幸の際の「御旅所(おたびしょ)」のことで、札幌まつりでは、神輿渡御の休憩地点になります。札幌市民に「頓宮さん」と呼ばれて親しまれ、縁結びや子宝にご利益があると多くのひとが参拝に訪れます。

◆開拓神社(かいたくじんじゃ)

北海道神宮の境内には、「開拓神社」など3つの境内社があります。本殿から円山公園へ向かう途中にある開拓神社は、開拓期、幾多の困難を乗り越え、北海道発展の基礎を築いた先人を偲び、その功績を称える神社です。昭和13年(1938)、開道70周年を機に創建され、戦後、北海道神宮の預かり(管轄)となりました。北海道の発展に尽力した人びと37柱を祀ります。

◆札幌まつり

札幌の夏の到来を告げる風物詩「札幌まつり」は、北海道神宮の例大祭で、毎年6月14~16日に行なわれます。明治5年(1872)に最初の例祭が斎行され、明治10年(1877)札幌の人びとから神幸を願う声が起き、翌明治11年(1878)に神輿渡御が行なわれました。最初の神輿は、札幌の宮大工ふたりが作り上げた白木の神輿で、魚商と消防組が担いだそうです。

渡御には、「薄野(すすきの))」の芸妓や常磐津(ときわづ)の社中(しゃちゅう:仲間)を、2台の踊り舞台に乗せて繰り出しました。これが、現在の「山車(だし)」の始まりで、現在では9基の山車が9つの祭典区からそれぞれ出されています。山車の飾り付けは年々大きく華やかになっていき、これらの準備を札幌市民が担っていたことから「市民のまつり」として定着していったのです。

14日「宵宮祭(よみやまつり)」、15日「例祭」、16日「神輿渡御」が行なわれます。お囃子にのって神輿や山車が市内を練り歩く「神輿渡御」は、時代装束に身を包んだ約1600名による盛大な行列です。北海道神宮を出発し、札幌駅から道庁前へ、そして、御旅所の「頓宮さん(北海道神宮頓宮)」に到着します。大通り公園付近を経由して北海道神宮へ戻ります。

お囃子の笛・太鼓の音色もにぎやかに、北海道神宮の神さまをのせた4基の神輿と8基の山車が、色とりどりの平安時代の絵巻物を彷彿させる衣装をまとった市民と一緒に札幌市内を練り歩きます。

祭り期間中、北海道神宮では、屋台の出店、巫女による舞の奉納や太鼓演奏などの伝統的な行事が行なわれます。

札幌まつりのもうひとつの会場、「中島公園」は、札幌中心部にある、みどり豊かな市民の憩いの場です。春には藤の花、秋には紅葉と季節ごとに美しい景色が見られ、「豊平館(ほうへいかん)」や「八窓庵(はっそうあん)」といった歴史的建造物、「札幌天文台」「北海道立文学館」などの文化施設が点在。日本庭園や菖蒲池があり、クラシックなどの音楽コンサートも開催されています。

札幌まつりの期間中は、たくさんの屋台やお化け屋敷、見世物小屋などが建ちます。いか焼き、焼きそば、おでん、りんご飴やチョコバナナなどの屋台で、公園内の歩道が埋め尽くされるほどで、日中から夜まで多くの市民でにぎわいます。

北海道神宮
◇札幌市中央区宮ヶ丘474
◇東西線「円山公園駅」徒歩15分
◇JR「札幌駅」タクシー15分
◇公式サイト:http://www.hokkaidojingu.or.jp

中島公園
◇札幌市中央区中島公園1
◇公式サイト:https://www.sapporo-park.or.jp/nakajima/

◆札幌まつり(北海道神宮):http://www.hokkaidojingu.or.jp/festival/

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

明治6年(1873)開拓使より「例祭当日は休日とし、札幌神社を参拝、もしくは遙拝すること」という布告が出されて以来、札幌では現在でも、6月15日は「郷土の日」として、市内の建設業界は一斉休業し、公立学校などが半日お休みになるそうです。
北海道神宮や札幌まつりの由来を紐解くと、まだ深い原生林だった土地を切り開いてきた人びとと、歴史を見守ってきた開拓三神との深いつながりが見えてきます。
筆者敬白

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