2025.05.28
6月

令和7年(2025)6月5日「めっけ犬伝説」の鶴岡「大山犬祭り(おおやまいぬまつり)」です。

■6月5日 鶴岡「大山犬祭り(おおやまいぬまつり)」です。■

庄内地方南部にある鶴岡市に鎮座する「椙尾神社(すぎのおじんじゃ)」は、欽明天皇3年(542)創始と伝わります。もともと古代信仰の神跡の地として祭壇に祀っていたとされるものを、養老3年(719)現在地に鎮座。

祭神は、「積羽八重事代主命」と「天津羽々命」を祀っていたのにくわえて、中古になり、近郷で稲作が盛んになると、風の神の「龍田彦大神」「龍田姫大神」を勧請しました。武藤氏(むとうし)が出羽国(でわのくに)の地頭となってから「大物忌神」及び「月山神」を相殿に勧請、合計6柱の大神を祀ります。主祭神の「事代主命」は、国土開発、酒造、漁業の神とされています。
明治以前は「小物忌椙尾大明神」と称していましたが、明治2年(1869)「椙尾神社」と改め、同年郷社に列せられ、明治9年(1876)県社に列格されました。

参道口にある一の鳥居「石鳥居(いしとりい)」は、関西の形式に類似した重厚な石鳥居で、慶長16年(1611)、大山城(旧・尾浦城)城代の下次右衛門(しもじうえもん)と郡代の原頼秀(はらよりひで)が建立寄進。石造の「両部鳥居(りょうぶとりい)」として知られ、山形県の有形文化財に指定されています。

◆めっけ犬伝説◆

椙尾神社の裏手に高館山(たかだてやま)があります。むかしむかし、この山には化け物が2匹住んでいました。化け物は村や里に降りてきては田畑や村を荒らしました。それをなだめるのに、祭りの時期に娘を生贄に差し出さなければなりませんでした。毎年、村人たちは生贄の娘を籠に乗せて奉納していました。

ある年、通りかかった旅の六部(ろくぶ:巡礼の修行者)が、村人から生贄の話を聞き、化け物の正体を見極めてやろうと、椙尾神社の天井裏に身を潜めました。夜半を過ぎたころ、生臭い風が吹き、2匹の大入道(おおにゅうどう)が現れました。大入道は、それぞれ東の坊、西の坊と呼んでいました。

大入道たちは、籠から娘を引きずり出し、まな板の上にのせました。そして、「丹波のめっけ犬にはこのことを聞かせるな」と言いながら、娘を真っ二つに切り、頭のほうを東の坊が持ち、足のほうを西の坊が持って、「また来年会おう」と言葉を交わすと消えてしまいました。

六部は「めっけ犬とは、この化け物たちにとっておそろしい天敵に違いない」と考え、村人たちに話をし、めっけ犬を探すため、さっそく丹波の国に赴きました。あちこち探していると、ある茶店で子牛ほどの大きさの犬を見つけました。はたしてその犬は「めっけ」と呼ばれていたのです。

ようやく見つけためっけ犬を借りて六部が大山に戻ってきたとき、すでに次の年の祭りの日になっていました。六部と村人たちは籠にめっけ犬を乗せて奉納しました。

夜中ごろ、ふたたび姿を現した大入道たちが籠を開けたとたん、勢いよくめっけ犬が飛び出して、「ワンワーン」と襲いかかりました。激しい死闘のすえ、めっけ犬は大入道たちを咬み殺すことができましたが、化け物が倒れるのを見届けるように、めっけ犬も力尽きてしまいます。大入道の正体は大狢(おおむじな)でした。

村人たちは、命をかけて闘ってくれためっけ犬に深く感謝して手厚く葬りました。そして、めっけ犬像を作って神社の前立ちにし、村の守護としてお祀りしました。

◆大山犬祭り

「大山犬祭り」は、椙尾神社の例大祭で、「めっけ犬」のお祭りです。300年以上の歴史を持つ大規模なお祭りは、「庄内三大祭り」(ほかの2つは、酒田まつりと鶴岡天神祭)のひとつに数えられ、「からぐり山車」が繰り出すことで有名です。

化け物を退治しためっけ犬の伝説をなぞらえて、人身御供をかたどった「仮女房」「犬ひき」を交えた「くねり(行列)」が町を練り歩きます。

「からぐり」は、庄内弁で、臨時に小屋などを組み立てる、またはやぐら等を上に組み上げていくという意味の言葉です。「からぐり山車」は、山車全体が総欅(けやき)造りの舞台になっていて、毎年歌舞伎や伝説から題材をとって演物が決められ、人形などが飾り付けられます。かつて、台座の上に枝振りの良い木を立てて、枝の上へ上へと15、6mほどの高さに制作し、遙か鶴岡の城下からも見えたとか。

現在は2台の「からぐり山車」が子どもたちの祭り囃の太鼓、笛の音とともにお祭りに繰り出されます。

椙尾神社
◇山形県鶴岡市馬町宮ノ腰169
◆大山犬祭り(大山観光協会):https://www.ooyama-kankou.jp/information_oyama_inumaturi.html

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

各地に見られるムジナ退治伝説です。昨今、熊が山から降りてきて田畑を荒らす被害が報道されています。いつの時代も田畑を荒らす動物は悪者とみなされます。
筆者敬白

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