■■7月16日「賽日」「やぶ入り」「えんま詣り」です。■■
◇賽日・えんま詣り◇
「賽日:さいにち」とは、「藪入り:やぶいり」にあたり、閻魔(えんま)に参詣する日のこと。「閻魔詣り」「十王詣」とも言います。
閻魔王の賽日は「地獄の獄卒も仕事を休み、地獄の釜の蓋もゆるむ日」とされる日。亡者達も責苦を逃れ骨休みになるとされました。奉公人の「薮入り」の日にもあたるので、人々が多く閻魔詣でに行きました。この日、寺院では参詣者に閻魔堂を開帳し「十王図」や「地獄相変図」を拝観させます。
◇十 王◇
「十王」とは、人が死後に亡者となって行く冥土で、亡者の罪を裁く十人の王の総称。秦広王、初江王、宋帝王、五官王、閻魔王、変成王、泰山王、平等王、都市王、五道転輪王。閻魔はその中の一王です。
エンマは梵語で「手綱」「制御」「禁止」などの意。閻魔は、人類最初の死者で、その為、大変苦労して天国(極楽)を発見し、そこの王となりました。のちに、そこへ多くの死者がやって来ます。しかし、中には悪い人もいました。そこで冥界に来た死者を裁き、悪い人を地獄へ収容するようになったのだそうです。
◇六 道◇
人の死後、初七日から七日ごとに上の最初の王から順に裁かれ、三十五日目には、最も重要な「六道」(=地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)の何処に生まれ変わるかを閻魔王が決定します。
◇やぶ入り◇
「薮入り:やぶいり」とは、正月(15日の小正月を済ませた後)と、7月16日の年2回、奉公人が休暇をもらって実家に帰ることをいいます。
昔は、商家の息子達は口減らしも兼ねて、また商売の修行のために奉公に出ました。家内の工業としては、くず繭の糸紡ぎぐらいで、勤め人になるのは官員になるぐらいでしたので、小学校卒業や高等小学校卒で丁稚(でっち)に出たものです。
正月元日には奉公人も新年を祝いますが、2日から初荷や初売りなどで仕事をする慣わしであるため、奉公人は休みがありません。15日の小正月を済ますと、少々の給金や小遣いを貰い、真新しい着物を身に着けて、主人からの土産を持って実家に帰ります。
両親は、普段の奉公先の苦労を労い、出来るだけのご馳走を作り、休養を取らせます。兄弟姉妹が多い家では「薮入り」に家族が集まって、男も女も子供に帰ったものです。奉公人だけでなく、嫁に出た娘が夫とともに里帰りし、畑仕事の手伝いをするところもあります。
薮入りの語義については定説はありません。「藪」というのは「草深い」の意で、都会から草深い村落に帰る意味とか。ひとりぼっちで行き所のない奉公人や、里の遠いところのものが「藪林:そうりん」に入って遊んだのが始まりなどとも伝わります。帰るあてのない者は、藪に入っているほかないからなどとも。
正月と盆の16日は、山の神があたりを歩くので、それに会わぬよう、山仕事も休んで家に籠もっているもの、とされているところもあります。
◇◇◇◇編集後記◇◇◇◇
令和の現代では丁稚・奉公の習慣が消えつつあります。いつの時代もよい環境の職場 と、よい先輩に恵まれることが大切ですね。
時代は変わっても職場の雰囲気や仕事に対する情熱は、次の世代に伝えて行きたいものです。
暑さ厳しい7月後半です。読者の皆様、お体ご自愛専一の程
筆者敬白