■■
7月1日23時13分「半夏生(はんげしょう)」です。「半夏生」は、雑節のひとつで、七十二候のひとつ「夏至(げし)」の末候「半夏生(はんげしょうず)」から作られた暦日(れきじつ)です。「半夏(はんげ:カラスビシャク)」という薬草が生える時季になります。かつては「夏至」から数えて11日目にあたるとされていましたが、現在は太陽が黄経100度を通過するときをいいます。
「カラスビシャク」は、畑などに生えるサトイモ科の多年草で、高さ約20cm、3枚の小葉からなり、長い柄のなかごろと上端とに1個ずつ「むかご」(葉の付け根にできる、多肉で球状の芽)をつけます。6月ごろ、緑または暗紫色をおびた「仏焰苞(ぶつえんほう)」につつまれた「肉穂花序(にくすいかじょ)」を持つ花穂をつけます。この独特な花のかたちを、「役に立たない」という意味で、カラスが使う柄杓(ひしゃく)に見立てて、「烏柄杓(からすびしゃく)」という和名が付けられました。
漢方では、カラスビシャクの地下茎(ちかけい)の最下部の塊状の部分を「半夏」といいます。嘔吐をしずめ、咳止めや去痰などに効果があり、「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」などの漢方薬に用いられます。
カラスビシャクの変わった花のかたちは目につくため、昔から農事の目安とされてきました。二十四節気「芒種」から「半夏生」までを「田植え」の期間とし、「半夏生」過ぎに田植えをすると収穫が半分になるという意味で「半夏半農(はんげはんのう)」「半夏半毛(はんげはんもう)」「半夏半作」などといい、また、「半夏生」のころに第一回の田の草取りが半分すんでいれば農作業は順調であるという「半夏半ならし」という言葉もあります。こうしたことからカラスビシャクには「守田(しゅでん」という別名もあります。
「半夏生」の日は天から毒気が降るので、前夜から井戸や泉にふたをする、野菜の収穫は控える、野菜は一切食べない、竹のふしに虫が生じるから筍を食べてはいけないなど、さまざまな俗習があります。
「半夏生」には、農作業に一段落つけて休息するということで、餅をついたり、だんごやまんじゅうを作って食べる風習もあります。精をつけるため山芋やサバを食べるところもあります。大阪を中心に「タコ」を食べる習慣もあります。稲の穂が多く分かれて生長するようにとの願いを8本足のタコに託したものといわれています。
「半夏生」の前後に降る雨を「半夏雨(はんげあめ)」といい、大雨になるといわれます。「半夏雨」による大水を「半夏水(はんげみず)」と呼ぶ地域もあります。

◆お中元◆
「お中元」の習慣はもともと中国に起源があります。1月15日を「上元(じょうげん)」、7月15日を「中元(ちゅうげん)」、10月15日を「下元(かげん)」といい、合わせて「三元(さんげん)」といって、貴重な品々を捧げて贖罪(しょくざい)をする日でした。これが日本に伝わると、縁故者、目上のひと、恩人などに贈り物をして感謝をあらわす日に変化しました。
お中元をおくる時期は、地域によって違います。一般的には、東日本では7月上旬から15日まで、西日本では7月中旬から8月15日までです。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
「半夏生」は、農業従事者にとって田植えの目安です。商いを生業にする人びとには「梅雨明け」を意味します。相場をなさっているかたの話では、「半夏生」の時期には「梅雨枯れ」といい長続きがしないという意味や「市前」(浅草のほおずき市のことらしい)といい仕込み時期の意味があるようです。
どうやら「半夏生」の時期には、相場でも社会でも仕込み時です。また「半夏生」までに決めないと目標は成就しないらしいく、暦では折り目正しく過ごすのを勧めています。
梅雨のあいだ、そして梅雨が明けるこの時期は、体調管理が難しい時節柄です。
読者の皆様、お体ご自愛専一の程
筆者敬白