■2月15日「涅槃会(ねはんえ)」です。■
「涅槃会:ねはんえ」は、釈迦入滅の2月15日に行われる法会で、涅槃講や涅槃忌とも称します。涅槃図を掲げ、遺教経を読誦して釈尊の遺徳を追慕奉賛します。推古天皇のとき、奈良の元興寺で行われたのが最初といわれています。
「涅槃:ねはん」とは「ニルヴァーナ」の訳語で、迷妄のなくなった心の境地を指す言葉でしたが、この場合には「釈迦が亡くなったの意」で用いられています。実際に釈尊が入滅された月日は不明ですが、南伝仏教(上座部仏教)では「ヴァイシャーカ月の満月の日」(ウェーサーカ祭)と定められています。
「ヴァイシャーカ月」が「インドの暦」では「第2の月」であることから、2月15日と定められたものです。
「涅槃図:ねはんず」とは、釈迦が娑羅双樹の下で涅槃に入った際の「頭を北にして西を向き右脇を下にした姿」で臥し、周囲に十大弟子を始め諸菩薩、天部や獣畜、虫類などまでが嘆き悲しむさまを描いたもの。仏涅槃図(ぶつねはんず)ともいいます。これが後に、一般の人が亡くなった時に「北枕」とされる由縁です。
◆「娑羅双樹:さらそうじゅ・しゃらそうじゅ」は、インド原産の常緑高木。「菩提樹」「無憂樹」と並ぶ仏教聖木の一つ。「沙羅双樹」とも記し、他に「サラノキ」「シャラノキ」とも呼ばれます。
二葉柿科。学名・Shorea robustarobusta=大形の、頑丈な、の意。幹高は30mにも達し、春に白い花を咲かせ、ジャスミンティーにも似た香りを放ちます。北インドからネパールに分布する植物で、高地などに生える高木。
釈迦入滅のとき、臥床の四辺にあったという「4双8本の沙羅樹」は、時じくの花を咲かせたのち、たちまちに枯れて白色に変じ、さながら鶴の羽根のごとくであったという。
日本の気候には適していないので、温室以外ではまず見かけません。温暖な地域の仏教寺院には植えられているようです。日本では「夏椿:なつつばき」のことを沙羅双樹として扱うことがあるそうです。
「祗園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理(ことわり)をあらはす おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし」は平家物語の冒頭ですが、ここでの沙羅双樹は、おそらく夏椿でしょう。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
「祇園精舎の鐘の音・・・・」平家物語の冒頭を暗唱したのは中学時代だっただろうかと、つい昨日のような錯覚を楽しみながら春の足音を感じています。まだまだ寒い日が続きます。毎年涅槃会の時期から月が変わって3月になると、もうすぐ春のお彼岸だなと感じます。寒さの中に路地の雑草に春らしさが感じられるようになってきました。
読者の皆様、時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白