2025.02.07
2月

令和7年(2025)2月14日 奈良、長谷寺「だだおし」です。

■奈良、長谷寺「だだおし」です。■

「長谷寺(はせでら)」は、山号を豊山(ぶさん)と称し、正式には「豊山神楽院長谷寺」といいます。『万葉集』「隠国(こもりく)の泊瀬(はつせ)」とうたわれたように、昔はこの地を「豊初瀬(とよはつせ)」「泊瀬(はつせ)」などと呼んでいたので「初瀬寺」「泊瀬寺」「豊山寺」とも呼ばれていました。

現在は、真言宗豊山派(しんごんしゅうぶざんは)の総本山として、また西国三十三観音霊場第八番札所として、全国に末寺3000余ヶ寺、檀信徒はおよそ300万人。四季折々のさまざまな美しい花が咲く「花の御寺(みでら)」として多くの人々の信仰をあつめています。

御本尊の「十一面観世音菩薩」は高さ10mを超える、日本最大級の木造仏です。『今昔物語』に記されたところによると、6世紀はじめ洪水により近江国高島郡の琵琶湖のほとりに流れ着いた巨木が、その霊力で祟りをもたらすとされ、幾多の出来事を経たのち「徳道上人(とくどうしょうにん)」のもとで十一面観世音菩薩像となったそうです。すると上人の夢に神が現れて「北の山の下の大岩を掘り出したその上に像を安置せよ」と告げ、そうして祀られたのが長谷寺と伝わります。

◆だだおし

「だだおし」は、人間の罪や穢れを仏前に懺悔し、身心も清浄にして新年を迎えるため、悪魔退散、無病息災、万民豊楽を祈る法要です。毎年2月8日から始まる「修二会(しゅにえ)」の締めくくりとして、最終日2月14日に行われ、3月に行なわれる東大寺二月堂の「お水取り(お松明)」とともに、大和路に春を呼ぶ火まつりとして知られています。

だだおしは「追儺会(ついなえ=鬼やらい)」のひとつです。「だだ」とは、「閻魔大王(えんまだいおう)」の持ち物で、生前の行為を審判し懲罰を加える杖のことを指すという説や、疫病神を駆逐する「儺押し(だおし)」からきたとする説、「閻浮檀金宝印(えんぶだごんほういん)」あるいは「檀拏印(だんだいん)」を人々の額に押す「檀拏押し」からきたという説、「だだだ・・・」と鬼を追い出すことからきたという説など諸説あります。

まず、「悔過導師(けかどうし)」以下職衆が本堂内陣に入り、本尊「十一面観世音菩薩」の前で人びとの罪科を懺悔する「悔過法要」が行なわれます。そして厳重な封印を解かれた七種秘宝が本尊正面に供えられ、一山の僧侶が出仕する厳粛な「本法要」、つづけて「牛玉札(ごおうふだ)」の御加持が行なわれます。

にわかに太鼓・法螺貝が堂内に激しく鳴り響くと、大鬼面をつけた赤・青・緑色の3匹の鬼が登場し、金棒を振りかざし大音勢で堂内を暴れ回ります。すると僧侶たちが牛玉札の威力を持って堂外に追い出し、追われた鬼は男衆と共に大松明を担いで本堂の周りを練り歩きます。大松明は、長さ一丈五尺余り(約4.5m)重さ三十貫超(約120kg)。暴れ回った鬼たちは何処へともなく退散します。

長谷寺
◇奈良県桜井市初瀬731-1
◇近鉄大阪線「長谷寺駅」徒歩15分
◇近鉄大阪線・JR万葉まほろば線「桜井駅」からバス「長谷寺参道口」徒歩10分
◇公式サイト:https://www.hasedera.or.jp

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

1月の左義長、どんど祭などは火まつりの代名詞です。2月の菅生石部神社「竹割まつり」、神倉神社「御燈祭(おとうまつり)」など、大きな火まつりがあります。長谷寺の「だだおし」のあと、いよいよ古都奈良にも春が訪れます。
皆様、時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白

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