2025.01.31
2月
雑節・歴注・撰日

令和7年(2025)2月6日 笠間稲荷「初午祭」です。

■2月6日 笠間稲荷「初午祭」です。■

「笠間稲荷神社(かさまいなりじんじゃ)」は、別称「胡桃下稲荷(くるみがしたいなり)」「紋三郎稲荷(もんざぶろういなり)」と呼ばれる神社本庁の別表神社です。本殿は万延元年(1860)建立の建築で、周囲の彫刻は国の重要文化財に指定され、「三頭八方睨み龍」「牡丹唐獅子」は特に有名です。

御祭神は「宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと:正一位の最高位の神)」。第36代孝徳天皇の御代、白雉2年(651)創建、1350余年の歴史を有する由緒ある神社で、日本三大稲荷のひとつです。五穀の神「宇迦之御魂命」は、生命の根源を司る「いのち」の根の神「稲荷大神(いなりおおかみ)」と古くから同一視され、農業の守護神、商業、工業、殖産興業、交通安全、厄除、火防の神として広く崇敬されています

稲荷大神にとって「キツネ」は、熊野神社の「カラス」、八幡神社の「ハト」、氏神さまの「狛犬」などと同様に神さまのお使いをする霊獣で、「神使(かみのつかい)」「眷属(けんぞく)」などと呼ばれます。

中世の時代、人間が持っている様々な欲望を、直接神さまに祈願するのは畏れ多いとして、特別に選ばれた動物を通してお願いすることが行われたことによるものです。キツネがお使いとして選ばれたのは、稲荷大神が農業神であることと深く結びついています。

日本人には古くから神道の原形「山の神、田の神」が信仰されていました。春になると山の神は山から里へ降り、田の神となって稲の生育を守護し、収穫が終えた秋に山へ帰って山の神となります。ちょうどキツネが「農事の始まる初午の頃から収穫の終わる秋まで」人里に姿を見せる時期と重なります。

キツネが稲荷大神のご祭神と混同されるようになったのは、平安時代以降の神仏習合によります。稲荷大神が仏教の守護神「茶枳尼天(だきにてん)」垂迹(すいじゃく:仏菩薩が、仮に日本の神の姿をとって現れること)とされたからです。茶枳尼天は、またの名を「白晨狐王菩薩(びゃくしんこおうぼさつ)」といい、キツネの精とされました。このことから一般民衆の間で、いつのまにか稲荷大神のご祭神とキツネが混同されてしまったと考えられています。また、稲荷大神の別称「御饌津神(みけつかみ)」「ミケツ」が混同されて「三狐神(みけつかみ)」と記されたこともその一因。ちなみに御饌津神は、食物をつかさどる神(「饌(せん)」は、食物、食事、供え物のこと)で、キツネとは全く関係ありません。

◆初午祭

笠間稲荷神社では、新暦2月の初午に「初午祭」が、旧暦2月初午には「旧初午祭」が行なわれます。

この時期、厳冬から春に季節が移り変わり、草木をはじめ万物が活動を始めます。その「陽気」がもっとも盛んになるのが「初午」の日です。農家でその年の農作業を始めるのも、旧暦の初午のころです。また、「午」は動物の「馬」に通じ、馬は神の最も愛寵されたものとして、さらに農耕に役立つ動物として、午の日は神聖な日と考えられるようになりました。「午」は方角では南、時間では昼の12時・正午を表し、陽気の盛んなことを示しています。

この日、笠間稲荷では、一陽来復と全てのものの蘇り、そして作物の豊饒を願う神事が斎行されます。

笠間稲荷神社(かさまいなりじんじゃ)
◇茨城県笠間市笠間1番地
◇JR水戸線「笠間駅」徒歩20分
◇北関東自動車道「友部IC」~国道355号約15分
◇公式サイト:http://www.kasama.or.jp

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

笠間稲荷神社が鎮座する茨城県笠間市では、初午の日、「笠間初午いなり寿司まつり」が賑やかに開催されます。稲荷鮨(いなりずし)は、天保の改革下で高価な食材が規制されたため、魚を使わない安価な鮨として屋台などで売られるようになったのが発祥とされています。笠間市では、お稲荷さんの使いであるキツネの好物、あぶらあげを使った長い稲荷鮨をみんなで巻いて作ります。
「笠間いなり寿司」は、そば、くるみ、舞茸など、いろいろな食材を使った変わり種の稲荷鮨だそうです。市内の飲食店でも、それぞれ工夫をこらした稲荷鮨を出しているとのこと。初午の日、笠間稲荷に参詣したあとは、ご当地グルメの稲荷鮨を味わってみてはいかがでしょうか。
筆者敬白

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