■奈良、長谷寺「だだおし」です。■
「長谷寺(はせでら)」は、山号を豊山(ぶさん)と称し、正式には「豊山神楽院長谷寺」といいます。
『万葉集』に「隠国(こもりく)の泊瀬(はつせ)」とうたわれたように、昔はこの地を「豊初瀬(とよはつせ)」「泊瀬(はつせ)」などと呼んでいたので「初瀬寺」「泊瀬寺」「豊山寺」とも呼ばれていました。
現在は、真言宗豊山派(しんごんしゅうぶさんは)の総本山として、また西国三十三観音霊場第八番札所として、全国に末寺3000余ヶ寺、檀信徒はおよそ300万人。四季を通じて「花の御寺」として多くの人々の信仰をあつめています。
「だだおし」は、人間の罪や穢れを仏前に懺悔し、身心も清浄にして新年を迎えるため、悪魔退散、無病息災、万民豊楽を祈る法要です。毎年2月8日から始まる修二会(しゅにえ)の締めくくりとして、最終日2月14日に行われます。
これはだだおしは「追儺会(ついなえ=鬼やらい)」のひとつです。「だだ」とは、閻魔大王(えんまだいおう)の持ち物で、生前の行為を審判し懲罰を加える杖のことを指すという説や、疫病神を駆逐する「儺押し(だおし)」から来たとする説、「閻浮檀金宝印(えんぶだごんほういん)」あるいは「檀拏印(だんだいん)」を人々の額に押す「檀拏押し」から来たという説、「だだだ・・・」と鬼を追い出すことから来たという説など、諸説あります。
太鼓・法螺貝が堂内に激しく鳴り響くと、大鬼面をつけた赤・青・緑色の3匹の鬼が登場し、金棒を振りかざし大音勢で堂内を暴れ回ります。すると、僧侶達が牛玉札の威力を持って堂外に追い出し、追われた鬼は男衆と共に大松明を担いで本堂の周りを練り歩きます。<br />
大松明は、長さ一丈五尺余り(約4.5m)重さ三十貫超(約120kg)。「長谷寺のだだおし」は、大和路に春を呼ぶ火まつりとして知られています。
長谷寺
◇奈良県桜井市初瀬731-1
◇近鉄大阪線「長谷寺駅」徒歩15分
◇近鉄大阪線・JR万葉まほろば線「桜井駅」からバス「長谷寺参道口」徒歩10分
◇公式サイト:https://www.hasedera.or.jp
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
1月の左義長、どんど祭などは火まつりの代名詞です。2月の菅生石部神社「竹割まつり」、神倉神社「御燈祭(おとうまつり)」など、大きな火まつりがあります。
長谷寺の「だだおし」のあと、いよいよ古都奈良にも春が訪れます。
皆様、時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白