■2月12日 笠間稲荷「初午祭」です。■
「笠間稲荷神社(かさまいなりじんじゃ)」は、別称「胡桃下稲荷(くるみがしたいなり)」「紋三郎稲荷(もんざぶろういなり)」と呼ばれる神社本庁の別表神社。本殿は万延元年(1860)建立の建築で、周囲の彫刻は国の重要文化財指定。「三頭八方睨み龍」「牡丹唐獅子」は特に有名。
御祭神は「宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと:正一位の最高位の神)」。第36代孝徳天皇の御代、白雉2年(651)創建、1350余年の歴史を有する由緒ある神社で、日本三大稲荷のひとつです。
2月の最初の午の日、「初午祭」が行われます。一陽来復と全てのものの蘇り、そして作物の豊饒を願う神事です。「午」は動物の馬に通じ、馬は神の最も愛寵されたものとして、人々は馬を通じて神の霊威を感じ、午の日を神聖な日と考えるようになりました。方角では南、時間では昼の12時(正午)を表し、陽気の旺んなことを示しています。
稲荷大神にとって「キツネ」は、熊野神社の「カラス」、八幡神社の「ハト」、氏神さまの「狛犬」などと同じように神さまのお使いをする霊獣で、「神使(かみのつかい)」「眷属(けんぞく)」などと呼ばれます。
中世の時代、人間が持っている様々な欲望を、直接神さまに祈願するのは畏れ多いとして、特別に選ばれた動物を通してお願いすることが行われたことによるものです。キツネがお使いとして選ばれたのは、稲荷大神が農業神であることと深く結びついています。
日本人には古くから神道の原形「山の神、田の神」が信仰されていました。春になると山の神が山から里へ降り、田の神となって稲の生育を守護し、収穫が終えた秋に山へ帰って山の神となるというもの。キツネも「農事の始まる初午の頃から収穫の終わる秋まで」人里に姿をあらわします。
キツネが稲荷大神のご祭神と混同されるようになったのは、平安時代以降の神仏習合によります。稲荷大神が仏教の守護神「茶枳尼天(だきにてん)」の垂迹(すいじゃく)とされたからです。茶枳尼天は、またの名を「白晨狐王菩薩(びゃくしんこおうぼさつ)」といい、キツネの精とされました。このことから一般民衆の間で、いつのまにか稲荷大神のご祭神とキツネが混同して理解されてしまったわけです。
また、稲荷大神のまたの名である「御饌津神(みけつかみ)」の「ミケツ」が混同されて「三狐神(みけつかみ)」と記されたこともその一因。御饌津神とは、食物をつかさどる神のことで(「饌(せん)」は「食物、食事、供え物のこと)、キツネとは全く関係はありません。
神社神道本来の心である「明き心」「清き心」「正しき心」「直き心」をもって御祭神「宇迦之御魂命」の御神慮と御神徳を正しく理解することが大切です。
笠間稲荷神社(かさまいなりじんじゃ)
◇茨城県笠間市笠間1番地
◇JR水戸線「笠間駅」徒歩20分
◇北関東自動車道「友部IC」~国道355号約15分
◇公式サイト:http://www.kasama.or.jp