2024.02.07
2月

令和6年(2024)2月11日 奈良、橿原神宮(かしはらじんぐう)「紀元祭(きげんさい)」です。

■2月11日 奈良、橿原神宮「紀元祭」です。■

神武天皇(じんむてんのう)の出生は、庚午年(紀元前711)1月1日。在位期間は辛酉年1月1日(紀元前660年=弥生時代にあたる)から神武天皇76年3月11日とされます。

100歳を越える年齢で、とても一人の人物だったとは思えないほどの期間、業績などから見て、実在の人物ではないとするのが一般的な見解です。日本神話の一部として理解すべきでしょう。

神武天皇は『古事記』では「神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)」などと称され、『日本書紀』では「神日本磐余彦天皇(かんやまといわれびこのすめらみこと)」「始馭天下之天皇:はつくにしらすすめらみこと」「磐余彦火々出見尊(いわれびこほほでみのみこと)」「狭野尊(さののみこと、さぬのみこと)」「彦火火出見(ひこほほでみ)」などと称されます。
「神武天皇」という呼称は、奈良時代後期の文人・淡海三船(おうみのみふね)〔※〕が歴代天皇の漢風諡号を一括撰進したときに付されたとされます。

※淡海三船(おうみのみふね):奈良前期の漢詩人、漢学者。弘文天皇の曾孫。『唐大和上東征伝(とうだいわじょうとうせいでん)』の著者と伝わる。

◇橿原神宮「紀元祭」◇

2月11日に奈良県橿原市の橿原神宮(かしはらじんぐう)で行われる「紀元祭」は、宮内庁の勅使も参向し、御祭神「神武天皇」の橿原宮での即位をしのび。建国創業の御聖業を仰ぎ慕う祭典として、全国からの参拝者で賑わいます。

◆「紀元」とはーー
歴史上の年数を数えるときの基準となる最初の年をいいます。日本では明治5年(1872)11月15日に、神武天皇即位の年を元年と定めました。これを「皇紀」と呼びます。「皇紀元年」は西暦では紀元前660年にあたります。現在、キリストの誕生(正しくは紀元前4年)を元年とする「西暦」が広く使われています。イスラム暦では預言者ムハンマドがメッカからメディナに逃れた=ヒジュラ(聖遷)の年(西暦622年)を元年とします。

◇紀元二千六百年式典◇

神武天皇在位中の皇居があったとされる畝傍山(うねびやま)の東南、橿原の地に「橿原神宮」はあります。参拝者は年間1000万人ともいわれます。

昭和15年(1940)、紀元二千六百年を記念する祝典が全国各地の神社で行われ、橿原神宮では昭和天皇・香淳皇后の出御の下、内閣主催の「紀元二千六百年式典」が盛大に催されました。

畝傍山の「畝傍(うねび)」とは「火がうねる」の意。古代人がこの山を「火山」と認識していた可能性があります。実際に頂上近くの緩い傾斜面は、黒雲母安山岩(火山岩)で形成され、ざくろ石黒雲母流紋岩の流離構造を示す貫入岩(かんにゅうがん)〔※〕も存在します。

江戸時代以前は、山上に70以上の寺院が存在していたといわれています。現代でも曹洞宗慈明寺(じみょうじ)が畝傍山西麓にあります。寺の近くには「畝火山口神社(うねびやまぐちじんじゃ)」〔※〕があり、付近には藤原宮跡、飛鳥宮跡など数々の古墳があります。

明治に入り、神武天皇の宮(畝傍橿原宮)があったとされる畝傍山の麓に橿原神宮を興し、それまで多武峰(とうのみね=奈良県桜井市)で奉祭してきた神武天皇の「御霊」を移したとされます。

※貫入岩(かんにゅうがん):マグマが地表に噴出せず、地殻内部に貫入して生じた岩石の総称。しかし、実際には、比較的粗粒な火成岩のことをいうことが多い。
※畝火山口神社(うねびやまぐちじんじゃ):畝傍山の麓に鎮座する神社。かつては畝傍山山頂に鎮座しており、現在でも社殿跡が山頂に残る。御祭神「気長足姫命(神功皇后)」は安産の神として信仰を集める。交通安全祈願で訪れる人も多い。

◇神武天皇崩御◇

神武天皇は『古事記』によると137歳で亡くなり、御陵は、畝傍山の北の方の白檮(かし)の尾の上にあり(「御陵在畝火山之北方白檮尾上也」)と記され、『日本書紀』には127歳で亡くなり、畝傍山の東北陵に葬る(「葬畝傍山東北陵」)と記されています。宮内庁の定めによれば、奈良県橿原市大久保町のミサンザイ古墳神武天皇陵です。正式には「畝傍山東北陵(うねびやまのうしとらのすみのみささぎ)」といいます。

橿原神宮
◇奈良県橿原市久米町934
◇近鉄橿原線・近鉄南大阪線「橿原神宮前駅」徒歩約10分
◇公式サイト:https://kashiharajingu.or.jp

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

橿原神宮の「紀元祭」に合わせて大音量で街なかを走る街宣車が現れるそうですが、それで楽しい思いをする方はいないでしょう。歴史解釈の違いを主張するのは理解できるのですが、告知の仕方を考えて欲しいものです。さぞかし神武天皇もお嘆きのことでしょう。
読者の皆様、寒さのなかにも春の気配を感じる時期になりました。
時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白

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