■12月31日「除夜の鐘」です。■
「除夜の鐘(じょやのかね)」とは、12月31日の除夜の12時をはさんで諸方の寺院で鐘を撞(つ)くこと。または、その鐘の音のこと。「百八の鐘」ともいわれるように、百八つ鳴らすことになっています。
「108」という数字は、「人間には百八つの煩悩がある」という仏教思想に基づきます。百八の煩悩を払い、新年を迎えるといった意。百八つの煩悩を覚まし、仏道を成ぜさせる煩悩解脱を祈って鳴らすともいわれています。
この「百八つの鐘」は、大晦日だけとは限らず、寺院では朝夕108回鐘を鳴らすのを原則としています。ただし、普段は略して18回にとどめます。暁に鳴らす「暁鐘(ぎょうしょう)」は眠りを戒め、暮れに打つ「昏鐘(こんしょう)」は目の眩んだ迷いを覚まします。その響きを聴く者は、一切の苦から逃れ、悟りに至る功徳があるとされます。
鐘を108回も打つとなると、数えるのも大変です。数珠を使ったり、豆を用意したりして数えます。数珠は「木患子(もくげんじ)」〔※〕の実を貫き通して作られています。鐘をつく前に鐘に向かい、合掌礼拝してから撞木(しゅもく)を握ります。そして107声までは旧年に、最後の1声は新年に撞きます。
※木患子(もくげんじ):ムクロジ科の落葉高木。本州日本海側の山林や崖地に分布。7~8月に黄色の集団花を咲かせます。寺院等に植えられ、実はほおづき状になり、その中の種は黒く、数珠に使われます。別称に「栴檀葉菩提樹(せんだんばのぼだいじゅ)」。
仏教では、そもそも人間の心身を苦悩させる煩悩は108種類あるとされています。一説には「108の煩悩」とは「眼・耳・鼻・舌・身・意の六根」が、「色・声・香・味・触・法の六塵」と関係するときに、それぞれ「苦楽・不苦・不楽の三種」があって18種の煩悩となり、これを「染・浄」の2つに分け、この36種をさらに「過去・現在・未来」の3つに分けて108種とされます。人間の罪業消滅の意を込めて、鐘を撞くときには般若心経や観音経などのお経を唱えながら、心清らかに撞木を打ちます。
鐘の種類には「梵鐘(ぼんしょう)」と「喚鐘(かんしょう)」があり、梵鐘は「大鐘(おおがね)」「釣鐘(つりがね)」「鯨鐘(げいしょう)」などとも呼ばれます。喚鐘は勤行(ごんぎょう)や法会(ほうえ)などの開始を報じる小形の梵鐘(ぼんしょう)で「半鐘(はんしょう)」とも。銅・錫・亜鉛など金属で造られます。
梵鐘の「梵」は、梵語(サンスクリット)の Brahma(神聖・清浄)を音訳したもの。中国、殷・周時代から制作されている「編鐘(へんしょう)」という青銅器が梵鐘の源流と推定されています。
一般的な形状は、龍の頭を模った龍頭といわれる釣り手があり、下部には蓮華状の2個の突座があって、吊るした撞木(しゅもく)でここを叩きます。上部に乳房状の小突起が巡らされています。
日本にはじめて鐘がもたらされたのは、欽明天皇23年(562)に大将軍・大伴狭手彦(おおとものさでひこ)が高麗(朝鮮)に遠征した折、戦利品として3口の銅鋳鐘を持ち帰ったものとされています。
日本で鋳造された現存する最古の鐘は、文武天皇2年(698)に造られた京都の妙心寺のもの、そして、同一工房の作とされる観世音寺のものと伝わります。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
四方八方に鳴り響く荘厳な鐘の音は、それを聞く人びとの心に温かい仏心を呼び起こします。除夜の鐘は人ばかりでなく、牛や馬や道具にまで仏心を及ぼして心休ませ、生きとし生けるもの全ての歳取りをうながすようです。
コロナだけでなくインフルエンザやそのほかの感染症も流行っているようです。外出するときはマスク、お帰りになったら手洗いうがいを励行しましょう。この時期の体調不良は長引きます。
来年も一日一日を大切に暦を配信していきます。お付き合い下さい。
どうぞ良いお年をお迎えください。
筆者敬白