■12月20日~12月31日「八専(はっせん)」です。■
暦の上で「十干(じっかん)」※「十二支(じゅうにし)」※を、五行説(ごぎょうせつ)の「木火土金水」※に当てはめると、干支ともに同じ気が重なるものが12日あります。そのうちの8日が「壬子~癸亥」の12日間に集中していて、特別な意味を持つ期間とされました。同じ気が重なることを「専一」と言いい、それが8日あることから「八専」と呼びます。八専の期間には同じ気が重ならない日が4日あり、これを「八専期間中の間日(まび)」※と呼びます。
1日目 | 壬子 | 水水 | ← | 水の気が重なる(専一) |
2日目 | 癸巳 | 水土 | 間日(まび) | |
3日目 | 甲寅 | 木木 | ← | 木の気が重なる(専一) |
4日目 | 乙卯 | 木木 | ← | 木の気が重なる(専一) |
5日目 | 丙辰 | 火土 | 間日(まび) | |
6日目 | 丁巳 | 火火 | ← | 火の気が重なる(専一) |
7日目 | 戊午 | 土火 | 間日(まび) | |
8日目 | 己未 | 土土 | ← | 土の気が重なる(専一) |
9日目 | 庚申 | 金金 | ← | 金の気が重なる(専一) |
10日目 | 辛酉 | 金金 | ← | 金の気が重なる(専一) |
11日目 | 壬戌 | 水土 | 間日(まび) | |
12日目 | 癸亥 | 水水 | ← | 水の気が重なる(専一) |
八専の期間は「天干(てんかん)」※と「地支(ちし)」※が同じ気なので、気が偏って良い事はますます良く、悪いことは更に悪く傾きやすくなります。振幅の激しい期間で、準備を怠らなかった人には良い結果が、場当たり的な対応をした人にはそれなりの結果が訪れます。
古代中国では、むしろすべてのことに良いとされていて、「淮南子(えなんじ)」※には「専を以て干支(えと)に従えばすなわち功あり」と記されています。八専の期間中は、天地が朦朧(もうろう)として、人間社会でもバランスが取りづらくなります。人間関係では些細なことで思わぬ亀裂が入ったりします。他にはギャンブルなど、努力が伴わない行動は避けましょう。
「八専」はもともと、築城・軍営・出陣・出兵には適さない日(凶日)として、戦争を司る軍略家の用いるものでした。一般には、家作・植樹・地ならしなどの建設的な事柄には良く。立ち退き・解体・廃棄など処理的な事柄や婚礼、蓄類の売買には良くない日とされ、仏事も避ける(忌む)とされます。また、八専期間中は雨が降る日が多いといわれています。八専始め「壬子=水と水」八専終わり「癸亥=水と水」と水の気が始めと終わりにあるので、雨が多い期間とされています。
※十二支(じゅうにし)
子(ネズミ)・丑(牛)・寅(トラ)・卯(うさぎ)・竜(龍)・未(蛇)・午(馬)・羊(ヒツジ)・申(サル)・酉(にわとり)・戌(犬)・猪(いのしし)の12種の動物を表わす漢字のこと。「十干(じっかん)」※と組み合わせることで、60を1周期とする「干支(えと)」を形成し、方角や時間、暦に用いられる。また、陰陽五行説と組み合わせることで「卦(け)」にも応用されるようになった。
※十干(じっかん)
木・火・土・金(ごん)・水の五行(五行)を兄(え)・弟(と)に分けたもの。年・日を現す。甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戊(つちのえ)・己(つちのと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)を十二支と組み合わせて使う。
※五行(ごぎょう)、五行思想(ごぎょうしそう)、五行説(ごぎょうせつ)
古代中国に端を発する自然哲学の思想。万物は火・水・木・金・土の5種類の元素からなるという説である。その根底には、5種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」という考え方がある。西洋の四大元素説(四元素説)と比較される東洋思想。
※間日(まび)
八専のうち、癸丑(みずのとうし)・丙辰(ひのえたつ)・戊午(つちのえうま)・壬戌(みずのえいぬ)の4日間を、八専の「間日」といいます。間日は八専の影響を受けづらい日です。
※天干(てんかん)
十干(じゅっかん)とも呼ぶ。古代中国の数詞で時間と空間を表わすのに使用した。殷(いん)代(紀元前17世紀~紀元前11世紀)の頃の甲骨文字に記載がある。五行の「木」「火」「土」「金」「水」が、陰陽それぞれに分かれたもので、「甲」「乙」「丙」「丁」「戊」「己」「庚」「辛」「壬」「癸」の10個に分けられる。
※地支(ちし)
十二支(じゅうにし)とも呼ぶ。「子」「丑」「寅」「卯」「辰」「巳」「午」「未」「申」「酉」「戌」「亥」の総称である(それぞれ音訓2通りの読み方がある)。十干を天干というのに対して、十二支を地支ともいう。
※淮南子(えなんじ)
中国前漢時代の皇族で、学者でもある「淮南王劉安」(えなんおうりゅうあん:紀元前179年~紀元前122年)が、学者を集めて編纂させた思想書。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
「八専」が終ると、なぜか余裕ができます。この機会に新しい計画を立てるなど、八専の作用を存分に活用すれば、物事が確実に成就していきます。いわゆる「準備」、「事始め」の期間が「八専」と言えます。
難しい問題や逆境にある人が、ここで一大決心をすると、大自然が味方になって、良い作用が発現した例を数多く聞き及びます。
体調を整えることも、大切な準備のひとつ。時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白