2021.12.28
12月
雑節・歴注・撰日

令和3年(2021)12月31日 除夜の鐘(じょやのかね)です。

■12月31日「除夜の鐘」です。■


「除夜の鐘:じょやのかね」とは、12月31日の除夜の12時をはさんで諸方の寺院で鐘を撞(つ)くこと。または、その鐘の音のこと。「百八の鐘」ともいわれるように、百八つ鳴らすことになっています。
 「一〇八:108つ」という数字は、人間には百八つの煩悩がある」という仏教思想に基づいたもの。百八の煩悩を払い、新年を迎えるといった意。百八つの煩悩を覚まし、仏道を成ぜさせる煩悩解脱を祈って鳴らすともいわれています。
 この「百八つの鐘」は、大晦日だけとは限らず、寺院では朝夕108回鐘を鳴らすのを原則としています。但し、普段は略して18回にとどめます。暁に鳴らす「暁鐘:ぎょうしょう」は眠りを戒め、暮れに打つ「昏鐘:こんしょう」は目の眩んだ迷いを覚ますため。その響きを聴く者は、一切の苦から逃れ、悟りに至る功徳があるとされます。

鐘を108回も打つとなると、数えるのも大変です。数珠を使ったり、豆を用意したりして数えます。数珠は「木患子:もくげんじ」の実を貫き通して作られています。鐘をつく前に鐘に向かい、合掌礼拝してから撞木(しゅもく)を握ります。そして107声までは旧年に、最後の1声は新年に撞きます。
 
※木患子(もくれんじ)植物でもくろじ科もくげんじ属。または栴檀葉菩提樹(せんだばぼだいじゅ)、本州日本海側の山林や崖地に分布。高さ10mになる落葉樹の高い木。7~8月に黄色の集団花を咲かせます。寺院等に植えられ、実はほおづき状になり、その中の種は黒く、数珠に使われます。
 

 

 

 

 

仏教では、そもそも人間の心身を苦悩させる煩悩は、108種類あるとされています。一説には「108の煩悩」とは「眼・耳・鼻・舌・身・意の六根」が、「色・声・香・味・触・法の六塵」と関係するときに、それぞれ「苦楽・不苦・不楽の三種」があって十八種の煩悩となり、これを「染・浄」の二つに分け、この三十六種をさらに「過去・現在・未来」の三つに分けて108種となります。人間の罪業消滅の意を込めて、鐘を撞くときには般若心経や観音経などのお経を唱えながら、心清らかに撞木を打ちます。

鐘の種類には「梵鐘:ぼんしょう」「喚鐘:かんしょう」があり、梵鐘は「大鐘(おおがね)・釣鐘(つりがね)・鯨鐘(げいしょう)」などとも呼ばれます。喚鐘は勤行(ごんぎょう)や法会(ほうえ)などの開始を報じる小形の梵鐘(ぼんしょう)で半鐘とも。銅・錫・亜鉛など金属で造られます。
 
梵鐘の「梵」は、梵語(サンスクリット)のBrahma(神聖・清浄)を音訳したもの。中国、殷・周時代から制作されている「編鐘:へんしょう」という青銅器が梵鐘の源流と推定されています。
 
一般的な形状は、龍の頭を模った龍頭といわれる釣り手があり、下部には蓮華状の二個の突座があって、吊るした撞木(しゅもく)でここを叩きます。上部に乳房状の小突起が巡らされています。
 
日本にはじめて鐘がもたらされたのは、欽明天皇23年(562)に大将軍・大伴狭手彦(おおとものさでひこ)が高麗(朝鮮)に遠征した折、戦利品として三口の銅鋳鐘を持ち帰ったものとされています。
日本で鋳造の現存する最古の鐘は、文武天皇2年(698)に造られた京都の妙心寺のものと伝わります。
 
四方八方に鳴り響く荘厳な鐘の音は、それを聞く人々の心に温かい仏心を呼び起こします。除夜の鐘は人ばかりでなく、牛や馬や道具にまで仏心を及ぼして心休ませ、生き歳生ける者全ての歳取りをさせる風もみられます。

◇ ◇ ◇ 編集後記 ◇ ◇ ◇
今年は武漢肺炎による緊急事態宣言が明けて例年通りの年末の風景が戻ってきました。一部地域ではコロナお蔓延やインフルエンザの流行が懸念されています。外出ではマスク、お帰りになったら手洗いうがいを励行しましょう。この時期の体調不良は長引きます。
装いも新たに来年も暦を配信していきます。お付き合い下さい。
良いお年をお迎えください。
筆者敬白

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