2025.08.07
8月

令和7年(2025)8月14~15日 奈良、春日大社「中元万燈籠(ちゅうげんまんとうろう)」です。

■8月14~15日 奈良、春日大社「中元万燈籠(ちゅうげんまんとうろう)」です。■

「春日大社(かすがたいしゃ)」は、「奈良公園(ならこうえん)」内にある神社で、式内社(名神大社)、旧社格は官幣大社、古来朝廷より特別の尊崇を受けた「二十二社」のうち特に格式の高い「上七社」の一社です。全国に約1000社ある「春日神社(かすがじんじゃ)」の総本社。神山である「御蓋山(みかさやま:春日山)」の麓に、奈良時代の神護景雲2年(768)、称徳天皇(しょうとくてんのう)の勅命により「平城京の守護」として創建されました。

本殿向って右から、
第一殿:茨城県の鹿島神宮から迎えた「武甕槌命(たけみかづちのみこと)」
第二殿:千葉県の香取神宮から迎えた「経津主命(ふつぬしのみこと)」
第三殿:「天児屋根命(あめのこやねのみこと)」
第四殿:大阪府枚岡神社(ひらおかじんじゃ)から迎えた「比売神(ひめがみ)」

四神をもって「藤原氏」の氏神とされ、「春日神(かすがのかみ)」と総称されます。「春日明神」「春日権現」とも。

また、武甕槌命が「白鹿」に乗ってやってきたとされることから、「鹿」は春日明神の神使(しんし:かみのつかい)「神鹿(しんろく)」として大切にされてきました。

奈良公園にはおよそ1300頭の鹿がいます(令和7年現在)。『万葉集』にも「春日野に粟蒔けりせば鹿待ちに継ぎて行かましを社し怨む(春日野に粟を蒔いたら、粟を食べに来る鹿を待ち続けるように通い続けましょうものを。神の社があるのがうらめしいことです)」(佐伯赤麻呂)と読まれているように、昔から鹿が生息していました。奈良公園の鹿は飼育されていない野生生物で、国の天然記念物に指定されています。

奈良公園の東に位置する「春日山原始林(かすがやまげんしりん)」は、市街地に隣接する貴重な照葉樹林の原始林で、国の特別天然記念物に指定されています。1100年以上前に狩猟と伐採が禁止されて以来、春日大社の神域として守られてきました。

春日大社で行なわれる神事は、春日山原始林のなかで古代の神事さながらに執り行われるものが多く、春日山原始林と春日大社が一体となって古くからの信仰を伝えています。こうしたことから、春日山原始林も春日大社とともに「古都奈良の文化財」を構成する文化遺産として世界遺産に登録されました。

◆中元万燈籠

春日大社の「万燈籠(まんとうろう)」は、800年前(鎌倉時代)ごろから行なわれてきたといわれています。境内には、石燈籠(いしどうろう)約2000基、釣燈籠(つりどうろう)約1000基の合計3000基の「燈籠(とうろう)」があり、古くは藤原氏などが、現在は広く一般の人びとが、家内安全、商売繁盛、武運長久、先祖の冥福向上などの願いをこめて奉納してきたものです。

昔は毎晩すべての燈籠に火が入っていましたが、明治時代頃、人手と油料が途絶えて点灯が続けられなくなったことがありました。当時の史料には、「油料(あぶらりょう)」のお布施を集め、必死に伝統を守ろうとした形跡が残されています。明治から昭和にかけて再興され、現在、年に2回、2月に「節分万燈籠(せつぶんまんとうろう)」、8月に「中元万燈籠(ちゅうげんまんとうろう)」が行なわれています。

「万燈籠」の日、境内約3000気すべての燈籠に火が入れられます。燈籠には崇敬者が願いを書いた和紙が貼られ、「万燈籠」の日の参列者が浄火を入れます。石燈籠が整然と並ぶ「二ノ鳥居」から神苑付近、そして釣燈籠が並ぶ朱塗の「回廊」などは王朝絵巻を見るようで、しばし幽玄の世界へ導かれます。

春日大社
◇奈良県奈良市春日野町160
◇バス「春日大社本殿」下車、または「春日大社表参道」徒歩10分
◇公式サイト:https://www.kasugataisha.or.jp

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

春日大社のHPに

室町時代や江戸時代には、奈良町の住人が春日参道で、雨乞い祈祷としての万燈籠を行なっていました。記録には、興福寺大乗院の尋尊(じんそん)僧正の日記で、今から500年余り前の文明7年(1475)7月28日、「祈雨(きう)のため、南都の郷民、春日社頭から興福寺南円堂まで、燈籠を懸く」とあり、当時は木の柱に横木をつけ、それに行燈か提灯の様な手作りの仮設の燈籠を懸け行なっていたと考えられます。

とあります。もともとは、火を灯し雨よ降れと祈る、人びとの切実な願いだったのでしょう。「浄火」を捧げて神さまに祈る人間の営みは途絶えることなく続きます。
季節の変わり目です。時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白

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