■8月11日「山の日」です。■
平成22年(2010)山岳関係の団体が「山の日」制定協議会を結成して、「山の日」を制定して祝日にすることを目標に機運を盛り上げていました。その結果、平成25年(2013)4月、山岳関係者や自然保護団体などからの意見を受け、「山の日制定議員連盟」の発議で平成26年(2014)に制定された、日本の国民の祝日のひとつです。
国民の祝日に関する法律では、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨としていますが、山に関する特別な出来事などの明確な由来があるわけではありません。実はこの山の日、主に『日本山岳会』の頑張りと啓蒙活動でできた祝日なのです。
当初は盆休みと連続させやすいことから8月12日を祝日にとの方向でした。しかし、8月12日は日本航空123便墜落事故の日だったため、「お祝いするのは違和感を覚える」との懸念から、最終的に8月11日を「山の日」とすることを決定した経緯があります。
平成28年(2016)に施行され、第1回「山の日」にあわせたイベントも各地で行われました。「山の日」の記念切手も発売され、長野県松本市の上高地では、第1回「山の日」記念全国大会が開かれました。その際、ご臨席した皇太子殿下(現天皇陛下)は次のように述べられました。
2016年8月11日 第1回「山の日」記念全国大会 in 上高地
皇太子殿下(現天皇陛下)のおことば
第1回「山の日」記念全国大会記念式典に皆さんと共に出席できることを大変うれしく思います。
「山の日」は、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨に、平成26年に国民の祝日として制定されました。制定に尽力された多くの皆さんに心から敬意を表します。
また、記念すべき第1回の全国大会が、山岳観光地として名高いここ長野県松本市上高地で開催されることは「山の日」の制定趣旨を表現するにふさわしく、大変意義深いことと思います。
私も昭和42年に両親と共にこの地を訪れ、穂高連峰の雄大な景色に魅了され、そこから流れ出る梓川の清流に心を癒されたことが懐かしく思い出されます。
わが国は国土の約7割を山地が占めており、私たち日本人は、古くから山に畏敬の念を抱き、森林の恵みに感謝し、自然と共に生きてきました。
また、長野県では登山学習という素晴らしい取り組みが脈々と受け継がれており、この大会のロゴマークも地元の子どもたちが制作に関わったと聞きました。
次代を担う子どもたちに山の素晴らしさや厳しさ、山の恩恵への感謝の気持ちなどをしっかり引き継いでいくことが大切であり、「山の日」が、明るく豊かな「山の未来」を創造する第一歩となることを願っています。
私自身、山に登り始めて50年ほどになりますが、山に登るたびに新しい発見や新たに学ぶことがあり、山の魅力は尽きることがありません。
このように、「山の日」が誕生したことを機に、ここ上高地から山の恩恵を広く国内外に発信し、多くの人が山に親しみ、山の恩恵に感謝するとともに、美しく豊かな自然を守り、次の世代に引き継いでいくことを心より願い、挨拶といたします。
◇全国山の日協議会:https://www.yamanohi.net
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
近年は中高年の登山がブームに、また、「山ガール」と呼ばれる若い女性の登山者や、日常から離れ、ひとり自然のなかでリラックスして過ごす「ソロキャンプ」を楽しむひとも増えているそうです。
そうしたブームの一方で、山の遭難事故は増加し、毎年3000人以上の遭難者が出ています。
全国山の日協議会は、「自分の体力にあった無理のない登山計画を立て事故のないようにしてほしいと呼びかけています。「山の日」が登山に親しむきっかけになると同時に、遭難を少しでも減らすきっかけにもなってほしいものです。
筆者敬白