■8月1日 身代り不動尊「土用大護摩供」です。■
「不動尊(ふどうそん)」とは「不動明王(ふどうみょうおう)」の尊称で、密教の「五大明王(五大尊)」〔※〕のひとつで、その主尊です。「不動金剛明王」「無動尊」「阿遮羅囊他(あしゃらのうた)」などとも。一般には「お不動さん」の名で広く親しまれています。
いっさいの悪魔・煩悩を降伏させるための大日如来(だいにちにょらい)の化身とされ、憤怒の相をとっていて、厳めしい形相をしています。これは貪・瞋・痴(とん・じん・ち)の三毒〔※〕や悪魔を、相手の立場や考えを容認せず、その誤りを徹底的に破折して正法に導く厳しい方法(折伏:しゃくぶく)での衆生を漏らさず導くためです。
青黒色の全身に火焰を背負っています。背の大火炎は大智慧を以って悪業煩悩を焼き尽くし、大磐石は確乎不動にして動揺せざる姿を表しています。右手に持つ利剣(りけん)で智慧をあらわし折伏を行ない、左手の羂索(けんさく)で煩悩を縛って封じ、正しく導きます。一眼で天を睨むは向上心と理想を、一眼を以って地を睨むは向下心で現実に即すべきことを意味しています。
※五大明王(五大尊):密教の明王のうち、不動・降三世(ごうざんぜ)・軍荼利(ぐんだり)・大威徳(だいいとく)・金剛夜叉(こんごうやしゃ)の五明王。「五力明王」「五大尊」とも。
※貧・瞋・痴(とんじんち):仏教用語。誰にでもある煩悩のうち欲望の根源になる煩悩。心が惑わされた結果、苦しみがおきる。特に108ある煩悩の中心である3つ。これによる害を「三毒(さんどく)」などとも呼ばれる。
「貧(とん)」貧欲であること、むさぼること。我欲や利欲を求めてやまないこと。
「瞋(しん)」怒りのこと。利己の我侭(わがまま)や憎しみや恨みの怒りのことです。
「痴(ち)」無知のこと。単に知識が無いことではなく、仏法の教えを知らないでさまよっている状態のこと。貪・瞋・痴のなかでも最も根本の煩悩であるとされ、「無明(むみょう)」とも称される。
元禄の頃、悪疫が流行した際、諸国を行脚していた祐天上人(ゆうてんしょうにん)が不動尊を尊信するよう教え、土地の人びとがこれを信仰したところ悪疫が去ったと伝わります。霊験あらたかな本尊に感謝して堂宇を建て安置したことが身代り不動尊の始まりとされています。
「身代わり不動尊」は、神奈川県川崎市の別格本山大明王院と熱海、横浜、東京の3つの別院があります。熱海別院では、とくに海上安全や水難除けといった海の安全祈願を行います。
身代り不動尊では8月1日に「土用大護摩供」を行います。土用は季節の変わり目で体調を崩しがちです。土用大護摩供は暑い夏を健康的に過ごせるよう本山、各別院で行なわれ、胃病封・がん封・六三除け・病難消除・習慣病除・火難除けなどを祈願します。
◇「身代り不動尊 大明王院」総合サイト:https://migawarifudouson.or.jp
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
暑い最中の護摩供です。お不動さまの熱い炎で災厄・煩悩を護摩木とともに焼き払ってもらい、つつがなく夏を過ごせるよう祈りましょう。
筆者敬白