■4月12日 今宮神社「やすらい祭」です。■

京都市北区「紫野(むらさきの)」に鎮座する「今宮神社(いまみやじんじゃ)」は、正暦5年(994)創建と伝わります。平安京で流行した疫病を鎮めるため、疫神を祀り「御霊会(ごりょうえ)」を行ったのが始まりと伝わります。「紫野社」「紫野明神」とも。

「一条天皇(いちじょうてんのう)」の時代、平安京で疫病が流行り、これを鎮めるため「船岡山(ふなおかやま)」(京都市北区の丘、標高112m)で「御霊会」が行なわれました。「御霊会」は、疫神や死者の「怨霊(おんりょう:御霊(ごりょう))」を鎮める法会や祭礼などの祭事です。
しかし再度蔓延したため、紫野に神殿を造り「疫神(やくしん、やくじん、えきしん)」を勧請して御霊会を行なったのが今宮神社の起こりと伝わります。その後、「悪疫(あくえき:悪性の流行病)」のあるごとに官民分かたず崇信され、紫野一帯の「産土神」とも成って人びとの篤い信仰を集めました。

室町幕府以降も、将軍家若君の守護神とされ、特別の奉賽が絶えませんでした。江戸幕府5代将軍「徳川綱吉(とくがわつなよし)」の生母「桂昌院(けいしょういん)」の崇敬は、出生地「西陣(にしじん)」への愛郷心とともにとりわけ厚く、社殿の造営などに努めたといいます。
主祭神に
「大己貴命(おおなむちのみこと)」
「事代主命(ことしろぬしのみこと)」
「奇稲田姫命(くしいなだひめのみこと)」
の3柱の神を祀ります。摂社の「疫神社(えきじんじゃ)」には、「素盞嗚尊(すさのおのみこと)」を祀ります。
明治29年(1896)に本社殿を焼失しましたが、6年後の明治35年(1902)に本社、41年(1908)に疫神社、大正15年(1926)に「楼門(ろうもん)」が建てられました。神社には元禄期以降の近世建築から明治大正期の整備による近代和風建築の社殿群が数多残り、境内の景観がそのまま歴史的風致を形作っています。
神社境内には、「阿呆賢(あほけん)さん」と呼ばれる「石」があります。手のひらで軽く3度叩いて持ち上げると重くなり、次に願いを込めて3度撫でて持ち上げ、軽くなっていれば願いが叶うといわれます。
◆やすらい祭

「やすらい祭(やすらいまつり)」は、摂社「疫神社」の祭礼で、いにしえの御霊会を現代に伝える行事として毎年4月の第2日曜日に行なわれます。
「やすらい」は漢字で書くと「安良居」「夜須礼」。かつては「今宮祭(いまみやまつり)」と呼ばれていましたが、現在は一般に「やすらい祭」、あるいは「やすらい花(やすらいばな)」と呼ばれています。
国の重要無形民俗文化財。「太秦の牛祭(うずまさのうしまつり)」「鞍馬の火祭」とともに「京の三奇祭」「京都三大奇祭」のひとつに数えられ、令和4年(2022)には「風流踊(ふりゅうおどり)」のひとつとして、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。
やすらい祭は、花とともに飛び散ろうとする疫神を鎮めるために行なわれた「鎮花祭(ちんかさい)」と、「御霊信仰(ごりょうしんこう)」(疫病をもたらすとされた御霊を恐れ,これを祀り祟りをまぬかれようとする信仰)に基づく「御霊会」とが結びついて生まれた花祭りです。京都の紫野や上賀茂など洛北の4地区(今宮神社、川上大神宮、玄武神社、上賀茂神社)に伝わります。

桜の季節の終わる頃、花を飾った「風流傘(ふりゅうがさ)」〔※〕(花傘)を掲げ、鉾持ち(ほこもち)・小鬼・大鬼・花傘持ち・太刀持ちなどの一行が、「やすらい花や」の歌に合わせて踊りながら市内を練り歩き、社参します。「花傘のなかに入ると厄を逃れる」との言い伝えから、皆競って風流傘のなかに入るのが習わしとなっています。沿道の人びとのにぎわいは、平安時代後期の『梁塵秘抄口伝集(りょうじんひしょうくでんしゅう)』や鎌倉時代の『百錬鈔(ひゃくれんしょう)』にも記されています。

神社の境内では、大鬼が大きな輪になって「やすらい踊」を奉納します。桜の花を背景に神前へ向かい、激しく飛び跳ねるように、そしてまた緩やかに「やすらい花や」の声に合わせて踊ります。
門前に並ぶ和菓子屋では、名物「あぶり餅」が売られます。あぶり餅とは、きな粉をまぶした小さなお餅を竹串に刺して炭火であぶったあと、白味噌の甘だれをかけた餅菓子です。疫病が蔓延した頃には、あぶり餅を人びとに振舞ったとも。あぶり餅に使われる竹串には、今宮神社に奉納された斎串(いぐし)が用いられ、病気平癒や厄除けの御利益があると伝えられています。
※風流傘(ふりゅうがさ):「傘鉾(かさぼこ)」の一種。長柄の唐傘を、趣向のある意匠で飾りたてたもの。祭礼の行列などに持ち歩くなど、一種の「神座(しんざ)」(神霊を招請して安置する神聖な場所。神霊の降ってくる定まった場所。神のいる席)として用いられる。「風流(ふりゅう)」とは、華やかな衣装や仮装を身に付けて、囃し物の伴奏で群舞した、中世の民間芸能。また、その囃し物や趣向をこらした山車の行列、それを取り巻いて踊ること(風流踊)をもいう。
今宮神社
◇京都府京都市北区紫野今宮町21
◇公式サイト:http://www.imamiyajinja.org
◆今宮神社(京都府神社庁):http://www.kyoto-jinjacho.or.jp/shrine/03/019/index.html
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
今宮神社は古来から疫病や息災除けを祈願し、特にやすらい祭は健康祈願の祭礼で、京都三大奇祭です。
お出かけの際には風邪などお召しにならないよう
お体ご自愛専一の程
筆者敬白







