◆二十四節気◆令和8年(2026)3月5日「啓蟄(けいちつ)」です。◆

令和8年(2026)3月5日22時59分「啓蟄」です。旧暦2月、卯(う)の月の正節で、新暦では3月5日か6日頃。天文学的には、太陽が黄経345度の点を通過するときをいいます。

「柳(やなぎ)」の細く垂れる枝には若芽が芽吹き、日脚(ひあし)も目に見えて長くなって、陽光の明るさとあたたかさのなかに春を強く感じるようになります。「猫柳(ねこやなぎ)」は、ふわふわと柔らかい花穂をつけます。
「暦便覧」には「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出ればなり」と記されています。「蟄(ちつ、ちゅう)」は、土のなかに虫などがかくれているの意。冬のあいだ、土中で冬籠もりをしていた虫たちが穴を「啓いて(ひらいて)」地上へ這い出してきます。中国では「驚蟄」と書き、日本でもこの字が使われることがあります。
◆春雷――虫出しの雷◆
春に鳴る雷を「春雷(しゅんらい)」といいます。人びとは「冬籠もりの虫が雷の音に驚いて這い出してくるのだろう」と考え、立春後にはじめて鳴った雷を「虫出しの雷」と呼びました。
あえかなる薔薇撰りをれば春の雷 ―― 石田波郷
西鶴に、ちょうどこの時期のころの話があって、
春の雨、玉にも抜ける柳原(やなぎはら)のあたりより参りけるのよし、十五日の夜半に、外門あらけなく叩くにぞ…… 『好色五人女』より「虫出しの神鳴(かみなり)も褌かきたる君様」
(春の雨が柳の枝に玉を貫いたように見えるころおい、「柳原のあたりから参りました」といって、一月十五日の夜半に、外門を乱暴に叩く者があった ―― 谷脇理史訳)
と始まります。柳の枝をすべり落ちる雨粒の描写が、雨音とともに早春の雨の情景を想像させます。
◆「雷」発生の仕組み◆

地表で大気が温められて発生した上昇気流は、湿度が多いと水蒸気が発生して雲になります。この水蒸気は、高い空に達すると氷結して摩擦が起こり、「静電気」が生じます。この時、雲の上層には「正(+)の電荷」、下層には「負(-)の電荷」が蓄積され、上層と下層の電位差が大きくなり、ある一定を超えると、空気の絶縁を越えて両者間で放電が起こります。
放電の際、流れていく電流の通り道にある空気は、一気に約3万度の高温になり、音速より速く膨張します。これによって周囲の空気が急激に圧縮されて衝撃波が生じ、バリバリという爆発音のような音を出します。この音が「雷」です。
◆稲妻(いなづま)◆
下層の「負の電荷」が増大すると、地上では「正の電荷」が誘起されます。この場合も電位差がある一定を超えると放電が起こります。これが「稲妻(いなづま)」です。稲が実る頃によく起こるので「稲妻」という名付けられました。電子は上から下に流れ、電流は下から上に流れます。

◆雷と神◆
古来より、「雷」は神と結びつけて考えられてきました。ギリシャ神話のゼウス、ローマ神話のユピテル、バラモン教のインドラなどは、天空の「雷神」です。日本神話では、雷を「神鳴り」といい神々の為せる業とみなしていました。各地にある「雷電神社」「雷(かみなり、いかづち)神社」は、「火雷大神(ほのいかづちのおおかみ)」や「大雷神(おおいかづちのかみ)」などを祀っています。
◆くわばらくわばら◆
雷のことを方言で「かんだち」とも言い、「神立ち」すなわち神が示し現れることを意味します。ちなみに雷除けに人々が唱える「くわばらくわばら」は、菅原道真の屋敷(京都の桑原)が落雷の被害をいちども受けなかったことに由来するという説もあります。桑の木には神聖な力を持つという言伝えもあります。「雷神」を表現した美術作品の代表に、京都建仁寺の障壁画、彫刻では京都三十三間堂や日光東照宮などが有名です。
◆◆「七十二侯」◆◆
◆初候「蟄虫啓戸」(すごもりむしとをひらく)
◇冬籠もりの虫が出て来る。
◆次候「桃始笑」(ももはじめてさく)
◇桃の花が咲き始める。
◆末候「菜虫化蝶」(なむしちょうとなる)
◇菜虫(青虫)が羽化して紋白蝶(もんしろちょう)になる。「菜虫」は、大根やかぶらなどのアブラナ科の野菜類を食べる昆虫の総称。特に紋白蝶の幼虫をいいます。

◆◆「3月の花」◆◆
「沈丁花(じんちょうげ)」 ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑低木。 学名:Daphne odora。Daphne はギリシア神話の女神ダフネにちなみ、odora は「芳香がある」の意。中国名は「瑞香(ずいこう)」。
開花時期は2~4月で、春の開花ラッシュの先触れとして知られます。花びらに見える部分はガクで、外側はピンク色、内側は白色です。両側とも白色の種もあります。中国原産。日本には室町時代にはすでに渡来していたようです。

剪定はあまり必要ありません。移植を嫌うので、挿し木で増やしたり移動させたりすることがあります。日陰気味の場所を好みます。
「沈丁花」の名は、花の香りを「沈香(じんこう)」と「丁字(ちょうじ)」にたとえたもの。沈香とは、ジンチョウゲ科の樹木からとる香木で「伽羅(きゃら)」とも呼ばれます。丁子は、漢方の生薬のひとつで、フトモモ科チョウジのつぼみを乾燥させてつくります。「丁香(ちょうこう)」「クローブ」とも呼ばれます。夏の「梔子(くちなし)」、秋の「金木犀(きんもくせい)」と並んで日本の三大芳香木に数えられ、甘く濃厚な香りを遠くまで漂わせます。
花の煎じ汁は、歯痛・口内炎などの民間薬として使われ、枝の繊維は紙の原料にもなります。
花言葉は「栄光」「不死」「不滅」「優しさ」など。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

「啓蟄」の頃、突然雷が鳴ることがあります。大気が不安定になり、変わりやすい天候は「春の訪れ」を告げるようです。世間では、受験、就職、入学、進学などであわただしく、4月の新年度を前になにかと気忙しい日が続きます。
落ち着かない時期ですが、ともあれ皆様、お体ご自愛専一の程
筆者敬白







