■11月23日 笠間稲荷「献穀献繭祭(けんこくけんけんさい)」です。■

「笠間稲荷神社(かさまいなりじんじゃ)」は、別称「胡桃下稲荷(くるみがしたいなり)」「紋三郎稲荷(もんざぶろういなり)」と呼ばれる神社本庁の別表神社です。本殿は万延元年(1860)建立の建築で、周囲の彫刻は国の重要文化財に指定され、「三頭八方睨み龍」「牡丹唐獅子」は特に有名です。

御祭神は「宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと:正一位の最高位の神)」。第36代孝徳天皇の御代、白雉2年(651)創建、1350余年の歴史を有する由緒ある神社で、日本三大稲荷のひとつです。五穀の神「宇迦之御魂命」は、生命の根源を司る「いのち」の根の神「稲荷大神(いなりおおかみ)」と古くから同一視され、農業の守護神、商業、工業、殖産興業、交通安全、厄除、火防の神として広く崇敬されています
稲荷大神にとって「キツネ」は、熊野神社の「カラス」、八幡神社の「ハト」、氏神さまの「狛犬」などと同様に神さまのお使いをする霊獣で、「神使(かみのつかい)」「眷属(けんぞく)」などと呼ばれます。

中世の時代、人間が持っている様々な欲望を、直接神さまに祈願するのは畏れ多いとして、特別に選ばれた動物を通してお願いすることが行なわれたことによるものです。キツネがお使いとして選ばれたのは、稲荷大神が農業神であることと深く結びついています。
日本人には古くから神道の原形「山の神、田の神」が信仰されていました。春になると山の神は山から里へ降り、田の神となって稲の生育を守護し、収穫が終えた秋に山へ帰って山の神となります。ちょうどキツネが「農事の始まる初午の頃から収穫の終わる秋まで」人里に姿を見せる時期と重なります。

キツネが稲荷大神のご祭神と混同されるようになったのは、平安時代以降の神仏習合によります。稲荷大神が仏教の守護神「茶枳尼天(だきにてん)」の垂迹(すいじゃく:仏菩薩が、仮に日本の神の姿をとって現れること)とされたからです。
茶枳尼天は、またの名を「白晨狐王菩薩(びゃくしんこおうぼさつ)」といい、キツネの精とされました。このことから一般民衆の間で、いつのまにか稲荷大神のご祭神とキツネが混同されてしまったと考えられています。
また、稲荷大神の別称「御饌津神(みけつかみ)」の「ミケツ」が混同されて「三狐神(みけつかみ)」と記されたこともその一因。ちなみに御饌津神は、食物をつかさどる神(「饌(せん)」は、食物、食事、供え物のこと)で、キツネとは全く関係ありません。
◆献穀献繭祭(けんこくけんけんさい)

「新嘗祭(にいなめさい)」はその年の新穀を神々に供え収獲を感謝する祭儀ですが、笠間稲荷では「献穀献繭祭(けんこくけんけんさい)」と称して、明治41年(1908)に始められ、初穂米(神様に奉納する新米)の奉納と、神社の御神饌田(ごしんせんでん)で栽培した「種籾(たねもみ)」の頒布を受けた人びとの謝恩奉納、さらに「養蚕業」の発展を目的とした献繭祭が行なわれます。
また、献穀品評会や献繭品評会も開催されます。穀類約1000点、繭類約100点が出品され、農業協同組合や農林事務所などが審査、11月23日に御神前で優秀者の表彰が行なわれ、境内では出品物が展示されます。
笠間稲荷神社(かさまいなりじんじゃ)
◇茨城県笠間市笠間1番地
◇JR水戸線「笠間駅」徒歩20分
◇北関東自動車道「友部IC」~国道355号約15分
◇公式サイト:http://www.kasama.or.jp
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

笠間市では10月中旬から11月末まで「笠間の菊まつり」が開催中です。祭りのメイン会場である笠間稲荷神社も、参道から境内まで多種多様な菊で色鮮やかに飾られます。ぜひお出掛けください。
◆「笠間の菊まつり」公式サイト:https://www.kasama-kankou.jp/page/dir000187.html







