◆二十四節気◆令和7年(2025)10月23日「霜降(そうこう)」です。◆

10月23日12時51分「霜降(そうこう)」です。旧暦9月、戌(いぬ)の月の中気で、天文学的には太陽が黄経210度の点を通過するときをいいます。

「霜降」とは、秋も末の霜が降りる頃の意で、「しもふり」ともいいます。この頃、露が冷気によって霜となり降り始め、ひっそりと秋が深みゆき、もの寂しい風趣があちらこちらに醸されます。「暦便覧」では、「霜降」の頃を「露が陰気に結ばれて霜となりて降るゆゑ也」と説いています。
冷え込む早朝には霜が生じ始め、一歩ずつ冬の到来が感じられるようになります。朝、葉に乗った露が差し込む朝日に反射して野原一面がきらきら光ることがあります。踏み入れると、草木がまとった露の雫で、雨降りでもないのに足もとが濡れてしまいます。これを「露時雨(つゆしぐれ)」といいます。

晴れた日に時おり小雨ほどの通り雨が降り、楓や蔦の葉が見事な紅葉を見せ始めます。「霜降」から「立冬」までのあいだに、地を這って吹く冷たい北風を「木枯らし」と呼びます。
◆七十二候◆
◆初候「霜始降(しもはじめてふる)」
◇田園にも霜が降り始める時節。
◆次候「霎時施(こさめときどきふる)」
◇小雨がしとしと降る。秋も終わりとなる頃で、小雨がしとしとと降ってわびしい時節。「霎(そう)」=雨の音、こさめ。「施」=広い範囲に行き渡らせること。
◆末候「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」
◇紅葉(もみじ)や蔦(つた)が黄葉む。紅葉や蔦の葉が色付く時節。
◆紅葉(こうよう)◆

草木、とくに落葉樹の葉が晩秋に赤や黄に色づくことを「紅葉(こうよう)」といいます。カエデ科の数種を特に「もみじ(紅葉)」と呼びますが、紅葉が鮮やかな木の代表種です。秋になると山々や街路樹が一斉に紅葉し見事な景観が見られる場所は、観光の名所になっています。
赤色に変わるのを「紅葉」、黄色に変わるのを「黄葉(こうよう、おうよう)」、褐色に変わるのを「褐葉(かつよう)」と区別する表現もありますが、一般的には総称して「紅葉」といいます。
秋、草や低木の葉も色づきます。それを「草紅葉(くさもみじ)」といいます。尾瀬(おぜ)の湿原や日光の小田代原(おだしろがはら)、長野県下諏訪の八島湿原(やしましつげん)などでは、樹木が紅葉するより一足早く赤やオレンジに染まった景色が広がります。
紅葉の見頃の推移を「桜前線(さくらぜんせん)」と対比して「紅葉前線(もみじぜんせん、こうようぜんせん)」と呼びます。日本では、北海道の大雪山(たいせつざん)を皮切りに、9月頃から紅葉が始まり、徐々に紅葉前線が列島を南下していきます。紅葉が始まって終わるまで約1ヶ月、見頃は紅葉が始まったあとの20〜25日程度です。北海道と東北地方が10月、関東から九州では11月から12月初め頃まで見頃です。山間部や内陸では少し早目に紅葉が終わり季節は本格的な冬に入ります。

『小倉百人一首』32番の歌は、目に映る深まる秋の景色のなかに、ふと見つけた赤い色の思いがけない正体に風情を感じます。
山川に風のかけたるしがらみは ながれもあへぬもみぢなりけり――春道列樹
山あいの谷を流れる川に風がつくり出した堰(せき)は、よく見ると、流れることもできず溜まっている紅葉であったのだなあ、といった意味合いです。「しがらみ(柵)」は、川の流れを堰き止めるため、杭を打ち渡して竹や柴を絡ませたもののこと。春道列樹(はるみちのつらき)の時代から900年ほどを経た江戸では、ときの文人「大田南畝(おおたなんぽ)」が下の句を本家取りして、
質蔵にかけし地赤の虫干は ながれもあへぬ紅葉なりけり――四方赤良

と詠みました。「四方赤良(よものあから)」は、大田南畝の別号のひとつです。質屋が蔵の前で質草を広げて風にあてている様子を描いています。もしかすると庇や屋根にも質草を並べていたのかもしれません。さまざまな物が並べられているなかに、もみじのように赤い女物の晴れ着が混じっていて、いかにも目を引くが、どうやら質流れにもならずに夏を越したもののようだ、という意味でしょう。
「地赤」は3月3日の上巳の節句「ひなまつり」に着る晴れ着です。ひなまつりで着たあと質に入れたものならば、それから夏を経て秋になるまで流れなかったものかもしれないなと想像を刺激する光景です。
「虫干し」といえば、「土用干し」といって「夏の土用」の虫干しはよく知られていますが、湿度が低い秋の晴れた日にも虫干しをします。それを「曝涼(ばくりょう)」といいます。近年では、曝涼に合わせて、寺社や博物館などで収蔵品や宝物を公開する展示会も開かれています。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
「霜降」の時期は秋から冬への「土用:火墓気」の時期です。この時期は無理に問題を解決しようとせず、受け流すことが肝要です。土用の作用で万物が腐することから、問題が混沌としてしまいます。無理をせず受け流す余裕を身につけましょう。
令和7年は「二の酉」までの年です。酉の日の参拝、そして、日ごろから「火廻要慎(ひのようじん)」をこころがけましょう。
皆様、時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白







