2025.10.02
10月
雑節・歴注・撰日

令和7年(2025)10月9日(10月 亥の日)「亥の子(いのこ)」です。

■10月9日(10月 亥の日)「亥の子(いのこ)」です。■

「亥の子(いのこ)」は、旧暦10月(亥の月)の亥の日に行なわれる年中行事のこと。主に西日本で古くから親しまれている行事です。「亥の子の祝い」「玄猪(げんちょ)」「亥の子祭り」などとも。

「亥(い)」は、十二支の12番目、十二支獣として「猪(いのしし)」があてられます。旧暦10月の初めの「亥の日」は、猪の多産にあやかり「亥の子餅(いのこもち)」を食べて子孫繁栄と無病を祈ります。亥の月、亥の日、亥の刻(午後9~11時)に食べるところも。

ちょうど米の収穫が終わる季節にあたるため、稲刈りが無事に終了したことを「田の神」に感謝する「収穫祭(刈上げ祝い)」の行事でもあります。

亥の子の神(田の神)は、2月の亥の日に田に降りてきて稲を守り、10月(亥の月)の亥の日に帰っていくと考えられていました。中国地方などでは、2月の最初の亥の日に、冬が終わって農作業を始める春の訪れを祝う「春亥の子(はるいのこ)」という風習があります。

◆亥の子餅

古代中国では旧暦10月亥の日亥の刻に穀類を混ぜ込んだ餅を食べる風習があり、平安時代に日本に伝わりました。宮中では、餅を猪の子のかたちにし、大豆・小豆・大角豆(ささげ)・栗・柿・胡麻・糖など7種の粉を合わせてつくり、朝餉(あさがれい)に献上したという記録もあります。貴族や武士、一般の庶民のあいだでも「亥の子」の習慣は早くから行なわれていたようです。

「亥の子餅」のかたちはさまざまで、武家ではこの日、紅白の餅を配ったり、庶民は牡丹餅(ぼたもち)を食べたりしていました。新米をつかう最初の餅つき行事という意味もあったのではないかと考えられます。

◆亥の子突き

この日、子どもたちが、丸石や束ねた藁(わら)で地面をついてまわります。これを「亥の子突き(いのこづき、亥の子搗き)」といい、子どもたちは「亥の子唄(いのこうた)」をうたいながら地面を突き、行きがけの家々から餅やお菓子、お小遣いなどをもらいます。

亥の子唄の歌詞は「亥の子餠をつかん者は、鬼生め蛇(じゃ)生め、角の生えた子生め」など、地域によって様々なバリエーションがあります。餅などを貰うと「繁盛せえ、繁盛せえ」と唱え、何も貰えないと「貧乏せえ、貧乏せえ」と悪たれを言います。亥の子唄の歌詞は、現代の社会にそぐわない内容のものもあるため、社会の価値観に合わせてだんだん変化している地域もあるようです。

地面をたたくことで、土地の邪霊を鎮め、土地の精霊に力を与えて豊作を祈るおまじないだといわれています。モグラやネズミをたたいて追い出すためだというところも。地面をつく道具に工夫をすることで、子どもたちが地面をついてまわればまわるほど道路の補修になるという、お役立ち行事でもあったとか。まだ地面が舗装される前の話です。

◆十日夜(とおかんや)

おもに中部地方から関東では、「十日夜(とおかんや)」という「亥の子」に似た行事があります。子どもたちが囃しながら藁で地面をたたいたり、案山子(かかし)を田から持ち帰って庭先に立て、餅を供えたりします。

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

ちょうど二十四節気の「寒露」のころで、季節も秋本番。今年の紅葉は綺麗に色づくでしょうか。台風の通過、朝晩の寒さがこれからの季節を予感します。
読者の皆様、お体ご自愛専一の程
筆者敬白

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