◆二十四節気◆令和7年(2025)10月8日「寒露(かんろ)」です。◆
10月8日9時41分「寒露(かんろ)」です。旧暦8月後半から9月前半、戌(いぬ)の月の正節で、「秋分」から15日目にあたります。天文学的には太陽が黄経195度の点を通過する瞬間をいいます。
「寒露」とは、晩秋から初冬にかけての「露(つゆ)」で、「霜(しも)」になりそうな冷たい露のことをいいます。「暦便覧」では「陰寒の気に合つて露結び凝らんとすれば也」と説明しています。
この頃になると秋も一段と深まり、朝晩は寒気を感じ始めます。山野は晩秋の色どりが濃くなります。菊は満開になり、櫨の木(はぜのき)〔※〕の紅葉が美しい頃。「雁(がん)」や「鶫(つぐみ)」などの冬鳥が渡って来ます。
静かなり紅葉の中の松の色 ―― 越智越人
落雁の声のかさなる夜寒かな ―― 森川許六
※櫨の木(はぜのき):ウルシ科ウルシ属の植物。単に「櫨」とも。6月頃に円錐状の黄緑色の小花を咲かせます。雄株には灰色の小果が実り、これから「蝋(ろう)」が採れます。「山漆(やまうるし)」によく似ていて、触るとカブレるので注意。天正年間(1570年頃)に中国から種子で伝わり、「蝋燭の原料」として筑前で栽培され九州一円に広まりました。紅葉は、赤色がモミジより美しく鮮やかです。
「一雨一度(ひとあめいちど)」 … この時期、「秋雨前線(あきさめぜんせん)」が南下し、にわか雨がよく降ります。夏から秋、秋からから冬へと空気が入れ替わるなか、短い周期で天気が変わります。「一雨一度」は、読んで字のごとく、雨のたびに一度(=すこし)気温が下がって秋の気配が深まることの喩えです。
先人は天気とともに生活していました。雲の形を見て、「すじ雲」「いわし雲」「ひつじ雲」などと名前をつけ、天気の上り坂・下り坂を予期したりしていました。これを「観天望気(かんてんぼうき)」といいます。風や雲の動きやかたちで、これからの天気を予測することです。観天望気で天気を予想するのは、広い意味で「占い」の一種であり、俗信です。しかし、経験と知識をもとにして、予兆を読んで結果を予測するのは、大きくくくると科学的な態度だといえるのではないでしょうか。
「秋の夕焼け鎌を研げ」という諺は、秋の夕焼けの翌日は天気がいいから収穫が出来るように鎌を研いで用意しようという意味です。「寒露」の頃、五穀の収穫も最盛期に入り、農家では繁忙を極めます。
◆◆「七十二侯」◆◆
◆初候「鴻雁来(こうがんきたる)」
◇雁が飛来し始める。「鴻雁」は、秋に飛来する渡り鳥のがん。「鴻鴈」とも。「鴻」は大型のがん、「雁」は小型がんのことをいいます。「鴻雁」は大型。
◆次候「菊花開(きくのはなひらく)」
◇菊の花が咲く。
◆末候「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」
◇蟋蟀(きりぎりす)が戸の辺りで鳴く。「蟋蟀(きりぎりす、こおろぎ)」は、秋に鳴く虫の総称。『万葉集』には「こおろぎ」とあり、平安時代や中世には「きりぎりす」と呼ばれた。近世以降は「こおろぎ」で、今のコオロギを指す。
◆◆「10月の花」◆◆
「家菊(いえぎく)」キク科キク属 学名「クリサンセマム Chrysanthemum」ラテン語で chrysos(黄金)+ anthemon(花)が語源。開花時期は10月20日~12月20日頃。平安時代に中国から渡来。その後、改良が重ねられ多くの品種が生まれました。春の梅、桜と並んで、秋の代表的な花とされます。
「きく」は「菊」を音読みしたもので、「菊」の字は「散らばった米を1ヶ所に集める」の意で、菊の花弁を「米」に見立てています。冬に芽をとり、春に植え、夏に成長させ、秋に観賞するという菊の栽培は、稲の栽培と似ているため、菊の栽培が盛んになったのではないかという説もあります。「菊」の字は「鞠」とも書き、「究極」「最終」を意味し、一年の終わりに咲く花であることからそう名付けられたといわれています。
中国では「菊」は「不老長寿」の薬効があると信じられ、陰暦9月9日「重陽の節句」には「菊酒」を酌み交わし、長寿を願いました。これが日本に伝わり「重陽の宴」が催されるようになりました。のちに菊は「皇室の紋章」となり、「日本の国花」になりました。
花言葉は「思慮深い」「真実、元気」「いつも愉快」「私はあなたを愛する」など。
◆◆「秋の七草」◆◆
秋の「花野(はなの)」は、春や夏とはまた異なる趣きの草花が彩ります。「秋の七草」とは、ハギ、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウのこと。『万葉集』で「山上憶良(やまのうえのおくら)」が「秋の野に 咲きたる花を 指折りて かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」「萩の花 尾花葛花(おばなくずはな) なでしこの花 女郎花(をみなへし) また藤袴(ふぢばかま) 朝がほの花」と詠んだ歌が広まって親しまれるようになったといわれています。憶良が「朝顔」と詠んだのは「キキョウ」の花だとされています。
◆参考ページ「秋の七草」:https://kisetsunootayori.com/october/20241008_aki7kusa/
「春の七草」は、1月7日の「七種菜羹(しちしゅさいこう)」(「七草がゆ、七種がゆ」を食べて無病を祈る)という「食」に関する風習ですが、「秋の七草」は「花を楽しむ」風流な行事です。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
秋は台風来襲の季節。台風が秋雨前線を刺激して局地的に大雨を降らすことがあります。天気予報の精度が上がった今でも、被害そのものを減らすことは容易ではありません。通り過ぎるのをじっと待って台風一過、秋の青く高い空を見上げたいものです。
朝夕、冷え込みがきつくなってきました。
読者の皆様、時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白