■7月31日~8月5日 箱根の夏祭り「芦ノ湖夏まつり」です。■
「芦ノ湖(あしのこ)」は、神奈川県足柄下郡箱根町(はこねまち)にある「箱根山(はこねやま」の「カルデラ湖」です。今からおよそ3000年前、箱根山の最高峰「神山(かみやま)」が水蒸気爆発と火砕流を起こした際、山の一部が大崩壊を起こす「山体崩壊(さんたいほうかい)」が発生しました。その時、カルデラ内の川が堰き止められて生まれた湖が「芦ノ湖」です。
古代から箱根山は「山岳信仰(さんがくしんこう)」の聖域で、特に神山は「神体山(しんたいさん)」として祀られていました。その神山を遥拝できる駒ヶ岳の山頂を「磐境(いわくら、岩座)」として祭祀が行なわれていたと伝わります。
関東総鎮守箱根大権現と尊崇される「箱根神社(はこねじんじゃ)」は、芦ノ湖の東岸、「駒ヶ岳(こまがたけ)」の南麓に鎮座し、交通安全・心願成就・開運厄除に御神徳の高い「運開きの神様」として信仰されています。孝謙天皇の時代、「万巻(まんがん)上人」が箱根権現を感得し、現社地に里宮を創建したと伝わります。
御祭神は「瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)」「木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)」「彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)」。三神を総称して「箱根大神(はこねのおおかみ)」といいます。
かつては「箱根権現(はこねごんげん)」(箱根山の山岳信仰と修験道が融合した神仏習合の神)とも称されました。神仏分離・廃仏毀釈が行なわれる以前、箱根権現、伊豆山権現(いずさんごんげん:伊豆山神社)、三嶋大明神(みしまだいみょうじん:三嶋大社)の3社は「箱根三所権現(はこねさんしょごんげん)」とも呼ばれていました。
万巻上人は、芦ノ湖に住む9つの頭を持つ毒龍「九頭竜(くずりゅう)」を法力によって改心させ、調伏された九頭龍は懺悔して、宝珠(ほうじゅ)・錫杖(しゃくじょう)・水瓶を持って上人に帰依したという「九頭龍伝承」が語り継がれています。箱根大神の「眷属(けんぞく)」となった九頭竜は、土地の守り神「九頭竜大神」として「九頭龍神社(くずりゅうじんじゃ)」に祀られました。九頭龍神社の本宮は箱根神社の境外社、新宮は境内社となっています。
毎年7月31日には、九頭龍大神を祀る龍神祭「湖水祭(こすいさい)」を皮切りに、8月1日から5日まで、箱根神社の最大神事「例祭」「御神幸祭」「奉幣祭」「龍神祭」「鳥居焼祭」など様々な祭事が一体の祭礼として斎行されます。現在、この期間に、「芦ノ湖夏まつりウィーク」として、数々の祭典行事が芦ノ湖全体で行なわれます。
九頭龍神社の「湖水祭」は、箱根神社の例祭の「宵宮(よいみや)」として行なわれます。神前に「御供(ごく)」(三升三合三勺の赤飯)と神酒を献じて祝詞を奏し、神楽を舞い、祈願をこめたのち、御供を唐櫃に納めて捧持し、行列を整えて湖畔へと向かいます。岸辺で小舟にのりかえ、御供船(ごくせん)、楽船(がくせん)、御伴船(おともせん)の順で芦ノ湖に漕ぎ出し「湖上の儀(こじょうのぎ)」が始まります。
箱根神社湖上の大鳥居前から先は、宮司が唯ひとり乗る御供船のみが湖心の祭場へ向かいます。宮司口伝の「湖水神事」が厳粛に斎行されると、それを祝福する大花火が打ち上げられます。
箱根神社(九頭龍神社)
◇神奈川県足柄下郡箱根町元箱根80-1
◇公式サイト:https://hakonejinja.or.jp
◆芦ノ湖夏祭りウィーク(箱根町観光協会):https://www.hakone.or.jp/8834
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
近年、「箱根神社」はパワースポットとして参詣者が増えています。土地や神社の謂れを知ってこそ、ご縁が結ばれパワーが身に付くのです。箱根神社に隣接する九頭竜神社には、数々の神話や足跡があります。参詣の際にはその歴史を知ることも大切です。更なる力が湧いてくることでしょう。
読者の皆様、まだまだ暑い日が続きます。お体ご自愛専一の程
筆者敬白