2025.04.06
4月

令和7年(2025)4月12~14日 大津、日吉大社「山王祭(さんのうさい)」です。

■4月12~14日 大津、日吉大社「山王祭(さんのうさい)」です。■

「日吉大社(ひよしたいしゃ)」は、比叡山(ひえいざん)の麓に鎮座し、およそ2100年前の崇神天皇7年に創祀された、日本全国3800余の「山王さん(日吉・日枝・山王神社)」の総本宮です。「日枝社(ひえしゃ)」「山王権現」などとも呼ばれます。

平安遷都の際、この地が都の表鬼門(おもてきもん:北東)にあたることから、都の魔除け・災難除けを祈る社でした。また伝教大師(でんぎょうだいし:最澄)が比叡山に「延暦寺(えんりゃくじ)」を開いてからは天台宗の護法神として崇敬を受け、今日に至ります。

西本宮(にしほんぐう)と東本宮(ひがしほんぐう)を中心に40万平方メートルの境内を持ちます。境内には約40の社があり、すべての神を総称して「日吉大神」と呼びます。国家鎮護の神「大己貴神(おおなむちのかみ)」を祀る西本宮と比叡山の山の神「大山咋神(おおやまくいのかみ)」を祀る東本宮は、それぞれ国宝に指定されています。

西本宮、東本宮の本殿は「日吉造(ひえづくり)」と呼ばれる独特な様式で、「切妻造(きりづまづくり)」の正面と両側面とに1間ずつの庇(ひさし)をつけ、背面に縋破風(すがるはふ)をつけたもので、正面から見ると「入母屋造(いりもやづくり)」のように見えますが、背面では軒を途中で切り落としたような独特なかたちの屋根を持ちます。織田信長(おだのぶなが)の比叡山の焼き討ちにあい、社殿の大半は焼失してしまいましたが、豊臣秀吉(とよとみひでよし)の援助で始まった復興は江戸時代まで続き、再建されました。

日吉大社では、「猿」が神の使いであり魔除けの象徴として祀られてきました。「魔が去る、何よりも勝る」にちなんで「まさる(神猿)」と呼ばれ、「神猿舎(まさるしゃ)」では実際に猿が飼育されています。

◆山王祭

湖国三大祭〔※〕のひとつとして知られる「山王祭(さんのうさい)」は、五穀豊穣を祈る日吉大社の例祭です。湖国に春を呼ぶ勇壮な神輿祭りで、1300年の歴史があります。

祭礼中は山王七社神輿が登場し、西本宮の大己貴神と東本宮の大山咋神の御鎮座の由来を辿りながら、勇壮な歴史絵巻が繰り広げられます。祭りの始まりは、延暦10年(791)桓武天皇(かんむてんのう)が寄進した2基の神輿でした。のちに比叡山延暦寺の僧兵が朝廷に強訴する時にかつぎ出したのがこの神輿で、「北嶺の神輿振り」〔※〕として歴史上でも有名です。

※湖国三大祭:琵琶湖の湖岸に発達した主要な町(大津、彦根、長浜、近江八幡など)で催される大規模な祭りのうち、
・長浜曳舟祭:長浜八幡宮の春の祭礼
・大津曳山祭:水運で栄えた宿場町・大津の秋祭り
・日吉山王祭:延暦寺の門前町・坂本の日吉大社の春の祭礼
を「湖国三大祭」と呼ぶ。

※北嶺の神輿振り(ほくれいのみこしぶり、みこしふり):比叡山延暦寺の僧たちの集団が、日吉社の神輿をかつぎ、仏力神威を楯にして、朝廷に対して行なった強訴(ごうそ)のこと。「北嶺」は比叡山延暦寺の別称。対して、高野山金剛峯寺は「南山(なんざん)」、奈良の興福寺は「南都(なんと)」。

12日夜、「午(うま)の神事」が執り行われます。奥宮八王子山から2基の神輿が担ぎ下ろされ、ふもとの東本宮へ鎮まります。

13日昼の「花渡り式」では、甲冑を身に着けた勇ましくも可愛らしい稚児が、従者を引き連れて日吉馬場を堂々と行進。同日夜、松明の火に照らされた神社前の産屋で、4基の神輿を持ち上げて振り落とす「宵宮(よみや)落とし」で祭りは最高潮に盛り上がります。この神輿4基は男神と女神に分かれ、激しく揺する所作は若宮誕生の産みの苦しみを表現しているのだとか。振り落とされた4基の神輿を西本宮まで競って担ぎ上げ、当夜の行事を終えます。

14日午前、西本宮にて「申(さる)の神事」が行なわれます。前日着飾られた山王七社の7基の神輿が、拝殿に所狭しと置かれた様は壮観です。そのうち東西両本宮の神輿2基に加えたほかの2基は、若人たちに担がれて参道を下り石鳥居へ、残りの3基は自動車で下り、下阪本の七本柳乗船所で合流します。

夕方、「船渡御(ふなとぎょ)」が行なわれます。琵琶湖上に出て巡幸する神輿渡御が、山王祭を特別なお祭りにします。7基の御輿は御座船に乗せられて、七本柳の浜から唐崎沖まで渡り、湖上にて「粟津御供(あわづのごく)」が献納されます。そうして神輿船は比叡辻の若宮港に上陸し、日吉大社に帰って大祭を終えます。

最終日15日、祭りを終えたことを神に報告する「酉(とり)の神事」が営まれます。

日吉大社
◇滋賀県大津市坂本5-1-1
◇京阪石山坂本線「坂本比叡山口駅」徒歩10分
◇JR湖西線「比叡山坂本駅」徒歩20分
◇公式サイト:https://hiyoshitaisha.jp

◆◆◆◆編修後記◆◆◆◆

日吉大社の山王祭は、神輿を激しく振り動かす勇ましさに圧倒され、そして、琵琶湖上で営まれる歴史絵巻さながらの神事に胸を打たれる、とても変化に富んだお祭りです。
4月に入り暖かくなってきました。なかには朝晩冷える日もあります。油断からお風邪などお召しにならないようにお体ご自愛専一の程
筆者敬白

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