■2月2日「節分(せつぶん)」「豆まき」です。■
「節分(せつぶん・せちぶん)」は、もともと「四季の分かれ目」の意味です。立春・立夏・立秋・立冬の前日を指していましたが、「立春」が年の初めと考えられることから、とくに立春の前の「春の節分」を「節分」ということが多いです。
◆立春大吉(りっしゅんだいきち)
立春を新年というのは「立春正月」すなわち「一陽来復して春になる」という考えからきています。翌日から年の始めであることと、気候(季節)が冬から春になるということで、立春の前日である節分は大晦日にあたり、邪気を祓い幸を願う意味を込めて、豆まきなど行事がおこなわれてきました。
◆豆まき
古くは、「追儺(ついな)」「鬼遣(おにやらい)」といい、悪鬼(あっき)、疫癘(えきれい:疫病)を追い払う年中行事のひとつでした。平安時代になると、陰陽師によって大晦日に盛大に行われ、その後、諸国の社寺でも行われるようになり、これが次第に庶民に伝わっていきました。
「豆まき」をして鬼を追い出す風習は、中国「明代」に始まり、日本へは室町時代に伝わりました。年男(としおとこ)が「福は内、鬼は外」と言って、煎った豆を居間や庭に撒いたあと、自分の年の分だけ豆を拾って食します。これは数え年の「年取り行事」の名残です。年男とは、その年の「干支(えと)」を持つ生まれの人のことをいいます。
豆まきの日の夜、家の入り口に「鰯(いわし)の頭を刺した柊(ひいらぎ)の枝」を差しておく風習もあります。鬼が柊の葉に刺さって痛がり、鰯の悪臭に驚いて逃げていくと考えられています。また、大蒜(にんにく)や葱、毛髪などを刺しておくところもありますが、いずれも邪気が家に入らないようにする習慣です。
◆艮(うしとら)方位「鬼門」
冥府の神として信仰された「秦山府君(たいざんふくん)」が住むと言われていた山が北東方位にあったことが、北東が「鬼門」といわれる由縁です。鬼門の方位は「艮(ごん・うしとら)」、十二支で「丑(うし)」と「寅(とら)」にあたります。ちなみに、昔ばなしの「桃太郎」に出てくる鬼ヶ島の鬼の姿は「頭にはウシの角、トラのパンツ」です。旧暦の一年では「丑は12月」「寅は1月」を指し、この節目に「鬼門」があります。鬼門は鬼が出入りする方角で、この邪気を祓うことにより、春が無事に迎えられると考えられていました。
鬼の象徴「金棒(かなぼう)」は、五行説では「金」の気です。この「金」の作用を尅する(悪い力を打ち消す)のは「火」の力です。そこで「火尅金」の作用になるのです。大豆は、とても硬いので「金」にあてはめます。この大豆を鬼に見立て、これを「火」で煎ると同時に、撒いて食べてしまうことで、鬼を退治したということにしました。
◆最近流行の「恵方巻(えほうまき)」
恵方に向かって「巻き寿司」を食べる風習は、「福を巻き込む」からきています。また、丸ごと食べるのは「縁を切らないよう包丁を入れない」ということです。
◆令和7年(皇紀2685、西暦2025)の「恵方」は……
本年は「申(さる)」と「酉(とり)」のあいだの「庚方(かのえのかた)が「歳徳(としとく)」にあたり、「恵方(えほう、あきのかた)」となります。西南西のやや西寄りの方向で、方位角は255度です。
「歳徳神(としとくじん)」は、陰陽道〔※〕での方位を司る方位神、その年の福徳を司る神です。「年神(歳神)」「正月さま」とも呼ばれ、江戸時代以前から親しまれています。
「恵方(えほう)」は、陰陽道に基づく方角、「吉方」とも書き、「明方(あきのかた、あきほう)」ともいいます。「十干(じっかん)」〔※〕によってその年の恵方が決まります。
※陰陽道(おんみょうどう、いんようどう):日本独自で発達した天文道・暦道を用いた呪術や占術の技術体系、起源は「陰陽思想」「陰陽五行論」という2つの古代中国思想で、陰陽寮(7~11世紀、律令制度下で中務省に属する機関。占い・天文・時・暦の編纂を担当)で教えられていた天文道、暦道などのひとつ。これら道の呼称は大学寮(式部省/現在の人事院に相当、直轄下の官僚育成機関)でも伝えられた。
※十干(じっかん):木・火・土・金(ごん)・水の五行(五行)を兄(え)・弟(と)に分けたもの。年・日を現す。甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戊(つちのえ)・己(つちのと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)。「十二支」〔※〕と組み合わせて使う。
※十二支(じゅうにし):十二支(じゅうにし)とは、子(ネズミ)・丑(牛)・寅(トラ)・卯(うさぎ)・竜(龍)・未(蛇)・午(馬)・羊(ヒツジ)・申(サル)・酉(にわとり)・戌(犬)・猪(いのしし)の12種の動物を現す漢字のこと。「十干(じっかん)」と組み合わせることで、60を1周期とする「干支(えと)」〔※〕を形成し、方角や時間、暦に用いられる。また、陰陽五行説と組み合わせることで卦(け)にも応用されるようになった。
※干支(えと):十干(じっかん)十二支(じゅうにし)の組み合わせで、60通りある≒還暦(干支が一回りしたから元に戻る:還)
◆節分の花「セツブンソウ」
「セツブンソウ(節分草、Eranthis pinnatifida)」は、早春、ほかの植物に先駆けて節分のころ花をひらくことから、この和名が付けられた。属の学名もギリシア語の ear(春)と anthos(花)に由来する。キンポウゲ科、球根性の多年草。関東地域以西の半陰地に自生し、10cm程の茎の頂に花をつける。白い花びらに見えるのは、実際には5弁の萼片(がくへん)で、本当の花弁は小さく退化し、黄色の蜜槽となっている。初春の季語。
咲くだけのひかり集めて節分草 ーー 高橋悦男
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
関西の一部の地域での「習慣」だった恵方に向って巻きずしを食べる習わしが広まったのは、コンビニのマーケティング戦略からです。「恵方巻き」を食べる習慣がなかった地域でも、近年はすっかり根付いてきたようです。余談ですが、発祥のわからない迷信は、えてしてこのような形で普及するのでしょう。ちなみにクリスマスにクリスマスケーキを食べるのとハロウィンで大騒ぎするのは日本独特の習慣です。
暦の上では明日の「立春」から春です。旧暦を採用しているアジアの一部では立春が正月というところもあります。日本では、節分の日の前後に最低気温を記録することが多いそうです。
読者の皆様、お体ご自愛専一の程
筆者敬白