■10月9~11日「金刀比羅宮(ことひらぐう)例大祭」です。■
香川県琴平町の象頭山(ぞうずさん)中腹に鎮まる「金刀比羅宮(ことひらぐう)」は「讃岐の金毘羅さん(さぬきのこんぴらさん)」と呼ばれ親しまれています。
神仏分離・廃仏毀釈が実施される前は、真言宗の「象頭山松尾寺金光院」でした。神仏習合で「象頭山金毘羅大権現(ぞうずさんこんぴらだいごんげん)」と呼ばれるようになりましたが、明治元年の神仏混淆の廃止で、もとの神社にかえり、同年7月に宮号を仰せられ「金刀比羅宮(ことひらぐう)」と改称し現在に至っています。
現在は、神社本庁包括に属する別表神社(べっぴょうじんじゃ)で、宗教法人「金刀比羅本教」の総本部であり、全国に約600ある金刀比羅神社、琴平神社、金比羅神社の総本宮となっています。
現在の御祭神は「大物主神(おおものぬしのかみ)」、相殿に「崇徳天皇」。『日本書紀』では、大物主命は大国主神(おおくにぬしのかみ)の和魂(にきみたま=神の優しく平和的な側面)で、農業、殖産、漁業航海、医薬、技芸などの神徳を持つ神様として全国から広く信仰を集めています。
例大祭は、毎年10月9~11日の3日間にわたって行なわれる金刀比羅宮でいちばん大きな祭事です。夜間に執り行われる「御神幸(おみゆき)」は、少年少女の「お頭人さん(とうにん)」がその列に加わることから「おとうにんさま」とも呼ばれます。
金刀比羅宮の例大祭の時期に合わせて、琴平町では様々な奉祝イベントが催されます。参道から本宮、三穂津姫社を往復する「こんぴら石段マラソン」などが開催されて門前町は賑やかになります。
◇代参◇
江戸時代、庶民の旅行は禁止されていましたが、神仏への参拝は許されていました。庶民にとって「お伊勢参り」は一生にいちどの夢でした。並んで、讃岐の金毘羅大権現(今の金刀比羅宮)と、京都六条の東西本願寺への参拝の旅も、人生の一大イベント!
当時の参拝の旅は大変なことです。旅慣れた人が代理で参拝に行くこともあり、これを「代参」と言いました。旅を途中で諦めなければならない人が、道中で知り合った旅人に、旅費と初穂料(お賽銭)を託して代参してもらうこともありました。
◇こんぴら狗◇
また、「金毘羅参り」と記した袋を首にかけた犬が、飼い主の代参をすることもあったそうです。袋には、飼い主を記した木札、初穂料、道中の食費などが入っており、犬は、旅人から旅人へと連れられ、街道筋の人々に世話をされ、目的地に辿り着きました。「こんぴら狗」と呼ばれます。
金毘羅大権現への代参で有名なのが「森石松」。清水次郎長の代わりに参拝し、預かった刀を奉納したと伝わります。
◆参詣者秘談……参道の石段は、奥社まで1368段もあります。資生堂パーラー「神椿」のレストランを利用すれば、駅からタクシーを利用して500段ぐらいまで上へ行けますよ。(秘話)
金刀比羅宮(ことひらぐう)
◇香川県仲多度郡琴平町892-1
◇JR土讃本線「琴平駅」徒歩20分
◇琴平電鉄「琴電琴平駅」徒歩15~20分
◇「高松空港」車50分 → JR琴平駅
◇公式サイト:https://www.konpira.or.jp
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
「讃岐のこんぴらさん」参詣のために四国入りした人たちが訪れた料亭の酒席でうたわれたのがこの「金比羅船々」です。
金毘羅船々 追風(おいて)に帆かけて シュラシュシュシュ
まわれば四国は讃州(さんしゅう)那珂の郡(なかのごおり)
象頭山(ぞうずさん)金毘羅大権現(だいごんげん)
一度まわれば……
いちど聞くと耳に残る節回し。こんな時世だからこそ「シュラシュシュシュ」と乗り切りたいものです。
筆者敬白