■8月31日「二百十日(にひゃくとおか)」です。■
「二百十日(にひゃくとおか)」は雑節のひとつで、立春から数えて210日目のこと。新暦で8月末から9月初旬にあたります。
この時期は稲の開花の時期にあたり、台風の襲来を警戒すべき日として暦に記載されました。昔から「八朔(はっさく)」「二百二十日(にひゃくはつか)」とともに「三大厄日」として恐れられてきました。
「厄日」とは、俗にいう「荒れ日」のことで、天候の悪い日の意です。台風が襲来すれば、稲は倒れて水に浸かったり、花が吹き飛ばされてしまい米が実らなくなります。農家にとっては凶作に見舞われる厄日とされます。
「二百十日」は、徳川幕府の暦編纂係であった渋川春海(しぶかわはるみ/しゅんかい、寛永16年(1639)~正徳5年(1715))が、品川の漁師から教わって作ったものだとか。
渋川春海は釣り好きで、二百十日の日にも品川の沖に舟を出そうとしました。その時、老漁師が海上の一点を指して「今日は立春から数えて210日目に当たるが、私の50年来の経験によると、このような日は午後から海は大荒れになる。だから釣りに出るのはよした方がいい」と言ったといいます。はたしてその日は大暴風雨になったそうです。
春海はこの気象現象を長らく研究し、「貞享暦(じょうきょうれき)」を編纂したときから記載したと伝わります。
二百十日の頃、各地で風祭(かざまつり、かぜまつり)が行なわれます。富山市八尾地区で行なわれる「おわら風の盆」、京都・松尾大社(まつのおたいしゃ)の「八朔祭(はっさくまつり)」、山形県朝日町の「大谷風神祭(おおやふうじんさい)」などが有名です。風祭は、農業や漁業で風害がないことを祈る風鎮めのお祭り(風鎮祭)です。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
農業や漁業に携わるひとでなければ、風による被害を日常的に意識することはなかなかないかもしれません。各地に残る風祭は、人びとの暮らしに天候が大きく影響していたことを思わせます。
近年、気候の変動で海水温が上昇し、より発達した台風が日本列島に上陸するようになり、被害をもたらす範囲も広くなっています。天気予報をこまめに確認しながら、家の周囲の安全などを確保してください。
残暑が続いて実感できませんが、ひと雨ごとに秋の気配が近づいてきます。そろそろ長袖の秋服を用意する時分です。
季節の変わり目です。皆様、お体ご自愛専一の程
筆者敬白