■5月1日「八十八夜」です。■
「八十八夜(はちじゅうはちや)」は、立春から数えて88日目の夜の意で、日本独特の暦日です。太陽暦で5月初旬頃にあたります。明暦2年(1656)伊勢神宮刊行の「伊勢暦(いせごよみ)」に初めて記載されました。
「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の毒霜」「九十九夜の泣き霜」などという言い回しがあるように、遅霜が降りる時期です。ほかには「八十八夜の忘れ霜」「五月寒(さつきさむ)」とも言い、晩春、急に気温が下がって霜が降り農作物や果樹に思いがけぬ被害を与えることを警戒しました。
霜なくて曇る八十八夜かな――正岡子規
鶯も元気を直せ忘れ霜――小林一茶
青梅の屋根打つ音や五月寒――永井荷風
お茶の葉は、いちど霜にあたると駄目になってしまうので、霜を防ぐために藁(わら)をひきます。種蒔き、茶摘、養蚕などで忙しい農家にとって、せっかくの新芽が霜にやられてしまう「遅霜」が最も怖く、作物に与える害は大きいので、これに注意するよう暦に記載されるようになりました。
また、農家で「八十八夜の針たけ」とは、この頃に稲の苗がちょうど縫い針の丈くらいの大きさになることからです。
お茶の歴史は1200年。初夏に見られる茶摘みの様子を歌った童謡「茶摘み」(文部省唱歌)にあるように、茶摘みが盛んになります。
茶の産地、京都府宇治市や静岡県掛川市東山などでは、昔ながら茶摘みかすり姿の女性たちが、茶畑で茶摘みの実演を行います。一番茶は二番茶以降のお茶よりも、うまみのもとであるテアニンなどの成分を豊富に含んでいます。
八十八夜に摘まれた茶の葉は、古来より不老長寿の縁起物の新茶とされています。
「茶摘み」(文部省唱歌)
一.
夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは茶摘じゃないか
あかねだすきに菅の笠
二.
日和(ひより)つづきの今日このごろを
心のどかに摘みつつ歌ふ
摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ
摘まにゃ日本(にほん)の茶にならぬ
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
5月初旬の八十八夜は新茶の時期です。
今年の新茶を煎じてのむと寿命が延びるとの言い伝えも。ぜひお試しください。
暖かい日が続いて、過ごしやすい季節です。日没後は急に冷え込みます。
読者の皆様、お体ご自愛専一の程
筆者敬白