■3月12日 東大寺二月堂「お水取り(おみずとり)」です。■
「二月堂お水取り」は、3月1日から14日間にわたり行なわれる「修二会(しゅにえ)」の中の行事のひとつです。
「東大寺二月堂(とうだいじ にがつどう)」の「修二会(しゅにえ)」は、天平勝宝4年(752)東大寺開山の良弁僧正(ろうべんそうじょう)の高弟・実忠和尚(じっちゅうおしょう)が笠置山に参籠して、夢の中で十一面観音悔過(けか)の行法を拝み、これを人間界に移して行おうとしたのが始まりと伝わります。
1日から14日までの夜、梵鐘を合図に大きな籠松明(かごたいまつ)が練行衆(れんぎょうしゅう)によって、二月堂の廻廊で振り回されます。これを「お松明(おたいまつ)」といいます。人びとは争ってこの松明から出る火の粉を浴び、厄除けの呪いとします。
◆お水取り(おみずとり)◆
「お水取り」とは、二月堂前にある井戸「若狭井(わかさい)」〔※〕から水を汲み、十一面観音に捧げる「水取」の儀式のことです。12日の深夜から13日未明にかけて行なわれます。
12日の深夜、勤行を中断し、13日の午前1時過ぎ、暗闇の中、練行衆らが二月堂の南の石段をしずしずと下り、二月堂下にある閼伽井屋(あかいや)〔※〕の中の若狭井からお香水(こうずい)〔※〕を汲み上げて本尊にお供えします。二月堂と閼伽井屋のあいだを3往復してお香水を運びます。汲み出されたお香水は参詣者にも分け与えられます。
※若狭井(わかさい):閼伽井屋の屋内にある井戸で、若狭国(わかさのくに、福井県)の小浜(おばま)と水脈がつながっているとされます。遠敷川(おにゅうがわ)の「鵜の瀬(うのせ:遠敷川中流にある淵)」からおよそ10日間かけて湧き出すといわれています。
※閼伽井屋(あかいや):二月堂のすぐそばの小さな建物で、現在ある建物は鎌倉時代初期、13世紀前半に建立されたと考えられています。お水取りでは、閼伽井屋の屋内にある井戸「若狭井」から本尊「十一面観世音菩薩」に供える水を汲みます。閼伽井屋は神聖な空間として立ち入りは固く禁じられていて、一般の人は一切見ることができません。
※お香水(こうずい):「閼伽水(あかみず)」とも呼ばれます。『二月堂縁起絵巻(にがつどうえんぎえまき)』には、「昔、修二会の行法中、実忠和尚が「神名帳(じんみょうちょう)」に書かれた全国の1万7千余の神様の名を読み上げ、参集を求めた。神々はすぐに集まってこられたが、若狭国の遠敷明神(おにゅうみょうじん、若狭彦神社)だけが遠敷川で魚釣りをしていて遅刻された。ほかの神が咎めたところ、遠敷明神は詫びとして「ご本尊にお供えする霊水を若狭からお送りしよう」といい、二月堂下の大岩の前で祈られた。すると、大岩が動いてふたつに割れ、黒と白の鵜(う)が飛び立ち、続いて霊水が湧き出た。和尚はこれをお供えの水とされた」と記されています。
東大寺
◇奈良市雑司町406-1
◇JR・近鉄「奈良駅」から市内循環バス「東大寺大仏殿・春日大社前」下車
◇近鉄「奈良駅」から、ぐるっとバス「大仏殿前駐車場」下車
◇公式サイト:https://www.todaiji.or.jp
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
そろそろ「春分」を迎えようかというこの頃、雪が降ることがあります。季節はもう春なのに降る雪を「名残の雪(なごりのゆき)」と呼び、春の季語にもなっています。
「寒の戻り」で、お風邪などひかないよう暖かくしてお出かけください。
皆様、時節柄お体ご自愛専一の程
筆者敬白