■1月27日「小田原、最乗寺(さいじょうじ)例大祭」です。■
曹洞宗大雄山「最乗寺(さいじょうじ)」は、全国に4千余の門流を持つ寺院です。本尊に「釈迦牟尼仏(しゃかにぶつ)」〔※〕、脇侍仏として「文殊菩薩・普賢菩薩(もんじゅぼさつ・ふげんぼさつ)」〔※〕を奉安する修行道場で、600年の歴史を持つ関東の霊場として知られます。応永8年(1401)「了庵慧明(りょうあんえみょう)」〔※〕によって開山され、東国における通幻派〔※〕の拠点となりました。
了庵慧明禅師〔※〕は、相模国大住郡糟谷の庄(現在の伊勢原市)生まれ。地頭の職にあった了庵は、戦国乱世の虚しさを感じ、鎌倉円覚寺(えんがくじ)の「不聞契聞(ふもんかいもん)」について出家。能登總持寺、永沢寺、近江總寧寺、越前龍泉寺、能登妙高庵寺など、「通幻禅師(つうげんぜんじ)」〔※〕の後席すべてに住持し、「大本山總持寺」に輪往。50代半ば相模国に帰り、曽我の里に竺土庵(ちくどあん)〔※〕を結びます。
ある日、一羽の大鷲が禅師の袈裟を掴んで足柄の山中に飛び、大松の枝に掛けるという奇瑞(きずい)を現じました。この啓示によって山中に大寺を建立し「大雄山最乗寺」と号しました。
最乗寺では祈祷会や禅学会などのほか、毎月27日に例大祭御供式が、そのうち正月・5月・9月は大祭が行われます。
※釈迦牟尼仏(しゃかにぶつ):釈迦牟尼仏は、お釈迦様(おしゃかさま)の別名、釈迦族の牟尼(聖者)という意がある。
※文殊菩薩(もんじゅぼさつ):仏教の菩薩の一尊。智慧を司る菩薩。非人救済などの慈善事業を司り、慈母供養としての面もあるとされる。普賢菩薩と共に諸菩薩の上位にあって釈迦如来の左脇侍(ひだりきょうじ)。
※普賢菩薩(ふげんぼさつ):仏の悟り、瞑想、修行を象徴する菩薩。仏の教化や衆生済度(しゅじょうさいど)をたすけるとされる。文殊菩薩とともに諸菩薩の上位にあって釈迦如来の右脇侍(みぎきょうじ)。白象にのった姿であらわされる。
※了庵慧明(りょうあんえみょう):建武4年/延元2年(1337)-応永18年(1411)。南北朝・室町時代の曹洞宗の僧で了庵派の派祖。初め臨済宗に学び、諸国行脚ののち永沢寺の通幻寂霊(つうげんじゃくれい:通幻禅師)の弟子
※通幻禅師(つうげんぜんじ):元享2年(1322)-明徳2年(1391)。南北朝時代、曹洞宗通幻派の祖として知られる高僧、母の死後墓中で生まれたと伝わる。
※通幻派:通幻寂霊の指導は厳しく、優れた禅僧を輩出し、曹洞宗の大きな勢力となった。通幻の門下のなかでも特にすぐれているとされる了庵慧明、石屋真梁、一径永就、普済善救、不見明見、天真自性、天鷹祖祐、天徳曇貞、量外聖壽、芳庵祖厳は「通幻十哲」と呼ばれる。
※竺土庵(ちくどあん):了庵慧明が57歳の時、小田原市の上曽我に結んだ小さなお寺。そこに住み、近隣の人びとに説法を説いていた。
大雄山最乗寺
◇神奈川県南足柄市大雄町1157
◇伊豆箱根鉄道大雄山線「大雄山駅」バス10分
◇東名高速道路「大井松田IC」20分
◇公式サイト:https://daiyuuzan.or.jp
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
正月・5月・9月は大祭の月にあり、27日の両日には、多くの参拝者が来山します。特に5月の例大祭では、古則にのっとった御点前を頂く「禅院茶礼(ぜんいんされい)」が行われます。
正月・5月・9月の意味は忌月との説から、大祭を催して邪気を払うとされています。また、正月・5月・9月には忌月とは別の意味合いがあり、農耕従事者にとって田植えと刈り取り時期にあたるので、天と土に感謝する祭礼とも言われています。
正月の例大祭は旧暦では立春大吉前の祭礼、新暦では正月祭礼と吉月祭礼とされています。神仏混交、古神道の色が強い祭礼です。
是非お出かけください。
筆者敬白