2023.12.23
12月
雑節・歴注・撰日

令和5年(2023)12月28日「庚申(こうしん)」です。

■12月28日「庚申(こうしん)」です。■

庚申(かのえさる、こうしん)」は、「庚申待ち(こうしんまち)」、「宵庚申(よいこうしん、よいごうしん)」、「庚申祭(こうしんさい)」などを総称していう言葉。干支の組み合わせ57番目。八専の9番目。年に5~7回あります。

五行説※では「庚(かのえ、こう)」は「陽の金」、「申(さる、しん)」も「陽の金」性であることから、この日は「金気」が重なって天地に充満して冷ややかになり、人心が冷酷になり易いとされます。
昔は「天地万物の気、庚申の日に変革される」と思われていて、最も重要な忌日でした。
また、庚申に続く「辛酉(かのととり、しんゆう)」も金が重なる日で、さらに陰の金が重なるので冷ややかさを一層増すというのです。

このことから「庚申」「辛酉」の年はおおいに忌(い)まわれ、政治的変革が起こることを防ぐために2年続けて改元が行なわれることもありました。
<例>万延元年(1860)文久元年(1861)など。

「庚申」はもともと中国の道教の伝説からきた禁忌(きんき)※です。人間の体内には「三尸(さんし)の虫」※が、頭と腹と足にいて、いつもその人の悪行を監視しています。60日ごとに巡る庚申の夜、人間の睡眠中を伺って体外に抜け出し、天に昇って天帝にその悪事を報告するという。そして、人間の命を短くするのです。

これをさせないために、庚申の晩は神々を祀り、酒盛りなどをして夜を徹しました。村の中心をなす家に集まり、祭祀をしたあとに会食を行いました。

日本に伝わったのは、古く朱雀天皇の天慶2年(939)、または、文徳天皇のときに、智証大師が持ってきたものとされています。『枕草子』にも庚申待ちの話が登場します。江戸時代に入って民間で盛んに行われるようになり現在でも各地に「庚申塔」が残されています。
仏教では、庚申の本尊を「青面金剛(しょうめんこんごう)」および「帝釈天(たいしゃくてん)」に、神道では「猿田彦神(さるたひこのかみ=天狗さま)」に結び付けています。

旧暦の月で選日を行うため、庚申の日は1年に5~7回あることになります。7回あるのを「七庚申」といって非常に喜びました。このことから庚申待ちの夜は「七色の菓子」を供えたり、七度線香をあげ、七回真言のお題目を唱えたりするようになりました。

また、申と猿が結び付いたことから、猿を庚申様の使いに見立て「見ざる、言わざる、聞かざる」の「三猿信仰※:山王信仰」にもなっていきました。

さらに、申と「去る」が結び付いて、この日は結婚を忌む風習もありました。この夜に出来た子供は泥棒になるとか。この夜は男女の和合をしてはいけないなどとも言い伝えられています。庚申の日は「帝釈天の縁日」になっています。

 

※禁忌(きんき)
悪い方位のこと。さわりのあるものとして忌みはばかられる物事への接近・接触を禁ずること。病気・出産・死に関するもの、食べ物、方角、日時に関するものなど、さまざまな禁忌がある。違反(~侵す)すると超自然的な制裁を蒙るとされる。
類語:「さわり」「タブー」

※五行(ごぎょう)、五行思想(ごぎょうしそう)、五行説(ごぎょうせつ)
古代中国に端を発する自然哲学の思想。万物は火・水・木・金・土の5種類の元素からなるという説である。その根底には、5種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」という考え方がある。西洋の四大元素説(四元素説)と比較される東洋思想。

※三尸の虫(さんしのむし)
道教に由来する人間の体内にいるとされている虫。三虫(さんちゅう)、三彭(さんほう)、伏尸(ふくし)、尸虫(しちゅう)、尸鬼(しき)、尸彭(しほう)ともいう。
60日に1度めぐってくる庚申(こうしん)の日に眠ると、三尸が人間の体から抜け出し、天帝に宿主である人間の罪悪を告げ、その人間の寿命を縮めるとされ、庚申の夜は眠らずに過ごすという風習が生まれた。ひとりで徹夜は難しいことから、庚申待(こうしんまち)の行事が行われる。

※三猿信仰(さんさるしんこう)
3匹の猿が両手で目、耳、口を隠している姿のこと。「見ざる、言わざる、聞かざる」という叡智の3つの秘密を示しているとされる。日光東照宮の彫刻が有名。

◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

商品相場や株の世界では「庚申の逆張り」「庚申の曲がり角」などと縁起を担いでいます。
庚申の日まで良くても、その後はわからないとし、干支の上で金気と申が重なって予想の出来ない動きになるということです。
残念ながら、庚申は現代社会では迷信の域に含まれてしまった暦日です。戒めとして謂われを振り返ってみることも日々の余裕のひとつです。

皆様、体調を崩しやすい頃です。お体ご自愛専一の程
筆者敬白

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