■12月8日「針供養」「こと納め」です。■
「こと納め」とは、その年の事の終わりの行事のことで、江戸時代は陰暦12月8日に行われていました。
「針供養(はりくよう)」とは、折れた針を供養し、裁縫の上達を願う行事です。関東では一般に2月8日に行われますが、12月8日に行われる地方もあります。両日とも「事八日(ことようか)」(こと始め・こと納め)にあたっており、昔から様々な行事が行われてきましたが、それが江戸などの都市部では針供養に変わったものと考えられます。
この日は、針の使用を謹んで針仕事を休み、古針(折れたり曲がったりした縫い針)を、豆腐やこんにゃく、あるいは餅に刺して、神社で供養したり、川へ流したりするのが一般的でした。豆腐やこんにゃくなどに針を刺す理由は、柔らかいもので針に楽をさせ、今までの針の労への感謝を表しています。
もともと中国で行われていた針供養に似た行事が、日本に伝わったもので、事始め・事納め・女の守護神である淡島信仰〔※〕などと混合して出来上がったものが針供養であるといわれます。この日、芋、大根、焼豆腐、あずき、にんじんなどの煮物料理を食べる、俗にいう「いとこ煮」や「六質汁(むしつじる)」は、こうした縁起からきたものだそうです。
また、豆腐のように色白の美人になるようにとか、柔らかい気持ちになれるようにとか、まめに働くことが大事(だいず)としたのだとか。豆腐は刺されても痛いと言わないから、女性が我慢強いことを願ったからなどともいわれます。
和歌山の淡嶋神社(あわしまじんじゃ)では、1年の間に納められた針を本殿にて祓いを受けた後、鉢塚に納め塩をかけて土に返すことで、針の労をねぎらい、今後の上達を祈ります。祭神は「少彦名命(すくなひこなのみこと)」「大己貴命(おほなむじのみこと)」「息長足姫命(おきながたらしひめのみこと・神功皇后)」を祀ります。少彦名命は医薬の神様でもあります。特に女性の病気回復や安産・子授けなどに霊験あらたかといわれています。
※淡島信仰、淡島神 淡島神(あわしまのかみ)は、女性特有の婦人病治癒や安産・子授け、裁縫の上達、人形供養をはじめ、良縁・健康維持など女性に関する効験ありとされる信仰。発祥は住吉明神の妃が婦人病のため淡島の地に流され治癒したことからという説があります。
江戸時代には「淡島願人(あわしまがんにん)」と呼ばれる人々が淡島神の人形を祀った厨子を背負い、淡島明神の神徳を説いて廻った事から信仰が全国に広がりました。
針供養を行なう主な寺社
浅草寺(東京都台東区浅草)
◆針供養――2月8日
◇東京都台東区浅草2-3-1
◇都営浅草線・銀座線・東武鉄道「浅草駅」徒歩5分
公式サイト:https://www.senso-ji.jp
淡嶋神社(和歌山市)
◆針供養――2月8日
◇和歌山県和歌山市加太116
◇南海加太線「加太駅」徒歩15分
◇公式サイト:http://www.kada.jp/awashima/
法輪寺(京都市)
◆針供養――2月8日、12月8日
◇京都市西京区嵐山虚空蔵山町
◇阪急電車「嵐山駅」徒歩約5分
◇市バス「阪急嵐山駅前」徒歩約5分
◇公式サイト:https://www.kokuzohourinji.com