■12月17日「奈良、春日大社 若宮おん祭」です。■
春日大社の摂社「若宮」の御祭神は、本宮第三殿の天児屋根命(あめのこやねのみこと)※と第四殿の比売神(ひめがみ)※の御子神である天押雲根命(あめのおしくもねのみこと)※のことで、平安時代に御出現され「水徳の神」と仰がれました。
長承年間(1132~1135)※に大雨洪水により飢饉が相次ぎ、疫病が蔓延し、時の関白・藤原忠通公※が万民救済の為に若宮の御霊威にすがり、保延元年旧暦二月二十七日、大宮(本社)と同じ規模の壮麗な神殿を造営しました。
翌年旧暦九月十七日、若宮の御神助を願って春日野に御神霊をお迎えし、祭礼を奉仕したのが「おん祭」の始まりです。長雨洪水も治まり晴天が続いたので、以後870年余にわたり、五穀豊穣・万民安楽を祈り、盛大に執り行われています。
おん祭は、奈良の年中行事で最も大規模なものとして有名。見所は神霊の渡御式です。装束姿の春日の使いを先頭に、巫女・細男(せいのお)・田楽法師・競馬騎士・大名行列などが市中を練り歩きます。御旅所にはかがり火が焚かれ、深夜まで古典芸能が奉納されます。おん祭は、国の重要無形民族文化財に指定されています。
※天児屋根命(あめのこやねのみこと):天岩戸神話で活躍し、天孫降臨※にて瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に随伴した、祭祀をつかさどった中臣氏の祖神。 天岩戸神話では祝詞をあげ天照大御神がお出ましになられたと伝わる。
※天孫降臨(てんそんこうりん):天孫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと:神話の神。 地神五代の3代目。 日向三代の初代)が、高皇産霊尊(たかみむすび/別天津神・造化三神のうちの1柱)の意向と天照大御神(あまてらすおおみかみ)の神勅(しんちょく)を受けて葦原の中津国(あしはらのなかつくに)を治めるために、高天原(たかまがはら)から筑紫の日向の襲の高千穂峰へあまくだったこと。 瓊瓊杵尊は天照大御神から授かった三種の神器(さんしゅのじんき)※をたずさえ、天児屋命(あまのこやねのみこと)などの神々を連れて、高天原から地上へと向かう。 途中、猿田毘古神(さるたひこのかみ:猿田彦の神)※が道案内をした。 記紀(古事記と日本書紀)にある日本神話
※三種の神器(さんしゅのじんき、みくさのたから、みくさのかむたから):三つの宝物。八咫鏡 (やたのかがみ) 天叢雲剣 (あまのむらくものつるぎ)または (草薙剣:くさなぎのつるぎ )八尺瓊勾玉 (やさかにのまがたま)のこと。特に剣と璽(じ:皇位の印章としての勾玉)を併せて剣璽(けんじ)と称する。三種の神器の別称
※猿田毘古神(さるたひこのかみ:猿田彦の神):瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が天降りしようとしたとき、天の八衢(やちまた。道がいくつもに分かれている所)に立って高天原から葦原の中津国(あしはらのなかつくに)までを照らす神がいた。その神の鼻の長さは七咫(ななあた)背(そびら)の長さは七尺(ななさか)目が八咫鏡(やたのかがみ)のように、また赤酸醤(あかかがち)のように照り輝いているという姿であった。そこで天照大御神と高木神は天鈿女命(あめのうずめ)に、その神の元へ行って誰であるか尋ねるよう命じた。その神が国津神(くにつかみ)の猿田毘古神で、瓊瓊杵尊らの先導をしようと迎えに来たと話した。瓊瓊杵尊らが無事に葦原の中津国に着くと、瓊瓊杵尊は天鈿女命にその名を明かにしたのだから、猿田毘古神を送り届けて仕えるようにと言った。そこで天鈿女命は「猿女君」と呼ばれるようになった伝わる。猿田毘古神は故郷である伊勢国の五十鈴川の川上へ帰ったとある。
※比売神(ひめがみ):女性神(めがみ)のこと。ここでは天押雲根命の母親とされている。
※天押雲根命(あめのおしくもねのみこと):瓊々杵尊(ににぎのみこと)の御宇の神(天空が地上を覆うの意)であるとされる。天孫降臨のとき地上には未熟で荒い水(命をはぐくまない水のこと)しか存在せず、天押雲根命が高天原(たかはがはら)より天津水※(天忍石長井水:あめのおしはのながヰのみず)を持ち還り、この水を皇孫に奉ったとされる。伝承では天牟羅雲命の神名で登場している。別名を天押雲命、天村雲命(あめのむらくものみこと)天二上命(あめのふたかみのみこと)後小橋命(のちおばせのみこと)と伝わる。
※天忍石長井水(あめのおしはのながヰのみず):天津水(あまつすい)高天原の天照大御神が持っている水の種のこと
※長承年間(ちょうしょうねんかん/1132~1135):天承の後、保延の前までの期間。この時代の天皇は崇徳天皇。方丈記によると長承年間に飢饉があったことが養和の飢饉の項でふれられている。
※藤原忠通公(ふじわらのただみち 1097-1164):平安時代後期の公卿(くぎょう)。 永長2年(1097)閏(うるう)年生まれ。藤原忠実(ただざね)の長男。母は源師子。
春日大社
◇奈良市春日野町160
◇JR・近鉄「奈良駅」から「春日大社本殿行」バス約11分
◇公式HP:http://www.kasugataisha.or.jp/